■早めに添付書類の準備を
今年はいわゆる「年収の壁」が変更されたことを受けて、年末調整がより一層複雑になります。勤務先で年末調整の電子化が導入されている場合、かなり助けられる部分がありますが、入力内容に悩んで時間が取られる可能性もあります。
年末調整が電子化されている人もそうでない人も、事前に準備できる添付書類などをきちんと把握・確保し、入力・記入も早めに着手するのがお勧めです。
今回の年末調整の書類は主に以下の3種類です。
①令和8年分 給与所得者の扶養控除等申告書
来年の源泉徴収(概算での税の徴収)を行うために、家族構成(扶養控除などに関係する家族)を届け出る書類です。
変更ポイントは、大学生などが該当する、来年末19歳以上23歳未満である子ども等で、来年の合計所得金額が58万円超100万円以下(お給料のみの場合123万円超165万円以下)になる見込みの人も記載するようになった点です。
あくまで年齢で区切りますが、大学生などがこれまでより多くアルバイトをしても、親はいくらかの所得控除を受けられるようになっています。
■2枚目はほぼ例年通りの書面
②令和7年分 給与所得者の保険料控除申告書
今年支払った、あるいは年末までに支払う予定の生命保険料や医療保険料、iDeCoの掛金額などを記載して届け出る書類です。
書類の提出時には、保険会社や国民年金基金連合会などから届いた証明書を添付します。証明書が届くタイミングと、勤務先の年末調整の開始~締め切りのタイミングにラグがあることが多く、証明書をなくしてしまう人も多いです。
すでに届いた書類はきちんと保管しておく、書類を無くしてしまった場合は再発行を依頼するなど、予め準備をしておけるとスムーズです。
■より複雑化した3枚目の書類
③令和7年分 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
今年の各種控除を確定させるような位置づけの書類です。
「基礎控除申告書」の欄が昨年より細かく分岐したこと、「特定親族特別控除申告書」の欄が新設されていることなどが大きな変更点です。
①の書類同様に、大学生の子など、今年の年末に19歳以上23歳未満である子ども等のうち、アルバイトなどで多めに収入を得ている子ども等の記載漏れがないように気をつけましょう。
①の書類は、58万円超100万円以下(お給料のみの場合123万円超165万円以下)が対象として追加されたとお伝えしましたが、こちらの書類は58万円超123万円以下(お給料のみの場合123万円超188万円以下)の人までが対象です。
なお、それぞれの年末に19歳以上23歳未満である子ども等のうち、所得58万円以下(お給料のみの場合123万円以下)の人を扶養している場合も、63万円の所得控除が受けられます。従来の所得48万円以下(お給料のみの場合103万円以下)からは基準が引き上がっている点にも注意が必要です。該当する場合は、昨年提出した①に当たる書類への追記や再提出が必要です。
ハードに働いている子どもも、今までより少し多めに働いている子どもも、扶養にまつわる控除を受ける対象になり得るということですね。
■大学生などがいる家庭や共働き高収入世帯も注意
ここまでを整理すると、年末時点を基準として19歳以上23歳未満の子ども等と生計を共にしている場合に、所得控除を受けるための子ども側の所得の要件が大きく引き上がっていることを記入の際、気にかけたいということになります。
これまで、養育している大学生などのお給料が年間103万円を超える場合は、控除の対象から外れていました。しかし今年からは、子ども等の年間のお給料が150万円まで、親などが63万円(住民税の計算は45万円)の所得控除を受けることができます。
また年間の子ども等のお給料が188万円までは徐々に減額がありますが、やはり親などは一定の所得控除が受けられます。
63万円の所得控除が受けられると、年末調整の記入をする納税者本人の所得税率が5%の場合、所得税が3万1500円(63万円×5%)、住民税が4万5000円(45万円×10%)の、合計7万6500円の減税に繋がります。所得税率が20%の人だと合計17万1000円と、収入が高く税率も高い人ほど減税額がさらに大きくなります。
今回の要件の引き上げで扶養している親族に変化があった人は①~③の資料の他に、昨年提出した①の書類(令和7年分 給与所得者の扶養控除等申告書)に追記・訂正して再提出する必要もあるため、こちらも気にかけておいてください。
■住宅ローン減税の初年度は確定申告が必要
住宅ローン減税の適用を受ける人は、自宅を購入した年(初年度)については、年明けに確定申告を行う必要があります。
2年目以降の人は年末調整での対応も可能で、その場合は①~③の資料の他に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」を提出します。
添付する書類は2パターンあり、税務署から送られてくる控除証明書(調書方式)と金融機関から送られてくる年末残高証明書(証明書方式)のどちらかを添付します。
控除証明書はe-Taxによる電子交付を希望していたら毎年11月中旬頃、書面の場合入居2年目の11月下旬頃にまとめて送られます。年末残高証明書は電子交付であれば毎年10月頃、書面であれば入居2年目の10月下旬頃にまとめて届きます。
すでに年末残高証明書が届いている方も多いと思います。無くさないように保管しておきましょう。
ローンの残高や自身の元々の納税額にもよりますが、年間最大31万5000円の減税に繋がる、見落としたくない手続きです。
■年収850万円超の人が忘れたくない申告欄
本人の年収が850万円超で23歳未満の子どもなどを扶養している場合、③の書類の一番下「所得金額調整控除申告書」の欄も記載忘れのないようにしましょう。
特に共働きで夫婦ともに年収850万円を超えている方は要注意です。他の扶養の控除とは異なり、夫婦それぞれが適用を受けることができます。
控除額は{給与収入(1000万円超の場合は1000万円)-850万円}×10%。最大15万円の所得控除となるため、所得税率が20%の人の場合、所得税3万円、住民税1万5000円、合計4万5000円の税金が最大で軽減されます。
例えば、所得税率20%の人が、多めにアルバイトをしている大学生の子を記入せず、所得金額調整控除も夫婦で片方しか記入しなかった場合、21.6万円の損をする計算になります(※)。
※:昨年提出した書類①相当の「控除対象扶養親族」に20歳の子ども(給与年収120万円)を書き再提出することを忘れ、63万円の所得控除を受けそびれた場合の17万1000円と、年収850万円超同士の夫婦の片方が書類③内「所得調整控除申請書」欄を書き漏れた場合の4万5000円を合計した金額
■確定申告の方がラクかもしれない
③の書類にあるとおり、今年は基礎控除がさらに細分化されました。このことで、多くの人の所得税が年間2~3万円程度、減税になります。
今回の「年収の壁」議論では、パートなどで働く人が意識する「年収の壁」が123万円や160万円に変更されたことに注目が集まりましたが、フルタイムで働く会社員などにも減税の恩恵があるわけです。基礎控除申告書の欄もフォーマットに従って誤りのないように記入しましょう。
年末調整を手書きでしていて、この基礎控除申告書に記載する「収入」や「所得」の金額が計算しづらい場合、国税庁の年末調整計算シートも助けになるかもしれません。給与等を入力すると、給与所得控除後の所得金額などが計算できます。
■確定申告はスマホからも可能
そもそも年末調整は、勤務先が取りまとめて手続きをしてくれるものですが、確定申告でも同様の手続きができます。
勤務先の年末調整が手書きで行われている場合は、自身で確定申告に挑戦する方が、決められた入力欄に源泉徴収票から転記するだけで自動計算される部分も多く、むしろ取り組みやすい可能性もあります。
繰り返し紹介してきた添付書類の中にも、電子化でき自動でデータを取り込めるものも増えているため、そうした側面でもかなり手間が省けます。
今年からはiPhoneにもマイナンバーカードを取り込めるようになりました(Androidは2023年から可能)。スマホにマイナンバーカードを取り込んでいれば、より手軽に確定申告が可能になります。
添付する予定だった生命保険料やiDeCo掛金の証明書、住宅ローンの控除証明書などを無くしてしまい、再発行を依頼していたら勤務先の年末調整に間に合わなかった、といったシーンでも、諦める必要はありません。確定申告でも同様の届け出ができることを覚えておいてください。
■医療費控除や寄付控除などは確定申告が必要
また、以下のようなシーンでは会社員の方でも年末調整ではなく、確定申告をすることで控除が受けられます。
・ふるさと納税を6カ所以上行っている場合
・家族の年間の医療費が10万円を超え「医療費控除」を受けたい場合(セルフメディケーション税制とどちらかを選択)
・家族の年間の対象市販薬などの購入が1万2000円を超え「セルフメディケーション税制」を利用したい場合(医療費控除とどちらかを選択)
・特定の団体に寄付を行い「寄付控除」を受けたい場合
・災害や盗難に遭い「雑損控除」を受けたい場合
確定申告に親しんでおくことは、今後、ライフスタイルが変化した時などにも対応しやすく、有利に働くかもしれません。
いずれにしても今年の年末調整はちょっと大変であることが予想されます。扶養の控除等の基準や基礎控除の変更など、記入内容の変更に関係する改正を意識しつつ、添付書類の準備や確定申告での対応なども視野に入れ、年末調整に早めに着手した方が、慌てずにすみそうです。
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風呂内 亜矢(ふろうち・あや)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
企業勤務の際にマンション購入やお金の勉強を始め、その後不動産会社に転職。2013年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、各媒体で活躍中。
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(1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者 風呂内 亜矢)

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