2019年開催の「第76回ベネチア国際映画祭」で最高賞の金獅子賞を受賞し、世界的に大ヒットした『ジョーカー』の続編となる「ジョーカー2」。前作でアカデミー賞主演男優賞を獲得したホアキン・フェニックスは、再びジョーカーことアーサーを演じている。
前作では、“悪のカリスマ”ジョーカーの生い立ちやバックグラウンドが描かれた。笑いのある人生は素晴らしいと信じ、都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしていたアーサーだが、幼少期に受けた虐待の後遺症で笑いが止まらなくなる病気を患っていた。ストレス下に置かれると、笑いたいわけではないのに声をあげて笑ってしまい、状況をさらに悪化させてしまう。それがアーサーの生きづらさの理由の一つとなっていた。
今年4月、「ジョーカー2」の予告編のアナウンス映像として、アーサーが雨の中で笑い続けるだけの不気味なショート動画がSNSでシェアされた。
前作でも印象的だったアーサーの“笑い”について、どのようにアプローチしたのか、ホアキンに聞いた。
「前作では本当に重要な役割を果たしていましたが、アーサーが笑い声を上げるシーンのほとんどは、その場の即興だったんです。『ジョーカー2』でも、いくつか脚本に書かれていたけど、ほとんどはその場で『このシーンでは、こういう反応が自然だ』と感じてやっていましたね」
続けて、ホアキンは「ジョーカー2」の撮影で「最初に笑ったシーンで覚えているのは…」と、例の雨の中で笑い続けるシーンのことを話し出した。
「確か、撮影が始まって3週間目くらいでした。その日はロサンゼルスにしては天気が悪く、とても寒かったんです。アーカム精神病院の中庭で降雨装置を使った撮影をしていたんだけど、あと1時間くらい撮影できるねってなった時に、みんなが『どうする?』って話し合っていて、『雨の中で笑っているシーンを撮ろう』となったんです。それで、冷たい水が降りかかってきて、本当に寒かったです。あのシーンは、正直言って、水の冷たさに反応していただけかもしれません」
なんと、時間が余って生まれたシーンだったとは。ホアキンは「笑って痙攣(けいれん)を起こしていたとしても、それは計画されたものというより、ただの身体的な反応だったと思いますね」と続けた。
そのような身体的な反応が出ること自体、ホアキンが心からアーサーになっていたことを裏付けているように思える。
さらに、「アーサーの笑いについて言うと、いつもすごく複雑なんです。そこには必ず痛みの要素があって、時には不安定な喜びも混じっているんです。彼が笑っている時に正確に何を感じているのかを特定するのは難しいですね。彼の笑いが興味深く感じるのは、その笑いが多層的で、過去の何かに起因する深く根付いた痛みや葛藤、混乱があるからかもしれません。彼の笑いが印象に残るのだとしたら、それが理由なのかもしれませんが、はっきりとはわからないですね」と、回答を締めくくった。