実写版『銀魂』をヒットさせた福田雄一監督の最新作『斉木楠雄のΨ難』もメチャ面白い!

実写版『銀魂』をヒットさせた福田雄一監督の最新作『斉木楠雄のΨ難』もメチャ面白い!

 最近の日本映画界を席巻し続ける才人のひとりとして、福田雄一監督が挙げられる。1968年生まれの栃木県出身、演劇活動からキャリアをスタートさせながら、並行して放送作家として『SMAP×SMAP』『いきなり!黄金伝説』など数多くの人気バラエティ番組の構成を手掛け、やがて『THE3名様』シリーズ(05~10年)などドラマ演出に進出。 

 2009年に自身の舞台を映画化した『大洗にも星はふるなり』で映画監督デビューを果たし、その後TVドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(11~16年)でのゆるゆるヒーローぶりが人気となり、同時期にまさかの映画化を果たした『HK/変態仮面』シリーズ(13&16年)がクリーンヒット。その後も着実にTV、映画と作品数を重ねていき、今年は何とあの『銀魂』を演出し、原作ファンも納得させながらの大ヒットとなった。

 福田監督作品の特徴としては、TVも映画も関係なく、とにかくゆるい脱力気味のギャグをエネルギッシュに連発させながら、見る側をぽよぽよしたほんわか気分にさせてくれるとことにあり、またくだらないことをひたすら真面目に熱心に繰り広げていくことで、可笑しみの中にどこかしら哀愁漂う、まさにマーク・トウェインが説くところの「ユーモアの源泉は哀愁である」に倣ったセンスと力量で作品を連打し続けているところにあるだろう。

 また、それゆえか作品の数が増えていくごとに、最近は不思議なまでに映画的な見せ方が上手くなってきている感もあり、さらには緩急のつけ方として『銀魂』ではゆるゆるギャグと壮絶な殺陣のメリハリに腐心しているのが読み取れ、これまた好感を持てるところがあった。

 そんな福田監督の最新作が、これまた「んなもん、実写映画化しちゃうのか?」と原作ファンもびっくりの、『斉木楠雄のΨ難』である。

 原作は麻生周一が「週刊少年ジャンプ」に連載中の同名マンガ(余談だが、福田監督は『HK/変態仮面』『銀魂』と、集英社系マンガ原作の実写映画化が多い)。その内容は、生まれたときからとんでもない超能力を備え持ち、何とかその事実をひた隠しながら普通の高校生として地味に生きようと努める斉木楠雄の日常を描いたもの。

 何せ彼の超能力は度を超えていて、壁ドンするだけで建物が破壊されるほどで、その気になれば地球を壊すことも、宇宙を崩壊させることすら可能ではないかと思えるほどで、あまりにもすごい力ゆえに10代にして既に世の中に対して冷めたものがあり(ちょっとその気になるだけで学力は1位になれるし、スポーツも万能。しかし、それを表に出すことはできない)、終始無表情を装っているというより、もう感情を表に出せない性格になっているかのようでもある。

 しかし、無難な日常を送りたがっている彼ではあるが、クラスメイトなど周りにいる連中が、もうワケありなんて言葉もどこかへすっ飛んでしまうようなアホ、とにかくアホ、本当にどうしようもないほど個性的なアホ揃いで、そんな彼らとともに文化祭という一大行事を過ごさなくてはならなくなったのであった!

『銀魂』ではギャグとハードを両立させるという新境地を開拓し得た福田監督が、今回はそのリハビリといってはアレだが、本当にのんびりと楽しくゆる~いギャグを連発させながら、それでいてちゃんと1本の映画としてのメリハリも鮮やか。個人的には『銀魂』よりも福田監督らしい微笑ましさが十二分に発揮された快作と捉えている。

 何よりも今回はキャストがいい。斉木楠雄を演じる主演の山崎賢人は、ここ数年漫画原作の映画出演が目立っており、今年だけでもすげに『一週間フレンズ。』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』と新作が発表。本作の後も、11月に公開される『氷菓』は推理小説が原作だがTVアニメ版の印象も強いだけに、今や彼こそ2次元世界の3次元化俳優の第一人者といってもよい(その事実を本作の予告編でギャグに使っているほど!)。そして今回の彼は、およそありえないキャラクターを演じることの歓びみたいなものが、見る側にもすこぶる伝わってくるはまり役の好演である。

 が、今回もっともすごいのはヒロイン照橋心美を怪演する橋本環奈であろう。“1000年に1度”の“天使すぎる”美少女として大いに崇め奉られている彼女だが、ここではそういったキャラクターを逆手に取るかのように、自分が美少女であることを自覚し、それなのに唯一自分に興味を示してくれない斉木楠雄を虜にしようとあの手この手を画策していく、その見た目は乙女で内面ドロドロ具合が絶妙に楽しい(ちなみに斉木楠雄は超能力で心の内を読むことなど日常茶飯事なので、彼女の内面などとうの昔にお見通しなのだ)。

 もともと橋本環奈は『銀魂』ではヒロイン神楽に扮し、何と鼻くそほじり姿まで披露してしまったのだが、それをやらせてしまった福田監督を全面的に信頼しているのだろう、今回もおよそ天使過ぎる美少女なら絶対にやらない言動の数々を喜々として実行してくれているのだが、それによって逆に彼女の好感度もアップするのではないか?(少なくともわたしはそうである)

 その他、ひとりひとりのアホなキャラを紹介していったらきりがないほどだが、全てがマンガ原作というある種の滑稽さとケレンミを理解し、福田監督に身を委ねながら徹底的にオバカなことを真剣に演じてくれている。そのことが何よりも本作を面白くしている秘訣なのだ。

 作っている側が勝手に悦に入って笑っているだけで、見ている方は面白くも何ともないというコメディ映画は昔も今もいっぱいあるが、福田作品に関しては真剣に笑いに挑戦し、しかしそれを億面にも出さず、ゆる~く観客に提示して2時間弱の上映時間を堪能させてくれる。個人的にも今もっとも信頼できる映画監督であり、『斉木楠雄のΨ難』もまたその期待を裏切らないどころか、彼のフィルモグラフィの中でも1、2を争う楽しい出来栄えであると強く推したい。
(文=増當竜也)

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