舞台は、秋田県秋田市。
小さく見える居住棟の建坪は、なんと畳4枚半の広さしかない。坪数でいうと2.25坪。『住人十色』の歴史でも、“最狭小”の家となる。そんな家の中は一体どうなっているのか?
掃き出し窓のような玄関扉を開けると、すぐ目の前に階段が現れ、その隣には約2.5畳のダイニング。テーブルはなんと廊下も兼ね、奥に行くにはテーブルを乗り越えないといけない…。
アルジ夫妻は、10年前に結婚し、長男の誕生をきっかけに、予算2300万円で新居を構えようと決意した。インターネットで探した土地は格安の300万円。残り2000万円が建物の費用で、コストダウンするために建築家夫妻が出した答えが「なるべく小さくすること」だった。
建坪を限界までコンパクトにすることで、基礎工事費を抑えた。そして、空間を縦に広げて3階建てに7つのフロアを設けた。そこまでして建坪四畳半にこだわったのは、「狭くても快適に過ごせる空間を作るという意味で、“限界への挑戦”をしたかった」との思いがあったという。
家の狭さを克服するキーワードは「兼用」。廊下兼ダイニングテーブルは、キッチンカウンターも兼ね、廊下を乗り越えた向こう側は約2畳のキッチンになっている。また、食器棚も出窓と兼用。出窓に棚板を渡して食器を収納している。
さらに、ダイニングテーブル横にある階段兼収納棚を上がると、家の3フロア目に当たる場所に約2畳の和室がある。床柱に違い棚まである本格的な造りだが、この違い棚も階段も兼ね、上がると2階の4フロア目へ。4フロア目には1.5畳のリビングとなり、少し硬めに作ったソファーもまた階段と兼用している。
ソファーの階段を上がると、3階の5フロア目が現れる。ここは水回りスペースで、小さな浴槽がむき出しで設置。
そして、気になるもう1つの建物は、夫妻の建築事務所兼セカンドリビングで、平屋の広さは居住スペースから打って変わって32畳ある。しかし、元々建坪四畳半で暮らす覚悟だったはずが、なぜこんなスペースを作ったのか?
実は、銀行でローンを組むには、のべ床面積をあと48平米分確保する必要があった。そこで、必要最小限の屋根、壁、柱だけの、まるで東屋のような平屋を建てたのだった。
限界への挑戦で建てた建坪四畳半の家。夫は「狭さを意外と感じない。四畳半とは思えないほど広い家ができたかな」、妻も「30畳ぐらいの広さ、豊かさはあるかなって思います」と住み心地を語る。数字では計り知れない豊かな空間が、番組を通して明らかになる。