『三つ目がとおる』で手塚治虫が描いた写楽の極悪非道さと和登さんのエロさはやっぱりすごかった!

『三つ目がとおる』で手塚治虫が描いた写楽の極悪非道さと和登さんのエロさはやっぱりすごかった!
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―今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

「おたぽる」の別の企画で、宝塚市立手塚治虫記念館に行ってきた(http://otapol.jp/2014/12/post-2076.html)。館内には、自由に手塚治虫の作品を読めるコーナーがある。そこで『手塚治虫全集』の黒を基調にした重厚感のあるデザインを見て、とても懐かしい気持ちになった。

 今ではこうして、懐かしのマンガレビューなんて書かせていただいているが、実は小学校低学年の頃、僕の家では「マンガ読むの禁止令」が敷かれていた。父親が

「マンガなんて読んでいたらバカになる」

という、いかにも昭和な、古~い考えの人だったのだ。しかも僕はひとりっ子で病弱だったため、兄弟や友達からマンガを借りるという手段すら封じられていた。

 ただし、例外があった。学研から発売されていた『ひみつシリーズ』と手塚治虫だけは読んでも良いことになっていたのだ。母に図書館に連れて行ってもらい、『手塚治虫全集』を読んだ。そこで出会ったのが、『三つ目がとおる』である。もちろん『ブラックジャック』や『火の鳥』『どろろ』など、さまざまな傑作と出会ったが、『三つ目がとおる』はなぜか、特に夢中になって読んだのを覚えている。

 当時は全集なのだから、当然古い本だとばかり思っていたのだが、『三つ目がとおる』の連載期間は、1974年から1978年。僕が1972年生まれだから、連載終了間際は出会ったことになる。

『手塚治虫全集』で『三つ目がとおる』を読むと、途中から急にエピソードが始まる。そして途中で1話に戻るという構成になっている。ずっと、「なぜだろう?」と思っていたのだが、実はコミックが途中まで出たところで、『手塚治虫全集』の出版が始まったらしい。途中まで出ていたコミックの発売は中止して、『手塚治虫全集』に掲載することになった。そのため、『手塚治虫全集』の1巻は、コミックスの7巻に相当するらしい。

 今だったら、コミックはコミックで最後まで出し切った後に、『手塚治虫全集』に掲載すると思うが。まあ当時は当時の事情があったのだろう。

 ......と、前置きが長くなったけれど、手塚治虫記念館で久しぶりに『三つ目がとおる』を読んだわけである。そして、やっぱり面白かった。ただ、あまり時間がなくて最後まで読めなかった。なので、Kindle版をダウンロードして読み返してみた。
 
 『三つ目がとおる』の主人公は、写楽保介。文字通り三つ目で、デコに丸い目がある。普段は大きなバッテンの絆創膏で目を隠している。目が隠れていると知能はおさえられ、無邪気な幼児みたいなキャラクターだ。しかし絆創膏を外すと、人間をはるかに超越した知能を持ち、超能力も使うことができる。だったら「普段から外しておけばいい」という話だが、めったに外さない。

 それは絆創膏を外した状態の写楽が、極悪非道だからである。そもそも写楽は人間ではないし、人間の生命もどうでも良いと思っている。作中でも、直接的描写は少ないものの、結構平気で人を殺す。また、殺さないまでも人間の脳みそをところてんにする(何も考えられず呆けた状態になる)機械を平気で使う。

 僕にとっては、ほぼ最初に出会ったマンガのキャラクターなので、素直に受け入れたが、少年マンガの主人公としては、かなり異質である。性根が悪党な少年マンガキャラクター自体、かなり少ないのだ。『デス・ノート』の主人公・夜神月はかなり歪んだ性格をしているが、根底部分には、人間社会が良くなるよう祈っている。『ドラゴンボール』のベジータか、『寄生獣』の後藤あたりが、性格的に近いキャラクターかもしれない。

 そして写楽保介は、とても孤独なキャラクターでもある。人間をはるかに凌駕する能力を持った三つ目族だが、すでに滅んでいる。母とは死に別れ天涯孤独だ。人類を滅ぼそうとする悪魔の顔と母を欲しがる子供の顔が同居している部分が、写楽保介の一番の魅力なのだと思う。

 写楽が唯一気を許す相手が、同じ学校に通う和登千代子である。ショートヘアの男まさりなキャラクターで、絆創膏バージョンの写楽の面倒を見る係になっている。

 ただ、本心では絆創膏を外した写楽に恋をしている。写楽も、和登さんには母親に対する愛情と、女性に対する愛情の、入り混じった感情を持っている。......と、ここで気がついたのだ。小学校の僕がなぜ『三つ目がとおる』に食いついたのかを。それは和登さんのエロチックなシーンに食いついたのだった。

 小学校低学年の僕にとって、リアルな女性の裸が描かれたシーンを読むのは初めてだった。手塚治虫の作品が、実はエロいというのは、『ふしぎなメルモ』だの『ばるぼら』だの例を出すまでもなく、最近ではよく知られているが、マンガ音痴のうちの両親は知らなかったはずである。

 今読んでも、和登さんはなかなかキュートなキャラクターだ。冒険中に裸になると、しばらく裸のままで、なんだかこっちまで、落ち着かなくなってしまう。40超えたオッサンまでドキドキさせる、手塚治虫はやっぱりすごい!!

 写楽保介と和登千代子(和登さん)の名前は、シャーロック・ホームズとワトソンからきている。なぜ名探偵の名前をチョイスしたのかと言えば、写楽と和登さんが、古代の謎や、遺跡の謎を、解き明かしていくからだろう。今思えば、古代文明や超能力などは、連載当時の流行りだったのだ。

 ちなみにユリゲラーが最初に日本のテレビに出たのが1974年。魔のバミューダトライアングル、サルガッソーなどなど、オカルトブームだったのだ。そのブームに手塚治虫が寄せていった形だった。

 1960年代後半、実は手塚治虫の人気は下降気味だった。劇画など、新しい風に追いやられていた。しかし『ブラック・ジャック』で息を吹き返し、『三つ目がとおる』はその後に、始まったマンガだった。その後、『ブッダ』『MW』などの連載も始まり、マンガの神様としての地位を確立した。

 当然、そんな話を小学生の僕は知らなかった。写楽が唱える呪文を覚えるのに必死だった。やっと覚えた

『アブトル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク われとともり来たり われとともに滅ぶべし』

はいまだに忘れていない。

 その後、『臨兵闘者皆陣列在前』だの『オンキリキリバサラウンハッタ』とか、いろいろ覚えたけど、いまだ実生活で役に立ったことはない。

 個人的に一番好きなエピソードは、Kindle版『三つ目がとおる』10巻の7話『暗黒街のプリンス』である。写楽がマフィアに頼まれて、すべてをウンコにするピーナッツ(なんでもあっという間に腐食させる薬)を作る話だ。
 
 なんの罪もないタンカーを人間ごとウンコにしてるくせに、かあちゃんが欲しいと泣く写楽。そして和登さんのヌード。短いけど、とても『三つ目がとおる』らしい話だったと思う。ほかのエピソードも傑作短編がそろっているので、『三つ目がとおる』初体験の人は、10巻から読んでもよいと思う。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/>

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