『猿若祭二月大歌舞伎』の昼の部では、昭和63(1988)年に銀座セゾン劇場で十八世中村勘三郎(当時五代目勘九郎)が蔦屋重三郎を演じた『きらら浮世伝』を上演。
勘九郎は、本作で演じる蔦重について、「摺物が好きっていうのが、1番熱くさせる蔦屋のパワーの源なんだと思います。とてもパワフルな人で頭がいい人だったんだな」と人物像を説明。
「見つけ出す、見つけ出して、その人に才能があるかないかっていうのをちゃんと磨いて、世に出てヒット作を生ませるっていうのはなかなかできることじゃないので、 名プロデューサーだったんじゃないかな」とした上で、「そういう点で、父とかぶる部分もある」と吐露。勘三郎さんがさまざまな企画を立ち上げ、キャスティング、スケジューリングを行ってきたことを振り返り、「そこの根本には歌舞伎が大好きだっていうね、力があるので、とても似てる人だなって」と父と蔦重の共通点を明かした。
勘三郎さんが初演したのは当時33歳。「やっぱりその父も33の時にこの蔦屋を演じて、プロデュースっていうか、この作品から得た部分もあるんじゃないかなと思います」と語った。
「猿若祭」は、寛永元(1624)年に初代猿若(中村)勘三郎が猿若座(後の中村座)の櫓をあげ、江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念して始まった公演で、本年も勘九郎・七之助が中村屋ゆかりの作品に臨む。
取材会には、ほかに七之助、横内が参加した。