身近になってきているAIだが、他国の対応状況と比べて日本はどのあたりに位置するのか、把握するには多角的な視点が必要だ。そこでプロの指標と分析をのぞいておこう。
調査では、同社が開発した「AI成熟度指標」を活用。2つの側面に焦点を当てて評価した。まずは、雇用の置き換えや産業全体の生産性向上など、AIによって引き起こされる変化にどれだけ影響を受けやすいかという観点。次に、AI活用に伴うリスクに対処しながら経済成長を促進する準備が整っているかといった「AI対応力」の観点だ。
この2つの指標を総合的に分析することで、73の国・地域を6つのタイプに分類。AI導入の先駆者であり、盤石なインフラを築いて多様な産業でAIを活用している「AIパイオニア」、AIの影響を受けやすい産業の割合が高いものの、対応力の高さによってバランスを保っている「バランス型挑戦者」、工業・資源依存型の産業構造のため、AIの影響を受けにくい国・地域が多く含まれている「成長型挑戦者」、AIによる変化の影響を受けやすい産業が多いうえに対応力も低い「脆弱な実践者」、AIを緩やかなペースで導入している「段階的実践者」、そしてAI導入の初期段階にある「AI新興国」。日本はこの6分類のうち、2番目のバランス型挑戦者だ。
AIによる変化の影響を特に受けやすい産業は、情報通信、ハイテク製品、小売・卸売業、金融サービス、公共サービス、自動車製造の6つで、これらの産業がGDP(国内総生産)に占める割合の高い国・地域は、AIが引き起こすディスラプションの影響を受けやすい。日本のGDPは、AIの影響を特に受けやすい情報通信・ハイテク産業が合計7%、さらに小売・卸売業(13%)、公共サービス(17%)、ビジネスサービス(20%)といった産業で構成されており、AIによる影響の大きさは中~大程度と評価されている。
一方で、目標設定、スキル、政策と規制、投資、研究とイノベーション、エコシステムの6要素に基づいて評価した「AI対応力」で、日本はスキル、政策と規制の2項目で高い評価を得た。