【劇場アニメレビュー】新作『クレしん』はロードムービー!?  キャスト・スタッフの安定感がすごい『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』

【劇場アニメレビュー】新作『クレしん』はロードムービー!?  キャスト・スタッフの安定感がすごい『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』

 今や『ドラえもん』『それいけ!アンパンマン』に続く国産長寿アニメーション映画シリーズ第3位の座について久しい『映画クレヨンしんちゃん』ではあるが(ちなみに第4位は『名探偵コナン』シリーズ)、そういった貫録も歴史の重みも何も感じさせない(!?)飄々としたところが(!?)、このシリーズの長所ともいえるだろう。

 興行収入も10億円台前半をキープし続けていたのが、第23作『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』(15)と第24作『爆睡! ユメミーワールド』(16)ではシリーズ第1作『アクション仮面VSハイグレ魔王』(93)および第2作『ブリブリ王国の秘宝』(94)の頃の20億円台へと返り咲いているが、かつてのファンが戻ってきたのか、新たなファン層が増えているのか、いずれにしてもこのシリーズが安定した中にも好調の波に乗り始めていることのひとつの証左になっているように思えてならない。

 第25作目となる最新作『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』もそういった好調ぶりを反映させた快作たり得ている。ご存じ野原一家の、特にドタバタでけたたましい日常生活でのやりとりは、演じている声優陣はもはやアドリブに思えるほどの自然な息の合い方であり、その心地よいリズムとテンポはやはり長寿シリーズのレギュラーならではの強みでもあるだろう。昨年8月から藤原啓治に代わってヒロシ役を務めている森川智之は劇場版へは初登場となったが、、その事が全然気にならないほどに声優陣の息がぴったり合っている(藤原がいない分、みんな奮闘したのだろう)。

 監督は第21作『ばかうまっ!B級グルメサバイバル』(13)および『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』の橋本昌和。これまでシリーズ最多登板した監督は原恵一の6本で、続いて本郷みつる(5本)、ムトウユージ(3本)。橋本監督は今回で同率3位ということになるが、本数を重ねるごとに演出のゆとりとともに面白みも増してきている。

 今回のストーリーは、ある日突然地球にやってきた宇宙人の子どもシリリとしんちゃんの友情を描いた、いわばしんちゃん版『E.T.』みたいなものだが、その実、シリリが恐怖におびえると放ってしまうビームを浴びたとーちゃん(ひろし)とかーちゃん(みさえ)が25歳も若返り(シリーズ25作目とひっかけているのか?)、要するに野原一家はみんな子どもと化してしまう。その姿を元に戻せるのはシリリの父親だけで、どうやら今は鹿児島県の南方諸島のほうにいるらしい。

 かくして野原一家は南へ列島縦断する旅に出る。同じ東宝配給で先ごろ、ライフラインがすべて途切れた東京を脱出し、家族で鹿児島まで赴く実写映画『サバイバルファミリー』が公開されたばかりだが、本作もそれとちょっと似ていて、つまり今回のしんちゃんはロードムービー仕立てなのだ。

 その中でシリリは、その名にふさわしいキャラ造型で、最初はどことなく地球人を侮蔑しているのだが、旅を始める過程でその姿を周囲に見られてはまずいので、しんちゃんのお尻に隠れながら移動することになる。これがまた彼にとって妙に居心地の良い場所だったようで、しかも旅の途中でとーちゃんたちとはぐれてしまったしんちゃんとシリリは、ふたりで何とか旅を続けていく(子どもたちだけで、そんなアホな? といったツッコミは不要。ちゃんとそこにも落としどころは用意されている)。

そんなこんなで、ふたりの間には友情が芽生えていくのだが、ドタバタなくだらなさがてんこもりの中、その心のふれあいの描出に怠りがないので、非常に見ていてスムーズ。いわゆる笑いの中に感動がある『映画クレヨンしんちゃん』ワールドにふさわしい展開となっていくのであった。

 ようやくシリリの父親のもとにたどりついた野原一家およびシリリにどのような運命が待ち受けているかは見てのお楽しみとして(まあ、大方想像はつくとは思うが)、シリリの父親の声を演じる雨上がり決死隊の宮迫博之は、相方の蛍原徹とともに『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(02)以来の参加ではあるが、今回は重さと軽さ、硬軟双方を巧みに使い分ける好演で大役を乗り切っている。

 それにしても『クレヨンしんちゃん』とお尻は切っても切れない関係性にあるが、ここまでシリというキーワードにこだわられると、もはや呆れるよりほかになく、しかしその脱力感こそがしんちゃん映画の醍醐味でもあるのだろうと、改めて痛感せざるを得なくなるのも事実ではある。

 また、だからこそ最初に述べたように、四半世紀も続く長寿シリーズの割にそんな重みも貫録も微塵も感じさせない飄々とした軽やかな味わいが醸し出されているのだろう。

 あ、書き忘れていた。今回はカスカベ防衛隊の出番はさほどないなと思いこんでいたら、実はびっくり仰天の思わぬところで大活躍してくれるのも大いにカタルシスがあり、やはりわかってらっしゃる方々が作ってくださっているなあと、ニンマリしてしまった次第である。
(文・増當竜也)

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