SFホラーの金字塔『エイリアン』から45年。
もちろん、シリーズを愛してきたファンが思わずニヤリとする描写や、さらに進化を遂げたエイリアンの表現もふんだんに盛り込まれている。アルバレス監督自身が、『エイリアン』の大ファンだったからだ。
「たぶん先に観たのが『エイリアン2』なんですよね。1978年生まれなので当然『エイリアン』は映画館では観ていませんでした。確か『エイリアン3』の公開時に前作のVHSのプロモーションに力を入れていたのがきっかけで12歳の時に『エイリアン2』を観て、当時観た誰もがそうであったように『ヤバすぎる!』ってなりました。それだけ先進的で。それから『エイリアン』を観ました。当時、“エイリアン”ワールドから受けたインパクトはすごいものがありました」
ウルグアイ出身のアルバレス監督は、子どもの頃から映画づくりに興味を抱き、短編映画を制作。その手腕がサム・ライミが設立したゴースト・ハウス・ピクチャーズの目にとまり、2013年にライミの名作『死霊のはらわた』のリメイク版の監督に抜てきされ、長編映画デビュー。
16年に脚本・製作も手がけた『ドント・ブリーズ』を大成功に導き、その恐怖演出、キャラクター表現の巧みさ、観客を翻ろうするストーリー運びで高い評価を獲得。大ベストセラーを映画化した『蜘蛛の巣を払う女』(18年)や、電話の会話のみで緊迫したドラマを描いた意欲作『CALLS コール』(21年)など、新作を発表するごとに注目を集めてきた。
そして、リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、『エイリアン3』(1992年)のデヴィッド・フィンチャーと、その後、映画界のレジェンドとなっていった監督たちの系譜を継ぐことに。
アルバレス監督は「面白かったのは、リドリーとジム2人がかなり違うアングルからそれぞれの作品にアプローチしていたことですね。全然同じことを言わないところが監督としても面白かったです。共に映画を極めた巨匠だけれど、映画作りに関する考え方はかなり違うと思いました」と語る。
『エイリアン:ロムルス』に製作で参加しているリドリー・スコットからは「プロジェクトの始まりで言われて心に留めていたのは、脚本に関することが多かった。例えば、『絶対に観客を見くびってはいけない』ということ。これは特にジャンル映画を作っている時に重要なことで、(わかりやすくするために)物事をシンプルにしすぎたり、観客が理解できないと思って、説明過多になったり、しつこく繰り返したりしまうことがある。でも、リドリーは決してわかりやすくするのではなく、常により高みを目指すべきだと信じているし、僕にもそうするように、いつも背中を押してくれました」。
『タイタニック』や「アバター」シリーズでも知られるジェームズ・キャメロンからは、「こういった映画がいかにハンドメイドであるべきか、ということを話してくれました。僕はずっと『エイリアン2』の製作費はすごく大きかったんだろうな、と思っていたのですが、彼や関係者の人たちの多くは当時の『エイリアン』映画がいかに低予算であったかと口をそろえて話してくれました。
続けて、「(常に)現場にいるのはもちろんのこと、パペットを操り、時には自ら小道具や機材も作る。監督として持てるものすべてを注ぎ込み、その姿勢と背中でみんなを引っ張っていく。予算が許す以上のことをやってのけるスタッフを集めることも大切です。僕はそれらすべてが映画に反映されると信じています。本作も実際の製作費以上に大きく見えたらうれしいです。そのアドバイスを心に刻み、映画作りの細部にまで深く関わりました。本作は監督が椅子に座って指示を出すだけで作れるような映画ではありません。自ら現場で手を使って作っていく。そうやって作った作品なんです」と語っていた。
■『エイリアン:ロムルス』
人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。