国内最大級の総合楽器店・ヤマハは、11月15日にブランド発信の新拠点「Yamaha Sound Crossing Shibuya」(ヤマハサウンドクロッシング渋谷/以下、YSC渋谷)を東京・渋谷の大規模複合施設「Shibuya Sakura Stage」内にオープンさせる。オープン前日の14日には、メディア内覧会が開催された。


 「YSC渋谷」は、今年7月にまちびらきが行われた渋谷・桜丘町の大規模複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」内に誕生する。「偶発的なイノベーションが起こる“Sound Crossing(サウンドクロッシング)”」をコンセプトに2つの施設で構成され、SAKURAサイド3階の「LAB(ラボ)」には、一般客が最新の楽器や音楽、先端技術などを体験できるブランド体験施設を、SAKURAタワー8階の「LOUNGE(ラウンジ)」(一般非公開)には、研究開発サテライト施設を構える。

 ヤマハと渋谷・桜丘町の歴史は古く、1975年にレコーディングスタジオ兼ミニコンサート会場「エピキュラス」を開設。中島みゆき、長渕剛、CHAGE and ASKA、チェッカーズら多数のアーティストのレコーディングやミニコンサートが開かれたほか、当時のオペラ音楽の盛り上げを支えた。1995年には「エレクトーンシティ渋谷」と改名し、ボーカロイドの開発拠点としても親しまれたが、2018年に閉鎖、翌19年に取り壊された。この跡地一帯が再開発され、「Shibuya Sakura Stage」のSUKURAサイドとなり、ヤマハが6年ぶりに“帰還”することになった。「YSC渋谷」を通じて、「首都圏におけるブランド発信力」と「10~20代の若者世代に向けたブランディング」強化を目指す。

■LAB(SAKURAサイド3階)

 SAKURAサイドの広場・にぎわいステージに面した「LAB」は、一般ユーザーが最新の楽器や音楽を体験できる施設。4つのエリアがあり、最新楽器や音響機器、配信機器を体験できる「エクスペリエンス」エリア、配信も可能なライブイベントスペース「ステージ」、“ライブの真空パック”をコンセプトに開発されたシステム「Real Sound Viewing」など最新技術のプレゼンテーションの場となる「スタジオ」、オリジナルコーヒーやクラフトビールなどを提供する「カフェ」を備える。

(1)EXPERIENCE(エクスペリエンス)
 バンドやステージパフォーマンス向けの楽器を中心とした、最新楽器や音響機器、配信機器を展示し、体験機会を提供する。音楽制作機器や配信機器についてのワークショップも定期的に開催予定。楽器・音楽制作について気軽に相談できるスタッフが常駐する。


【展示アイテム】
楽器:ギター、電子ドラム、シンセサイザー、ハイブリッドピアノ、サイレントシリーズなど
音楽制作:VOCALOID、オーディオインターフェイス、ミキサー、ライブ・ゲーム配信機器など

(2)STUDIO(スタジオ)
 配信機器などの設備を完備し、当社の先端テクノロジーを用いて、楽器・音楽・音響情報を世界に向けてインタラクティブに発信するスペース。

【展示機器・システム/使用例】
演奏をデジタル技術で再現する「Real Sound Viewing」の実演・演奏の配信/「ステージ」との連携によるイベントの実施・配信/企業ミュージアム「イノベーションロード」やヤマハのブランドショップと連携したイベントの実施・配信など

(3)STAGE(ステージ)
 楽器や音響機器などを完備した、ライブやイベントを開催するスペース。フレキシブルな会場づくりが可能な開閉式で、小規模なライブのほかにも、「エクスペリエンス」エリアや「カフェ」と連結して使用することもできる。

【使用例】
ライブ/商品デモンストレーション/セミナー/ユーザー向け体験イベント/配信ライブ/人材発掘(オーディション)など

(4)CAFE(カフェ)
スペシャルティコーヒー専門店Scrop COFFEE ROASTERSが監修した「渋谷×音楽」をテーマとしたオリジナルコーヒーや、創業100年を誇る佐々木製茶株式会社(静岡県掛川市)による深蒸し茶を使用した抹茶ラテやほうじ茶ラテなどこだわりのオリジナルメニューを提供。当施設限定のクラフトビールや「葡萄ミルクティーINゼリー」なども用意されている。飲食をしながらライブや配信動画を楽しめるモニターも配置されている。

■LOUNGE(SAKURAタワー8階/一般非公開)

 研究開発拠点を静岡・浜松に置くヤマハが、首都圏サテライトの位置付けでSAKURAタワー8階に研究開発拠点を構える。アーティストやクリエイターをコアターゲットとし、先進技術の体験や商品企画開発などを行う「LOUNGE」には、楽器別に4つのスタジオと、クリエイティブサウンドスタジオの計5つのスタジオが設けられている。

(1)ラウンジ
 天井に施した音叉(おんさ)のマークがゲストを出迎える。「音楽や楽器の過去・現在・未来を感じて創造のヒントにしていただけるように」と、名品と評価されている歴代の製品や、最新の製品・技術、レコードが展示されている。ひときわ目を引くのは、1999年の坂本龍一さんのツアーで使用された「Opera Piano」。坂本さんとヤマハで企画をし、特注生産されたもので、坂本さんが個人で所有していたピアノが展示されている。


 展示楽器は過去や現在のフラッグシップ、未発表モデルも。スティーヴ・ガッドのシグネチャーモデルのドラムは、実際にワールドツアーで使われたもので、ヘッドやミュートも本人が使っていたものをそのまま残している。

 壁には、展示楽器を使ったレコードが飾られている。また、かつてこの場所にあった「エピキュラス」でレコーディグされた中島みゆきのタイトルも展示されている。

(2)スタジオ
 楽器別に4つのスタジオと、クリエイティブサウンドスタジオの計5つのスタジオが設けられている。スタジオ間を業界標準にもなっているヤマハのオーディオネットワーク「Dante」でつないでレコーディングやラップセッション、プリプロダクションなどが可能。この場で収録、ミックスし、CD化までできる。

 ヤマハ株式会社 コーポレート・マーケティング部 部長の吉川剛志氏は「当社は大変歴史の長いブランドであり、伝統、信頼性といったブランドイメージを持っていただいているのは大変ありがたいところですが、当施設を通じて、当社の持つ技術力や先進性、流行・トレンドを作っていく、取り入れていく、こんなブランドの姿勢も訴求していきたいと考えております」とアピールしていた。
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