「My Future」(’20) /Billie Eilish
2020年に多く言われたことのひとつが“自分を見つめること”。それを体現し、この難しい変化の時代を代表する作品となったのが、ビリー・アイリッシュがコロナ禍に放った「My Future」です。パーソナルな言葉の数々が綴られたビリーの歌詞が、兄のフィネアスと作ったこれまでのふたりにはなかった類いのサウンドによって優しくゆったりと聴く者の心にじんわりと響く。18歳のビリーが“自分の未来に恋してる”と歌う尊さには圧倒されるばかりです。
「Alive」(’15)/Sia
“まだ息をしている、私は生きている”という言葉が何度も繰り返されるシーアがアデルと共作した「Alive」は魂の絶叫歌です。悪魔が目指し、風向きも変わらず、何も育たない地には希望もなく、嘘だけがある。全てを奪われても自分は生き抜いたという人物の心の叫びは鋭い矢のように巨大な痛みをもってズドンと心に突き刺さってきますが、この歌に描かれた世界観はコロナ禍における多くの人々の窮状、心情にも重なるはず。また、千葉県で撮影されたMVには天才空手少女と呼ばれた高野万優さん(当時9歳)が出演したことで世界的な話題となりました。
「F**kin’ Perfect」(’10)/P!nk
共感と応援ソングと言えばピンク姐さんの「F**kin' Perfect」です。この作品では自身の経験を吐露しつつ、卑屈になる相手に対して“それは間違っている”ときっぱり告げた上で、《You're fuckin' perfect to me(私にとって貴方は最高で完璧)》と伝えています。古代から感情をストレートに伝えることを避けてきた傾向のある日本ではこうしたコミュニケーションがすっ飛ばされてしまいがちですが、誰かに認められるということは自己肯定に直結しますよね。現在は家族でさえ自由に会えない状況ですが、心で相手を思うことに留めずに、言葉、詩集、歌などさまざまな手段を使って大切な人へ自分の思いを届けてみてはいかがでしょうか。相手の心はもちろん自分の心も温めていきましょう。
「Shake It Off」(’14) /Taylor Swift
テーマ的に外せないのがテイラー・スウィフトの「Shake It Off」。タイトルの意味は“気にするな”で、落ち込んだ人に対してかける言葉です。この前向きな歌詞かつ軽快なリズムの踊る作品は沈んだ心も無条件に楽しい気分へと導いてくれる音楽的パワーが最大の魅力。映画『SING/シング』にも起用されて世界的な大ヒットを記録しました。今回はコロナ禍以前に制作された自己肯定感を呼び覚ませるアッパーチューンとしてこの曲をピックアップしましたが、テーラーはコロナ禍で生まれたアルバム『folklore』と『evermore』を発表しています。視覚的イメージからストーリーを空想してリモート制作した2作で新たな境地へとさらに歩みを進めた彼女からは目が離せません。
「Born This Way」(’11) /Lady Gaga
「Born This Way」とは“信じる生き方を貫くこと”。アーティストとしてのスケールの広さを知らしめ確固たる支持を得た2ndアルバム『Born This Way』。そのタイトル曲でガガは人類の肌の色について言及し、それまでタブーとされていた人種や性などの差別問題を明示しました。全ての人を受け入れる本来あるべき社会を牽引しようとする先進的な歌詞をポップスの王道であるアップテンポなビートにのせ、レディー・ガガたるアーティスト性を明確に示したこの作品は聴き手の自己肯定を後押しする楽曲の代表格と言えるでしょう。当時のジャパン・ツアーに参加した際、彼女を取り巻くクルーの国籍もまたバラエティーに富んでいて、まさにダイバーシティそのものでした。
TEXT:早乙女‘dorami’ゆうこ
早乙女‘dorami’ゆうこ プロフィール:栃木県佐野市出身。