近年、スキー/スノボ人口が減っているという話は聞いていたけれど、シーズン前に必死でツアーや宿を予約し、ひと滑りする度にリフトの長い列に並んだ世代としては、ちょっと淋しい今日この頃。先日、ひさしぶりにスキー場へ行く機会があって、“あぁ…こんなだったな”って。
JR東日本が1991年から展開しているスキー旅行のキャンペーン『JR SKISKI』。そのCMは“出演者×ストーリー×キャッチコピー×曲”という、魅力の合わせ技が過ぎる相乗効果で、寒いけど“寒いからいい”そんなワクワクとキラキラした青春の思い出が欲しくなる魔法のCM。残念ながら、公式に公開している映像はないとのこと(←JRに確認した・笑)だけど、ぜひ観てほしい5作品を紹介します!

「Choo Choo TRAIN」(’91)/ZOO

【1991-1992シーズン】出演はZOO、キャッチコピーは『雪男。雪女。』。前年の1990年、新幹線駅直結というスキーヤーにとっては夢のような“ガーラ湯沢スキー場”が開業したことに伴い、翌年の1991年にスタートした『JR SKISKI』キャンペーン。
現在でも続くその記念すべき初シーズンのキャンペーンソングは、EXILEのHIROが在籍していたことでも知られるZOOの「Choo Choo TRAIN」。そう、あの一直線に並んでグルグル回るダンスで有名なアノ曲だ。蒸気機関車の音を表現する英語の擬音“Choo Choo”を歌詞に使ってほしい、とJR東日本からの要望に応えて作られたというこの曲、作曲は中西圭三でギター演奏に松たか子の夫・佐橋佳幸が参加している。夜のゲレンデ、たいまつの火が大きく燃えるその前で曲に合わせて踊るダンサーたち。情熱的かつ楽しいという気持ちがほとばしっているその様子に、大人数のグループで何台も車を連ね、夜通し走らせスキー場に向かった頃の、他では感じたことがないような高揚感を思い出した。ラストで例のグルグルにかぶせて流れる『雪男。
雪女。』という声の言い方がものすごく特徴的で、そんなところにも“楽しまなきゃ損”そんなメッセージを感じさせてくれる、ときめきを運ぶ躍動のナンバー。

「DEPARTURES」(’96)

【1995-1996シーズン】出演は江角マキコ・竹野内豊、キャッチコピーは『ラクに行こう。』。4年間にわたって続いたZOOから交代した最初のシーズン、それまでがスキーに行く楽しさを表現していたとしたら、今作では最短81分というちょっと近場に遊びに行くような感覚で行って帰って来れるという気軽さを前面に出している。“今夜夕ご飯どうする?”“あぁ、東京帰ってから”という何気ないふたりの会話が、ドキドキワクワクとはまた違う穏やかな気持ちにさせてくれる。
言わずと知れた冬の名曲・globeの「DEPARTURES」も、JR東日本からの“若いカップルが新幹線に乗ってスキーに出かける”“カップルがホームから列車に乗り込むシーンから始まって、雪が降る駅を新幹線が静かに出て行くところで終わる”という、かなり具体的な設定をもとに制作されたものだという。この時代に青春を過ごした人たちにとってたまらない一曲は、このCMのオファーがなければ生まれていなかったのかもしれない。ともにモデルから俳優に転向して間もない頃のふたりが起用され、後に誰もが知る存在になっていったことも、今からすると感慨深い。淋しさと寒さを称えながらも、雪の結晶のひと粒ひと粒までもが見えるような、どこまでも限りなく美しい曲。

「スノーマジックファンタジー」 (’14)/SEKAI NO OWARI

【2013-2014シーズン】出演は川口春奈・栁俊太郎、キャッチコピーは『ぜんぶ雪のせいだ。』。
前作「RPG」が話題となったSEKAI NO OWARIが、このCMのために書き下ろした5枚目のシングル「スノーマジックファンタジー」。雪の妖精(?)との恋を描いた歌詞の中とは設定は異なるけれど、《雪の魔法にかけられて 僕は君に恋した》という言葉に、キャッチコピーに通じるものを感じる。よく、ゲレンデで出会った人は帰って来て会うとがっかりするからやめたほうがいい、なんてウワサがあったりしたけれど(笑)、ある意味それも“ゲレンデマジック”。未来の大切な人を見つけやすくしてくれる、そんな魔法。もし後日がっかりしたとしても、それはそれできっと素敵な思い出になるはず♪ さわやかで荘厳なメロディーにのせて、マジックにかかってしまった瞬間の川口春奈がとにかく可愛い! でもって、ズルい! 『ぜんぶ雪のせいだ。』って…こんなの可愛すぎるーー!! 歴代最強コピーをファンタジックに彩るキラキラのセカオワワールド!

「BLIZZARD」(’84)/松任谷由実

【2017-2018シーズン】出演は原田知世・三上博史、キャッチコピーは『私を新幹線でスキーに連れてって』。
JR東日本発足30周年と、1987年公開の大ヒット映画『私をスキーに連れてって』の公開30周年特別コラボ企画となったCM。映画のシーンを使ってのアテレコで、新しく撮影されたものではなく声も本人ではない。ただ…これが激ヤバ! 確認できているだけでも17パターンあるのだが、転んでしまった原田に向けて“スキー場でVRするなって言ったろ! なんだ、ゴーグルか”など、どれもこれもかなりおふざけが効いた仕上がりとなっている(笑)。そんなバックに流れているのは《Blizzard Oh! Blizzard~》と映画同様、松任谷由実の冬のテッパン「BLIZZARD」。アルバム『NO SIDE』に収録、そう、有名な曲だけど実はシングルカットはしていない。風を切り雪煙を上げるような映画の世界にマッチしているだけに、アテレコだけが浮いているその違和感こそが滅茶苦茶おもしろい。
これ考えた人最高だな。そして、よくOK出たな、と(笑)。映画を知っている人はもちろん、知らない人にも観て笑って、映画観てみたいとかスキーちょっと行きたくなったとか、そんなふうに思ってくれたら嬉しいかも。

「メルト」(’23)/WurtS

【2022-2023シーズン】出演は南沙良、キャッチコピーは『冬を取り戻すんだ。』。2020年、突如ソレはやってきた。 人によっては高校生活の全ての場面で、さまざまな制限と共存してきたという人たちもいるだろう。マスクをしたまま桜の下で手を振り“落ち着いたらみんなでどっか行こうって言ってから だいぶ経ったね”そんな淋し気な台詞から始まるも一転、「メルト」が流れ出して、ゲレンデで弾ける笑顔に笑い合いじゃれ合う姿。SNSで楽曲が注目を集め、瞬く間にトヨタ自動車・サントリー・大塚製薬など大手企業のCMに起用されるなど、ブレイクしたWurtSのデジタルシングル6作目。“離れててもずっと一緒 なんて…たぶんウソだ”ドキッとしたけど、でもだからこそ今この瞬間を楽しんでやるんだ! そんな思いが映像とメロディーでうまく編集されたCMになっていると思う。今シーズンでも遅くない、キミの青春を、冬を取り戻せ!

TEXT:K子。

K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最愛のバンドが胸に空けた大きな穴とこれからも生きていく。