目の健康のためにやっておいた方がいいことは何か。眼科医の栗原大智さんは「紫外線を浴びることは目の病気の原因になる。
そのためにはサングラスを活用すべきだ。ただ、選ぶ際に気を付けてほしいことがある」という――。(第3回)
※本稿は、栗原大智『眼科専門医が教える最新知識 スマホ時代の「眼」のメンテナンス』(高橋書店)の一部を再編集したものです。
■メガネを傷めるNG習慣
見えにくい方にとって、メガネは視力をサポートする大切な道具です。また、決して安価なものではないので、大事に長く使いたいですよね。
メガネを毎日洗って清潔に保つことは、長持ちさせるのに良い管理方法ですが、中にはお湯で洗ってしまう方もいるようです。しかし、メガネをお湯で洗ってはいけません。メガネのレンズコーティングは熱に弱いので、お湯の温度で傷んでしまいます。
メガネを洗う際は水を使いましょう。また、専用のクリーナーを用意します。メガネクリーナーがなければ、中性洗剤を用いて洗うようにしましょう。そして、水分をティッシュなどでよく拭き取り、最後はメガネ拭きで仕上げます。

その他にも以下の正しい使い方を守れば、メガネを長く使えますし、見え方も良い状態が保てます。
〈眼科医のつぶやき〉

僕は仕事用と家用のメガネを使い分けています。仕事用は比較的良いブランドのメガネを使っていますが、家用は子どもに壊される危険があるので、コスパ重視です。
■「老眼かな?」で片付けると手遅れに
見えにくさの原因を、つい年齢のせいにしている方はいませんか?
たしかに、加齢の影響で手元が見えにくくなったり、目が疲れやすくなったりすることはあります。しかし年齢とともに、放置すると危険な目の病気にかかる方が増えていきます。例えば、白内障は早い方では20~30代から、80代では100%の方が発症しています。
また、緑内障も40歳になると20人に1人が発症しており、その割合も年齢とともに増加します。このように、年齢の影響で目の症状が出ているのか、あるいは目の病気による症状なのかは自分で判断するのが難しいことが少なくありません。
僕の外来にも「最近、目が疲れる」と言って受診した結果、進行した白内障と診断された方がいます。その方は「目の病気があると思っていなかった、年齢のせいだと思っていた」そうです。白内障の手術を受けた結果、「目が疲れることが減った」とおっしゃっていました。
眼科の外来には「年齢のせいだから仕方ない」とかん違いしている患者さんが意外と多く、原因が目の病気と分かって驚く方も少なくありません。
あなたの目の症状は本当に年齢のせいでしょうか。
見えにくさや目の疲れを加齢によるものと決めつけず、病気の可能性も視野に入れてみてください。
■「30センチ以上離す」だけで目に優しい
あなたは目に優しい姿勢を保てていますか?
「背筋を伸ばして、腕を伸ばす」
普段は意識していても、つい寝転がって本やスマホを見てしまうこともあるかもしれません。その姿勢が目の疲れの原因になったり、近視が進む原因になったりしていることがあります。
本やスマホは、目から30~40センチ程度離して見るように心がけると、目への負担を減らせます。寝転がっていると、どうしても目と画面や紙面との距離が近くなってしまうので、注意が必要です。
近くを見るときには、目の筋肉を使うことになります。物が近ければ近いほど、その筋肉に負担がかかり、目の疲れを引き起こします。試しにパソコンやスマホの画面に目を近づけて読んでみてください。疲れるか、見えにくくて最後まで読むことができないと思います。
特に、お子さんの場合は腕の長さが十分ではないので、さらに距離が近くなります。子どもの頃はピントを調整する力があるので、疲れにくいものの、物との距離が近くなると、近視が進行する原因になります。

実際に、ポータブルゲーム機やスマホの普及により、近視になる子どもが増加していると報告されています。目に良い正しい姿勢、見方を心がけることで目の疲れを軽くしたり、近視を防いだりすることにつながります。
■黒いだけのサングラスは逆効果
紫外線は「白内障」や「翼状片」といった目の病気の原因になります。白内障は物がぼやけて見えたり、視力が低下したりする病気です。
また、翼状片は乱視が強くなる、白内障と同じように視力が低下する、という症状が出ます。このように、紫外線は目の病気の原因になり、時には手術などの治療が必要になります。なるべく生活の中で紫外線を浴びないような注意が必要です。
紫外線を遮断する方法として「サングラス」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし色が付いたサングラスなら何でもいいと思っていませんか?
実はサングラスの中には、紫外線をカットする効果が不十分なものがあります。こうしたサングラスをかけていても紫外線は防げず、光が遮られるために瞳孔が開きやすくなり、目の中により多くの紫外線が入るようになってしまう危険性があります。
サングラスを選ぶ際に重要になるのが「紫外線カット率」です。これは、レンズが紫外線をどれだけカットすることができるかを示す指標で、高いほうが良く、99%以上カットするものを選ぶと安心です。
「紫外線透過率1.0%以下」と表示されているサングラスもありますが、これは「紫外線99%以上カット」と同じ意味です。
■実はサングラスでなくてもいい
また、意外と知られていないのですが、メガネにも紫外線を99%以上カットするものが出ています。そのため、紫外線カット機能のあるメガネをかけている方は、わざわざサングラスを用意する必要はありません。
紫外線をカットするメガネやサングラスは、半日以上外出するときには使うと良いと思います。もちろん1~2時間でも使うと安心です。また、晴れの日だけでなく曇りの日でも使うようにしてください。曇りの日でも紫外線は降り注いでいるので、油断しないようにしましょう。
〈眼科医のつぶやき〉

晴れた日の雪山や海の上は、紫外線の照り返しもあり、より多くの紫外線が目に入ります。紫外線カット率の高いサングラスをかけないと、その後、見えにくさや目の痛みを感じることがあります。

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栗原 大智(くりはら・だいち)

眼科医

2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。
日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。資格:日本眼科学会専門医

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(眼科医 栗原 大智)
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