【劇場アニメレビュー】少し詰め込みすぎ……?ヤマカンの愛を感じる『続・劇場版Wake Up,Girls! 後篇〔Beyond the Bottom〕』

【劇場アニメレビュー】少し詰め込みすぎ……?ヤマカンの愛を感じる『続・劇場版Wake Up,Girls! 後篇〔Beyond the Bottom〕』

 仙台を拠点に活動するアイドルユニットWake Up,Girls!(通称WUG!)の歩みを描いた同名アニメーション・シリーズは、映画『劇場版Wake Up,Girls! 七人のアイドル』(2014年1月)に始まり、1クールのTVシリーズ(同)、そして『続・劇場版Wake Up,Girls! 前篇〔青春の影〕』(15年9月)と続き、今回の『続・劇場版Wake Up,Girls! 後篇〔Beyond the Bottom〕』に至るわけだが、これまでの劇場版はすべて1時間弱の中編仕様であり、結論から先に記してしまうと、今回はその弊害がモロに出てしまった感がある。

 WUG!の面々がいよいよ仙台から上京してメジャー進出を図るも上手くいかず、再び仙台に戻って一からやり直す覚悟を決めるまでの前作『青春の影』は、その長さがちょうど程良く中編の枠に収まり、心地よい流れに乗って見ることができた。

 しかし、今回はアイドルの祭典で優勝を目指すという大きな命題があり、それだけでも2時間はほしいところなのに、そこに新曲を誰に書いてもらうかといった悩みや、夏休みに全国プロモ行脚する過程など、本来ならじっくり見せてほしい要素のものが矢継ぎ早に目まぐるしく通過していく。

 さらにはWUG!のセンター・島田真夢のライバルでもある、I-1Clubの岩崎志保がセンターをおろされて、博多の系列ユニットへ飛ばされるなど(どこかで聞いたことのある話ではあるが!?)といったスキャンダルも起きたりするし、しまいにはメンバーのひとり久海菜々美が宝塚ならぬ光塚への道とWUG!のどちらを選ぶかといった、映画にとってもWUG!ファンにとっても実に重大な事件が、全て1時間弱の中編枠に盛り込まれているのだから、気ぜわしいことこの上ない。

 いや、その伝でいえばヤマカンこと山本寛監督の演出は、限られた枠内を巧みに計算しながら、すべてを描出し得ているあたり、むしろお見事と讃えるべきなのだが、見終わってしばらくすると、やはりもっとあそこはじっくり見たかったとか、あそこはもう少し時間を割いても良かったのでは? といったないものねだりがどんどん出てきてしまう。

 最近、中編仕様のアニメーション映画のイベント上映が激増しているのは歓迎すべき事象ではあるのだが、やはり作品の内容に応じて時間枠やお披露目の仕方などをもっと考えたほうがいいのではないかと思える作品も少なくはない。
『WUG!』の劇場版にしても、特に今回の続編は、中編の前後篇2部作にする必要があったのか? 2時間前後の長編2部、いや、いっそ3部作くらいの枠を設けて、じっくり彼女たちの青春群像を描いてしかるべきものだったのではないか?

 そうこう考えていけばいくほど今回は、いや、このプロジェクトに対しては幾度ももったいないと思えてならない部分が多数あった。

 最初の劇場版はまだTV版のプロモ的な第0話とでもいうべき役割を果たしていたので、中編仕様でも許せる部分はあったものの、続くTVシリーズのほうは2クールかけてちょうどの内容のものを1クールに押し込めている感は否めなかった(特に最後の3話分はあまりにも駆け足的すぎる。せっかく男鹿なまはげーずなど魅力的なライバル・ユニットも出てきたりしたのだから、地区予選大会などはもっとじっくり見せてもらいたかったし、それは今回の後篇も同じだ)。

 今回も、WUG!が夏休みを利用してマイクロバスで全国を回るくだりなど、TVシリーズならばここらは一か所につき1話ずつ費やしても惜しくはないくらいの見せ場になっただろうし、何よりも一瞬一瞬の各地のショットが、もっと映してくれと言わんばかりに魅力的に映えているのだ。

 事務所の丹下社長とかつて共にアイドルユニットをやっていたサファイヤ麗子の登場も、演じる声の主がそれぞれ日高のり子佐久間レイの『トップをねらえ!』コンビであることだけでも憎い計らいなのだが(しかもこのふたり、80年代伝説のNHKアイドル番組『レッツゴーヤング!』サンデーズのメンバーでもあった!)、そんな彼女がWUG!のために新曲『Beyond the Bottom』を作曲する決意を固めるくだりも、正直もっと溜めて描いていただきたかったところ。

 曲のお披露目にしても、これは前作『青春の影』の主題歌『少女交響曲』にしてもそうだったが、WUG!がそれらの曲をフルコーラスとまではいかなくても、ファンが満足できるところまで歌い踊るシーンをじっくり見せてほしいと願っていたものの、実に魅力的な画を準備してくれてはいるのだが、残念ながら時間の制約でこちらが満足する寸前のところで次のシーンに移行してしまうので、妙なモヤモヤがたまってくる。

 これらのシーンの構築がいっそ陳腐であれば激怒もできるのだが、作っている側は非常に真摯に取り組んでいることは画を見れば一目瞭然だし、何よりもいまどきモーションキャプチャーを使うことなく、手描きの2Dでライブ・シーンを魅せるなんて、それだけでもありがたい話ではないか。

 しかし、そこまでやってくれているのならば、じっくり見せてほしいのだ。

 菜々美の光塚エピソードに関しては、これまでどちらかというと他者よりも内面が描かれてこなかったキャラクターだっただけにスポットを当ててくれたのは嬉しい限りだが、それでも1時間枠であのオチならば、ナナミン・ファンからは怒られるかもしれないが、今回はないほうが映画としてはむしろスムーズではなかったかという気もしないでもない。

 いずれにせよ、ヤマカン監督のWUG!に対する慈愛の眼差しは、今回もこちらまで涙ぐましく感じてしまうほどで、その意味では今回こちらも見る前から過剰な期待を抱いてムビチケを勇んで買い、公開初日に劇場に駆けつけた身であるがゆえに、これで『WUG!』のアニメーション・シリーズを終わらせてほしくないというのが本音であり、今回のエンド・タイトル後の真のラストショットが映されたとき、「え、これでシリーズ終了?」とでもいった不安がよぎってしまったのだが、それが余計な気苦労であることを願いたいし、次こそは時間をたっぷりかけてのWUG!をはじめとするアイドルはもとより、彼女らの周囲にいる大人たちのドラマもきちんと見据えたい。

 というか、次は最低でもマジに劇場版長編3部作枠か2クールのTVシリーズでWUG!の新たな道のりをじっくりと見せてくれ! と、毎度WUG!ヲタの太田がファミレスのおねいさんたちに怒られるくらいの大きな声で、製作委員会には強くお願いしておきたいところなのであった。
文/増當竜也

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