モノブライト出口博之の特撮自由帳(2)“家族”がいるからこそ描かれるヒーローの素顔とは!?『仮面ライダー響鬼』が見せた父性に注目してみました!!

モノブライト出口博之の特撮自由帳(2)“家族”がいるからこそ描かれるヒーローの素顔とは!?『仮面ライダー響鬼』が見せた父性に注目してみました!!

暦の上でも特撮関連でも特に大きな動きが少ない6月。来月7月17日はウルトラマン第一話のから放送50周年、29日にはゴジラ最新作『シン・ゴジラ』公開と怒涛の展開を控え、今月は「嵐の前の静けさ」のような時期です。来月の大きなトピックスに向けて、今は過去の作品を見返す期間にしようと思い、相次いで過去作品を一気に視聴しているところなのですが、その中で気になる点がいくつかありました。視聴しながら書き留めているメモの中から、今回はヒーローの家族とヒーローが持つ父性について、自由に考察してみたいと思います。

・ヒーローの家族について
 ヒーローの家族構成が明かされている作品は、部分的なものも含めるとかなり多くあります。特撮に兄弟、家族の構図を持ち込み、後の礎となった作品はウルトラシリーズ(実際は概念であり全員に血縁関係はない)です。ウルトラ兄弟が画期的だった点は、「後の作品に違和感なく客演できる」ことと、「ヒーローの孤独感の解消」という点。

帰ってきたウルトラマン』(1971年)では、ウルトラマンジャック新マン)を助けるために、M78星雲からウルトラマン(66年)とウルトラセブン(67年)が助力のために駆けつけます。ご都合主義ともとれますが、「兄弟」という関係性があるからこそこの二人の登場には説得力が加わりますし、変身前は自分がウルトラマンジャックであることを秘匿し、ヒーローとしての孤独感がありましたが(坂田兄弟やMATの面々など、人間としての理解者は存在しますが)、同じ立場、肉体を持った同胞の存在は孤独に戦う悲壮感を払拭しています。この構図が画期的だったからこそ、ヒーローのもう一つの側面である「人知れず孤独とともに戦うヒーローの悲劇性」にフォーカスをあてる作品も登場し、今日に至るヒーロー像の多様化の原点になっているのです。

 ここでは家族の中でも「兄弟」であることが重点的に描かれています。
 わかりやすい作品ではタイトルやネーミングにそのまま使われている『宇宙鉄人キョーダイン』(76年)、弟のバイクが主砲になり兄がバイクを担ぐ『「兄弟拳バイクロッサー」(85年)」、他にもさまざまな作品で兄弟ヒーローが登場します。スーパー戦隊シリーズでは初期メンバーが兄弟にあたるのは、『地球戦隊ファイブマン』、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』、『魔法戦隊マジレンジャー』、『天装戦隊ゴセイジャー』、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』。追加メンバーも含めると、作品はもっと多くなります。

 メンバーが複数いるということは、各キャラクターがそこにいる意味、それぞれの存在意義(一緒に戦う理由含め)が非常に重要になってきます。戦隊として訓練されたスペシャリスト集団、偶発的にヒーローになってしまった人たちの集団、集まる理由は多岐にわたる中で、「血縁関係であること」はキャラクターがそこにいる理由として、確固たるものがあります。『帰ってきたウルトラマン』でのウルトラマン、ウルトラセブンと同じ関係性からの説得力です。このことから、総じて「主要メンバーが複数登場する作品は兄弟設定との親和性が高い」といえます。

・未完成な心の成長憚

 家族構成において、兄弟(姉妹)の関係は「互いの違いを意識する関係」であり、これにはある種「競合する関係」も内包しています。「なんで弟ばっかり」や「なんでお兄ちゃんばっかり」、実際に身に覚えのある方も多いと思いますが、極端にいうとこれです。これは、健全な人間関係を築く過程(相手を認めて自分を確立していくこと)の第一歩でもあります。兄弟という関係性が多いのは、「互いを認め合うこと」という精神的成長が見られるドラマの山場へつながる安定したフォーマットである側面もあります。

 対して、親と子の関係性はどのように扱われているのか。
 特撮作品における父と母の金字塔は「ウルトラの父(ウルトラマンケン)」と「ウルトラの母(ウルトラウーマンマリー)」ですが、後続作品には両親が有機的に物語に絡んでくるものは兄弟関係に比べると多くありません。

『流星人間ゾーン』(73年)は両親、子供、祖父と、家族総出という珍しい形態を持ちますが、親の存在はどちらかというと、一歩引いた立ち位置にいます。他の作品で多く見受けられるパターンとして、父親(もしくは両親)の研究が敵に狙われ、命がけで子供に研究内容(もしくは戦闘能力)を託し生き絶えるなど、物語の起点となる場合が多く見られるようです。特に父親の存在がひとつのキーワードになっている印象が感じられます。

 劇中で目立った活躍を見せた父親は、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の巽世界(モンド)、『魔法戦隊マジレンジャー』の強敵・魔導騎士ウルザードになってしまった小津勇、『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013年)の桐生ダンテツ、ちょっと方向性は違いますが『仮面ライダーキバ』(08年)の紅音也も父親ですね。主人公と同じ場所で戦線に参加するパワフルな父親は他にもいますが、ほとんどの父親は主人公が越えるべき存在、または壁として描かれていることから、父親は自分の目標であると同時に、自分自身の道を模索する指標でもある、といえます。
 これが特撮作品における父性ではないかと考えています。

この父性を抽出してひとつの物語にしているのが、『仮面ライダー響鬼』(以下、『響鬼』/05年)でしょう。
『響鬼』のストーリーは魔化魍(まかもう)と呼ばれる古くから日本各地に現れる怪物を倒すため、厳しい修練を積んだ人間が呪術的な力で鬼に変身し魔化魍を倒すというもの。
鬼となって魔化魍と戦う響鬼と、鬼と魔化魍の戦いに遭遇してしまった中学生・安達明日夢(あだちあすむ)、立場も年齢も違う2人が主人公です。

 今作の主題に父性があると感じられる点は、逆説的ですが「主要登場人物に父親がいないこと」にあります。
 明日夢の両親は離婚しており母親と2人暮し。物語後半で登場する響鬼への弟子入りをめぐって明日夢と衝突する桐矢京介(きりやきょうすけ)も、消防士だった父親を火災で亡くしています。この2人が響鬼へ弟子入りするのが後半の山場になるわけですが、この心理は思春期男子が誰しも通る認められたい欲、いわゆる「自己承認欲求」です。

 明日夢は鬼の修行中に「自分にできる人助けは、鬼以外にあるかもしれない」と気付き、医者を目指す道に向かいます。紆余曲折ありながらも最終話では明日夢はきっぱりと「鬼にはなりません」と宣言し、違う道を選んだことを響鬼に伝え、響鬼は「鬼になることだけが俺の弟子になることじゃない」と明日夢の成長をうれしそうに認めます。

 京介が弟子入りを懇願する理由は、火災現場に突入して亡くなった父親を越えたい。しかし父が死んでしまっているため、自分は鬼になることで父親を越えたい。
考え方によっては自分も父親と同じ消防士を目指す、という方向も父親越えの一つになると思うのですが、亡くなった父親の代わりに目指した存在が鬼である響鬼なのです。

衝突を繰り返していた両者は最終的に互いを認め合い、鬼としての弟子は京介、鬼を越えた弟子に明日夢、という関係に着地します。

 では、師匠として2人の少年と接している響鬼に焦点を当ててみましょう。
 鬼は師弟制度を採っており、基本的に師匠と弟子がマンツーマンで行動し魔化魍と戦いながら技や鬼としての心構えを弟子に教え、弟子は免許皆伝を授かると独り立ちし自分の屋号を持ちます。師弟の関係は親と子のそれとほぼ同義か、それ以上のつながりがある関係です。

 しかし、響鬼は師匠をもたず、たった一人で鬼になる修行を積んで鬼になっています。いわば、親がいないのです。この境遇は2人の少年と共通する点ですが、親がいない負い目を地道ながらも極限まで己を鍛え、自己肯定をすることで払拭するほかなかった響鬼。
 序盤で弟子はとらないと言っているのは、親の立ち振る舞いがわからないから。2人を弟子入りさせるに至った心境の変化は、響鬼自身の親になる決心がつき、心の成長が起こった瞬間といえます。

 平成仮面ライダーシリーズにおいて『響鬼』の作風は殺伐とした雰囲気が非常に少ないのは、親と子(疑似的ではあるが)の成長を中心軸に置いてじっくりと描かれていることに起因します。
『仮面ライダー響鬼』は、父性を親と子それぞれの立場から描いた作品と言えるのです。

 ウルトラシリーズがもたらしたヒーローの血縁関係の概念は、キャラクターの内面をより深く掘り下げることに成功し、今ではキャラクター設定の王道パターンになっています。ヒーローに血縁関係があるということは、敵(あくまでコミュニティを形成する知能を有する繁殖可能な生命体に限る)にも血縁関係があることを意味します。現に多くの家族、親子が存在する敵組織も登場し、敵にも敵なりの正義やイデオロギーがあり、ルールがあり、目的があるのです。おおむね「悪」として描かれていますが、冷酷なキャラクターが家族愛を見せる場面は、非常に引き込まれます。

 特撮における登場人物の血縁関係は、キャラクターを掘り下げ、物語を重層的に見せる効果的な役割を持っています。
 このことに注目して、視聴してみてください。違った面白さが発見できるかもしれません。スターウォーズも、宇宙を巻き込んだ壮大な親子ゲンカ、という見方もできなくはないのです。
(文・モノブライト出口博之)

■モノブライト公式サイト
http://www.monobright.jp/

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