退団された花乃まりあさまが歌う「顎で受けなさい」に、けなげに生きる女の、死への覚悟を学ぶ。

退団された花乃まりあさまが歌う「顎で受けなさい」に、けなげに生きる女の、死への覚悟を学ぶ。

――宝塚ヲタの女医、wojo(ヲジョ)が宝塚の名曲を皆様にご紹介! ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」!!

【第10回】
「顎で受けなさい」(ミュージカル『ミー・アンド・マイ・ガール』より)

 宝塚での初演は1987年の月組で、この曲を歌うサリー役は同組のこだま愛であった。『ミー・アンド・マイ・ガール』は子どもから大人まで楽しめるロンドン発のミュージカルで、同曲はこのミュージカルの二幕で歌われる。ヒロインのけなげな生きざまが曲調にもにじみ出た、明るい中にも寂しさを感じさせる1曲。

 宝塚ファンの女医、wojoです。少し遅くなりましたが、本年もどうかよろしくお願いいたします。

 さて、私事ですがwojoは今年、「アラフォー」の「アラ」は必要なくなり、まさに「フォーティ」の年。いろいろと正念場です。そんな折も折、知人からこんな本をいただきました。『夫が妻に何度も恋をする魔法の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

 独身彼氏ナシのwojoにはまだ早すぎる内容な気もしたのですが、どうしてなのでしょう、この本をwojoにくださったのは……。ちょっと理由がわかりませんでしたが、まあせっかくいただいたので読ませていただきました。するとこれがまた大変勉強になりました。なんとこの本には、「男性から愛される女性になるには、宝塚の娘役をお手本にしなさい」と書かれているのです。ここにも宝塚が! ざっと読むとどうやら、男性に対して、女性のほうからすべてを完璧に仕切ってはいけない、男性が工夫する余地を残しておいてあげなさい、という趣旨の本のようです。

「(宝塚における男性である)男役が言いたいこと、やりたいことを、女役が全部奪ってしまい、『愛してるわ! あなたのために全部用意したの! 見てごらんなさい! この城を!』と言ってしまうと、男役は『はあ?』となり、何もできないし、言えないし、これ以上ストーリーが続きません」(『夫が妻に何度も恋をする魔法の習慣』107ページより)だそうです。確かに! あくまで、表面的なリードは男役(男性)にお任せし、男役(男性)がリードできる環境づくりが大事、ということなのですね。ふむふむ……。

 加えてwojoが思うに、宝塚の娘役にはもう一つ、我々が見習うべき重要な点があります。それは、「けなげ」であること。宝塚の娘役はたいてい一生懸命でまっすぐで、場合によっては命がけの恋もします。そんなけなげな娘役の代表格として挙げられるのが、ミュージカル『ミー・アンド・マイ・ガール』のヒロインであるサリー・スミスでありましょう。通称サリー。このサリーのすごいところは、恋人が幸せになるために、自分が身を引く、という行動に出ようとするところです。信じられますか?? 自分は幸せにならなくてもいいんですよ! サリー、良い子すぎる……。

『ミー・アンド・マイ・ガール』は1937年にロンドンで初演された、ロンドンを舞台としたミュージカルです。その後はしばしばロンドンやニューヨークで上演されていたようですが、1980年代に入るとなぜか数年おきに宝塚歌劇団で上演されるようになり、さらに東宝ミュージカルでも2003年からは数年おきに上演されているという、どういうわけだか日本において愛され続けている作品です。

 舞台は1930年代のロンドン。下町育ちの主人公・ビルが、実は伯爵家の血筋を引く青年であることがわかり、その後継ぎとして立派な紳士に仕立て上げられていく……という内容ですが、そんなビルのもともとのガールフレンドだったのが、魚市場で働く下町の女の子・サリーなのです。紳士としての教育を受け、立ち居振る舞いが変わっていくビル。そしてビルの周りの貴族たちから「身分違いだから」とビルと別れるよう諭され、つらい思いをするサリー。そんなサリーがミュージカルの二幕冒頭で歌う曲が、「顎で受けなさい」です。

ある時にみんなが言った ママとパパと兄姉達が
大きくなればお前もやがて家から出て行くだろう
そして言った こんなことを ママとパパと兄姉達が
教えておくが世の中で悔しいことが起きたら
受けなさい アゴで 何が聞こえてきても
知らんふりしてな 朗らかにしてな
そう言ったんだ ママとパパと兄姉達がその通り
肝に銘じていなけりゃダメと
言われたその通りだ
ちょっとした知恵 悲しみ受け流す知恵
アゴで受け止めてニガい顔して スマイル
考えりゃみんなくだらないことだ
ガタガタしても死ぬの待つだけ
生きてればどんな目に会おうとも
アゴで受け止めてニガ虫つぶして スマイル
ちょっとした知恵 悲しみ受け流す知恵
アゴで受け止めてニヤリとしてから スマイル

 不肖wojo、この曲を初めて聴いたのは、天海祐希さま・麻乃佳世さまのサヨナラ公演でもあった1995年月組の『ミー・アンド・マイ・ガール』でした。まだwojo高校3年生でした。夏から冬にかけ、ビデオが擦り切れるほど拝見し、12月には1回だけ、1階席の後ろのほうで実際に観劇させていただき……。嗚呼(遠い目)。ただしこの頃は、サリーのこの曲、あんまりwojoの心には響きませんでした。「顎で受けなさい」を聴くと、「サリーって強がりな女!」なんて思う、かわいくない女子高校生でした。でも今ならわかります。特にこの部分。

考えりゃみんなくだらないことだ
ガタガタしても死ぬの待つだけ
生きてればどんな目に会おうとも
アゴで受け止めてニガ虫つぶして スマイル

「生」と「死」がさりげなく織り交ぜられており、深く読めばゾッとさせられる気もいたします。サリーは苦しさのあまり「死」を意識しながらも、それでも懸命に「生きよう」としたのかな、と。でも、生きていればなんとかなる。普段の悩みのほとんどはくだらないこと。死ぬことに比べれば全然マシ! サリーの歌詞を、そういう意味を込めて読み直すと、アラフォーのwojo、スッと気持ちが楽になるんですね。

 何事も捉え方次第、なのです、きっと。

 サリー役は、初演のこだま愛さまから麻乃佳世さま、風花舞さま、彩乃かなみさま、羽桜しずくさま、桜乃彩音さまと続き、2013年には愛希れいかさま、2016年には花乃まりあさまが演じられました。その花乃まりあさまはこの2017年2月5日にご退団されましたが、そのさよならショーの冒頭で歌われたが、なんと「顎で受けなさい」だったんです! ええ、確かに花乃まりあさまが演じたサリーはものすごくけなげで、まさにこの曲にピッタリでした。こういうかわいらしい女性になりたい、と思わせられる、けなげなサリーNo.1、wojoの今年の目標にしたいです!

 しかしふと冷静になると、けなげな40歳女性って、我ながらあまりイメージがわきません。けなげって、若い人に使う言葉なのでしょうか……。そう思って「デジタル大辞泉」を紐解きましたら、「けなげ(健気)1 殊勝なさま。心がけがよく、しっかりしているさま。特に、年少者や力の弱い者が困難なことに立ち向かっていくさま。」ですって……。年少者! やっぱりそうなのか。もうwojoは定義上、けなげな女性になることはできないのですね……。

 仕方ないので気を取り直し、『夫が妻に何度も恋をする魔法の習慣』をしっかり頭に叩き込んで、不自然ではないレベルで、宝塚の娘役っぽさを身に着けたいと思います。

●wojo(ヲジョ)
 都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当は内科、宝塚のほうの担当は月組。

 新しい薬剤が次々と開発され、既存の薬剤に新規薬剤を加えて治療成績を比較する、という試験がよく行われています。多発性骨髄腫という血液の病気に対して、1「既存の薬剤α+新規薬剤」、2「既存の薬剤β+新規薬剤」、という試験が世界規模で行われ、1、2それぞれに、ギリシャ神話の双子の「カストール」と「ポルックス」(ふたご座のもとになっているゼウスの息子たち)という名前が付けられていました。既存薬剤はそれぞれ異なるけれど、新規薬剤のほうは同一、という意味が込められているのだとか。

 そんな話をwojoに教えてくれた、治験などにも携わっている医師が、なんと最近宝塚にも興味を持ってくださり、「もし同じニュアンスで5通りの投与方法を試験したい場合は、flower(花)、 moon(月)、snow(雪)、star(星)、cosmos(宙)でやりましょう」とのこと。本当でしょうか……。

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