【ICAF 2015】「商業アニメの方面に行くべきかどうか」 『フミコの告白』『陽なたのアオシグレ』の石田祐康が再び直面する岐路

【ICAF 2015】「商業アニメの方面に行くべきかどうか」 『フミコの告白』『陽なたのアオシグレ』の石田祐康が再び直面する岐路

 去る8月28日から31日まで、東京・六本木の国立新美術館にて「ICAF 2015」が開催された。2002年から始まったICAF(Inter College Animation Festival)は、各校選抜の学生作品を一挙に見られる機会として定着。今回は北海道から広島まで、過去最高の29校が集った。

 本件では初日に実施された「ICAF レトロスペクティブ! トークセッション」から、石田祐康監督のキャリアについてお届けする(大学時代に関しては、先日の記事(http://otapol.jp/2015/09/post-3865.html)を一読してもらえると幸いだ)。

■『フミコの告白』『rain town』が高評価 本格的な動画時代の幕開けも追い風

 石田監督がアニメーション制作の機会を得たのは高校生の時。「高校の時にデッサンとか絵とか描いたりしてたんですけど、地元の公民館でカメラを使ってCMを作ってみようみたいなワークショップがあって、『絵も描けて映像もやれるんだったらアニメーションしかないでしょう』となって作ったのが最初でした」。

 高校は愛知県立旭丘高等学校の美術科。地元では「旭美」の略で通っている。「美術科は日本画やったり油絵やったり彫刻やったりと純粋に美術をやる学科なんで、そんな中でアニメーションやりたいとなって、デザインのコースでは割と『何をやっていいよ』ってことで作りました。教えてくれる人はいないんで、本を買ってきたりしましたが、友達が『Flashでこんなのできるよ』とか言ったり、別の友達がタブレットの存在を教えてくれたりで、Photoshopで絵を描いて編集とか『みんなのうた』みたいなのを作りました」。

 友人によるFlashの紹介からも、ネットの流行の指標である“Flash黄金時代”やアニメ業界の周辺でいうところの“Web系”など、ゼロ年代前半の事象が見て取れる。「アニメーションをやるつもりはなかったんですが、高校の卒業制作で1年間かけて作りました。まだタブレットは慣れなかったので、卒業制作は紙に描いて作りましたね。スキャンして取り込んで、After Effectsで手探りしながら」。

 石田監督が高校を卒業して大学に進学する時期はゼロ年代の折り返し。ちょうどYouTubeが開始されユーザーが増え始めるなど、本格的な動画時代の幕開けと重なった。各自がアップしていた「自主制作アニメ」が多く見られる中、石田監督もまた高校時代の作品を公開していた。現在は非公開だが、『旭美ロードショー』なら覚えている人は多いかもしれない。

 2007年に入学した京都精華大学では、前年より美術学部のマンガ学科が学部に昇格。石田監督は、そのマンガ学部に新設されたアニメーション学科の2期生になる。一躍その名を知られるようになったのは09年に公開した自主制作の『フミコの告白』だが、先日の記事でも語っているように監督を引き受けたのは友人からの誘いによる。それ以前に制作を決めていたのは卒業制作の『rain town』だった。

 『フミコの告白』が5名での制作の一方、『rain town』は2人での制作に。「作品の根幹の部分で先生の力を借りて、ためになる話をいっぱい聞きました。いざ作るとなると『rain town』は『フミコの告白』と違って油絵のようなタッチだからデッサン力がないといけないし、根気もなければいけないので、また人を探しました。提出日ギリギリまでレンダリングしてて、朝起きたら失敗してたりとか」。

■商業アニメの方面に行くべきかどうか スタジオコロリドからの誘いが岐路に

 石田監督は卒業後も研究生として大学に残った。「傍から見たら系統として商業アニメの方かと思われるかもしれませんが、何かしら潜在的にそっちに行きたくないというか、そのまんまじゃ嫌だという変な抵抗があって、何かちょっと捻りたいというのがありました。やっぱり短編や自主制作をやってたからそうした思いがあり、すんなりとスタジオに入るのが合うかどうかの疑問がありました」。

 自分に合うアニメーションは何なのか。石田監督が1年間の延籍で探ろうとしていたところ、半年後、大学の教授でもある杉井ギサブロー監督の熱心な誘いにより、長編アニメ『グスコーブドリの伝記』の制作に参加することになった。「手塚プロダクションでは助手として上がってきた作画をスキャンして、After Effectsでタイムコードを打って、プレビュー用のチェック映像をひたすら作ってました。そこで覚えることもありましたし、重要だとは思いましたが、『1回作画をやってみなさい』と言われて、作画チームに入れられました。そこが1段落したらまた助手に戻ったんですけど」。

『グスコーブドリの伝記』の制作が終わりかけの頃、今度は現在所属するスタジオコロリドから誘いを受けた。「コロリドから『オリジナルを作ってみませんか?』とメールが来ました。学生の頃に考えていた、そのままガチガチの商業アニメの方面に行くべきかどうかという迷いに対して、ちょうど自分がここでやるのはいいんじゃないのかと思ったので入りました。基本は商業ベースではあるんですけども、『オリジナルで面白いと思えるものを作ってくれ』と言われて企画を出したのが『陽なたのアオシグレ』でした」。

 自身初の商用オリジナル短編『陽なたのアオシグレ』。その元となったのは「ICAF 2011」のキービジュアルとして描いたものだった。「大震災の次の日でしたが、これからの自分のためでもあるし、元気になれるものをと思って、前向きに上を向くような絵を描いたんです。そして自分がワクワクできるように秘密基地みたいなものであるとか、子どもたちがイキイキとしてて、見上げる空には色とりどりの気球だったりとか、白鳥が飛んでたりとかの絵を入れてみたんですね。『陽なたのアオシグレ』をやる時にまず思いついたのがこの絵で、『いいね』って言われたからそのまま企画を進めました」。

 『陽なたのアオシグレ』も『フミコの告白』と同様に疾走感に溢れる作品である。一方でCMなどの制作依頼も、それらをイメージしたものが多い。「『ポレットのイス』(フジテレビ)にしても『FASTENING DAYS』(YKK)にしても、そういうのが好きなんだろうなと思いつつ、もっと色々考えないとなって。『rain town』みたいなのもやるってのが自分の本望ですから」。

■小規模プロダクションが直面するメジャー化のジレンマ 石田監督の岐路再び

 スタジオコロリドは昨年、中野のTCIC(東京コンテンツインキュベーションセンター)から、品川のI・Sビルに移転。フジテレビアニメ開発部天王洲ベースや「ノイタミナ」の元プロデューサー・山本幸治が代表を務めるツインエンジンと同じフロアに位置する。

 石田監督がキャラクターデザイン・作画監督を担当した新井陽次郎監督の短編『台風のノルダ』は、上記の体制により制作された。「コロリドの規模が大きくなってきて、1つの枷が大きくなってるんですね。『これがやりたい!』『こういうのやったら絶対に面白いに決まってる!』っていう純粋な思いが通用しません。それはスタッフィングや予算やスケジュールの都合だったりするんですけど、押し通すことができないというか、状況を鑑みてやらなきゃいけないんですけど」。

 『台風のノルダ』も中野時代に企画されていた作品だが、『陽なたのアオシグレ』と比べると関わっている内外のスタッフ数が格段に異なることからも体制の変化を察することができる。「『普通はこうだよね』みたいな定石に当てはめていくと自分がやりたいことから外れていっちゃって、よくあるような作品になってしまう危険性が往々にしてあります。自分が学生時代に感じたシンプルな熱量を忘れちゃいけないし、それを根っこに持っておきながら落とし所を見つけていかないと作品を作れないなと」。

 体制の変化は、そのまま必然的に長編への期待へとつながっていく。「長編はやりたいですけど大変なのは火を見るより明らかなので、様子を見ながらやっていかないと。スタジオの体力だったりとか、できるという確信を持ってからでないと」。

 石田監督が再び直面した岐路。『rain town』か『フミコの告白』かといった作風の問題としては、昨年行った精華大の准教授でもあるアニメーション史研究家・津堅信之インタビュー(http://otapol.jp/2014/09/post-1603.html)にも関連している。“Animation”と“Anime”、双方の事情に理解のある人材の育成が国際競争力に影響してくるため侮れない。

 そして作風の問題だけではない。そこにはアニメ業界内の叩き上げでなく、自主制作から商用へシフトした監督の持つ共通の悩みも含まれる。同時にアニメーターの薄給問題やデジタル作画への移行問題などを抱えているように、従来のアニメ業界のワークフローに合わせるべきか、アニメ業界がワークフローを変えるべきかの岐路とも重なっている。
(取材・文/真狩祐志)

ICAF レトロスペクティブ! トークセッション
http://www.icaf.info/icaf2015_index/2015_retrospective

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