夭折したジェフ・バックリーが残した永遠に色褪せない不朽の名作『グレース』
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(okmusic UP's)
少し前の記憶になるが、北京冬季オリンピックのフィギュアスケートを観ていたら、ペアの競技で日本勢初入賞7位に入った三浦璃来(りく)、木原龍一組が演技の際、音楽に「Hallelujah / ハレルヤ」を使っていた。女性ヴォーカルによるバージョンで、気になった私は演技そっちのけですぐさま調べを開始し、ふたりのスケーティングが終わらないうちに、それがカナダ出身のシンガーソングライター、K.Dラングによるものだったことが分かった。そうか、ラングだったのかと、彼女のいくつかのアルバムを愛聴したくせに気づかなかった我が身を恥じながら、過去に「Hallelujah」を歌った人たちがあれこれ浮かんだ。

オリジナルはやはりカナダのシンガーで作家としても知られるレナード・コーエンが書いた曲で、彼の『Various Positions』(’84)に収録されている。ちなみにコーエンについては以前にこのコラムでも紹介しているページがあるので、この機会にぜひお読みください。

私の脳裏に咄嗟に浮かんだのは、レナード・コーエンと今回の主役、ジェフ・バックリーのバージョンである。それを含んだバックリーのデビュー作『Grace』(‘94)は90年代を代表する…だけでなく、ロック史に残る傑作アルバムと言っていいだろう。

オリジナルのレナード・コーエンが断然素晴らしいと思っていたところに、バックリーのものを耳にした瞬間、あまりの素晴らしさに全身が硬直したようになり、身じろぎもせず聴き入ったものだ。物悲しく、壮絶なまでの美しさに満ちた声。まるで絶望の中で見つけた一条の光のようだった。同時に初めてその歌声に触れた時、胸をかきむしられるような焦燥感、胸騒ぎも覚えたものだった。祈り、というよりは鎮魂歌のように聴こえた。

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