挑戦の軌跡を記す連載『生涯現役!58歳 アーティスティックスイミング小谷実可子の挑戦』の10回目となる今回は「大会直後!目標の4つの金メダルを獲得の感想」。『今大会の振り返り』、『挑戦で得られたこと』などついて語ってもらった。
――4つの金メダルを獲得。今大会を振り返ってみてください。
小谷:4種目に挑戦して、初日に混合デュエットテクニカルルーティン(78・5675点)、2日目に混合チームテクニカルルーティン(77・5621点)、3日目のソロフリールーティン(70・7750点)と演技をしてきて、毎日1つか、2つは反省点というか課題を残してきたのですが、最終日の混合デュエットフリールーティンで満足のいく演技ができて、結果としても80点(81・4750点)を越えられたので、最高の締めくくりができたと感じています。うれしいですし、頑張って良かったなと思います。
九州大会では3つの金メダルを獲得しましたが、それを越える4つの金メダル獲得に挑戦しました。最初、簡単に口にしてしまったことですが、いざ練習をしていくと本当に大変で…実際にシンガポールに入ってからも毎日練習が続きました。後悔はしていませんが、なんて辛くて高い目標を設定してしまったんだろうという気持ちになっていました。
実際、3日目のソロフリールーティン終了後には、心も体も限界にきてしまって、一睡もできませんでしたし、髪を洗おうと手を上げたらつってしまうなど…もしかしたら最終日は試合に出られないんじゃないかと思ってしまうぐらいまで、追い込まれていました。でも、パートナーの安部篤史さんが体調の悪い中でも素晴らしい気迫でソロを泳ぐ姿を見て、「私も頑張らなければ!頑張れる!」と気持ちを強く持つことができました。
本当に限界を完全に越えてしまったなと感じています。
――今大会の挑戦で得られたことは、なんでしょうか?
小谷:どれだけ自分が幸せなんだろうと、改めて感じられたことですね。泳いだ後も、私がとても疲れているのが分かって“担架を持ってこようか”とか、“アイシングをもってこようか”など、競技に参加していた方たちも気を使ってくれて、“次の演技も楽しみにしているからね”と言ってもらいました。
私の必死な演技を見て、何かを感じてくれたらよいなと思いましたし、大会を通じて多くの人と出会うことができたので、また会うのが今から楽しみです。
――応援してくれたみなさんにメッセージをお願いします。
小谷:自分一人の力では、絶対に4つの金メダル獲得は達成できませんでした。応援、サポート、そして仲間(渡辺千晶さん、藤丸真世さん、安部篤史さん、箱山愛香さん、木村叶さん)たちがいてくれたからこそできたこと。本当に私の挑戦に携わってくれたすべての人に感謝しています。
応援してくれる人がいたからこそ、最後まで泳ぎきることができました。本当に本当にありがとうございました!
目標である4つの金メダルを獲得した小谷。8月11日には、東京都江東区の東京アクアティクスセンターで、シンガポール大会の混合チームテクニカルルーティンの演技を披露することが決定。
■小谷実可子(こたに・みかこ)
1966年8月30日生まれ、東京都出身。ソウルオリンピックでは夏季オリンピック初の女性旗手を務め、ソロ・デュエットで銅メダルを獲得。1992年に現役引退。東京2020招致アンバサダーを務めるなど国際的に活動。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、スポーツディレクターに就任するなど幅広く活躍。日本オリンピック委員会 常務理事(JOC)、世界オリンピアンズ協会 副会長(WOA)、日本オリンピアンズ協会 会長(OAJ)など、15の役職をこなしながら、2025年7月に開催された世界マスターズ水泳選手権(シンガポール大会)で、4つの金メダルを獲得。