※本稿は、山口拓朗『正しい答えを導く質問力』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■「質問が出てこない」は当たり前
会議、講義、面談、雑談……場面にかかわらず、多くの人が一度は「何を質問すればいいかわからない」と戸惑った経験があるはずです。
質問は、思考のアウトプットでもあります。つまり、「質問が出てこない」と感じるとき、多くの場合は「考えがうまく整理できていない」状態にあるのです。
これは決して恥ずべきことではありません。たとえ質問を得意にしている人であっても、しばしば見舞われる症状です。
■「とりあえず」繰り出す20のエマージェンシー質問
ところが、そこから先、質問が繰り出されるまでのスピードには大きな差があります。質問を得意にしている人たちは、頭の中で考えがまとまらないときや、思うように質問が出てこないときに、エマージェンシー(緊急事態)対策として、汎用質問を用意しているのです。
【ビジネスシーンで使える20個の汎用質問】
①確認:「この理解で合っていますか?」
②目的:「目的は何ですか?」
③詳細:「詳しく教えていただけますか?」
④理由:「理由は何ですか?」※根拠/原因
⑤比較:「AとBでは、何が違いますか?」
⑥応用:「応用できますか?」
⑦光影:「メリットとデメリットは何ですか?」
⑧効果(影響):「どういう効果(影響)をもたらしますか?」
⑨変化:「どんなふうに変化しましたか?」
⑩例外:「例外はありますか?」
⑪反転:「Aじゃなかった場合、どうしますか?」
⑫背景:「○○にはどんな背景がありますか?」
⑬優先:「優先すべきは何ですか?」
⑭代替:「ほかの選択肢はありますか?」
⑮原点:「きっかけは何ですか?」
⑯前提:「どんな前提がありますか?」
⑰条件(制約):「条件(制約)は何ですか?」
⑱関係:「ほかに何が関係していますか?」
⑲終点:「ゴールはどこですか?」
⑳想定:「どんな展開が予想されますか?」
■質問して、まとまらない思考を整理しよう
以上の汎用質問は、使い勝手のいい「質問の型」であると同時に、思考を深めるためのフレーム(枠組み)でもあります。
つまり、使えば使うほど、自分の思考が整理され、物事を構造的に捉えられるようになっていくのです。
もちろん、「何でもいいから使えばいい」という話ではありませんが、この20個の質問を見渡せば、その場にぴったりの質問が見つかる可能性は格段に高まるはずです。
■とにかくアイデアを出したいときの16の質問
「ブレインストーミング(通称:ブレスト)」とは、文字通り脳を嵐のように働かせる発想法。重要なのは、「アイデアの良し悪しを判断しない」「制限を設けず、とにかく量を出す」こと。ときには「くだらない」と思える案から、革新的なアイデアが生まれることもあります。
そんな一案を引き寄せる誘い水となるのが、以下に紹介する16個の《着火剤質問》です。
①○○から連想すると?
思いついた言葉からさらに連想を広げることで、思いがけない切り口のアイデアが見えてきます。
例:「コーヒー」と聞いて連想するものは?
→ 朝/集中力/休憩/香り/カフェ文化/大人の時間 など②○○を応用・転用すると?
他分野の仕組みや成功事例を、「応用(工夫して活かす)」、または「転用(別の用途に使う)」することで、新たな価値が生まれます。
例:10分カットの理容店の仕組みをフィットネスに転用すると?
→ 10分サーキットジム/駅ナカストレッチ/ランチタイム筋トレ など
③○○を具体化・抽象化すると?
行動レベルに落とし込んだり、概念レベルへと昇華できたりします。
例:「信頼される人」を具体化すると?
→ 時間を守る人/約束を守る人/嘘をつかない人 など
例:「時間や約束を守る人」を抽象化すると?
→ 信頼性の高い人/誠実な人 など
④○○をかけ算すると?
異ジャンルのかけ算は、新規企画・新規ビジネスの鉄板手法です。
例:「カフェ」と「メンタルケア」をかけ算すると?
→ 考えや感情を書き出せるノートを提供する「ジャーナリングカフェ」など
⑤○○をシンプル化すると?
ムダを削ぎ落とすことで、新たな価値が生まれることもあります。
例:「結婚式」をシンプル化すると?
→ ふたりだけのフォト婚/オンライン配信のリモート婚 など
⑥○○に肉付け・装飾すると?
既存のものに+αするだけで、新しい価値や魅力を生み出せます。
例:「トイレ」に肉付け・装飾すると?
→ Q&A式学習ディスプレイ付きトイレ/60秒瞑想トイレ/姿勢診断便座 など⑦○○を分解すると?
分解することで、役割の振り分けなど情報の管理がしやすくなります。
例:「幹事の仕事」を分解すると?
→ 会場手配/案内作成/出欠管理/進行管理 など
⑧○○を裏返すと?
常識や当たり前を裏返すことで、新たな視点が生まれます。
例:「和を以て貴しとなす(調和こそ最上の価値)」を裏返すと?
→ 「空気を読まない」の価値/あえて意見を衝突させて案を揉む など⑨○○に意外性を添加すると?
驚きや遊び心の要素が加わることで、興味や関心を引きやすくなります。
例:「宅配弁当」に意外性を添加すると?
→ 正義のヒーロー配達/謎解き(暗号)弁当 など
⑩○○の制限がなかったら?
お金や人、時間、方法など、制限を外した瞬間、発想が自由になります。
例:予算制限がなかったら、どんなイベントをしたい?
→ 東京ドームで声優オタクフェス開催 など
⑪○○をレトロにするなら?
レトロ化によって、没入感や親しみやすさが生まれやすくなります。
例:「eラーニング」をレトロにすると?
→ 紙芝居風の解説/黒板スタイルの動画講義 など
⑫○○を△△向けに変えるなら?
ターゲット(視点)を変えると、出てくるアイデアが激変します。
例:「大人向け英会話教材」を「小学生向け」に変えるなら?
→ すごろく英会話/ダンス英会話 など
⑬○○をほかの何かにたとえると?
たとえることで、その本質や構造、強み・弱みが見えてきます。さらに、「たとえ表現」によって共通理解が進み、共感も得られやすくなります。
例:「会議」をたとえると?
→ 複数人で1本の鉛筆を削る作業/即興のジャズセッション/航路を決める海図作り など
⑭○○に《悪役》を登場させると?
悪役を言語化することで、課題をエンタメ化しながら整理できます。
例:「健康習慣」に敵を登場させると?
→ 睡眠強奪スマホ/スイーツ食べ放題/人をダメにするソファ など
⑮○○を《最悪の形》にすると?
最悪を想定することで、「何が本当に大事なのか」がクリアになります。そこから理想の逆算もできます。
例:「理想の職場」を《最悪の職場》にしてみると?
→ 全員無言/常に監視カメラ/休憩ゼロ など
⑯○○の《未来の姿》は?
未来視点を持ち込むことで、既存の考え、常識から抜け出せます。未来起点からの逆算で、新しい企画や商品が生まれることもあります。
例:「出勤」の20年後の姿は?
→ 大型ドローン出勤/AI代理出勤 など
ひとつの質問から画期的なアイデアが生まれることも珍しくありません。
■「今のままで大丈夫」と思ったときこそ質問を
物事が順調に進んでいると、人はつい「今のままで大丈夫」と思い込み、問いを持たなくなりがちです。しかし、順調なときこそ、見えにくい落とし穴が潜んでいるものです。
例えば、売上が好調に推移していたある営業マネージャーは、ある日、チームメンバーにひとつの問いを投げかけました。
「この好調の裏側で、何か隠れている時限爆弾はないか?」
この質問をきっかけに、若手メンバーが長時間労働で疲弊している実態が明らかになりました。この現状に鑑み、彼は業務配分や体制を見直すことで、チームのパフォーマンスと健全性のバランスを取り戻しました。
「落とし穴」を探し、成功を支える質問例
・「この好調さに、無理や歪みは隠れていないか?」
・「誰かが(何かが)犠牲になっていないか?」
・「この状態は、半年後・1年後も続けられるか?」
・「勢いだけで進んでいないか?」
これらの問いは、成功を疑うためではなく、むしろ、成功を支えるためのものです。表面的な成功に安心せず、本質的な安定と成長へと進むことができます。順調なときこそ、《副作用を見抜く質問》が真価を発揮します。転ばぬ先の杖として活用しましょう。
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山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長
出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。
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(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口 拓朗)

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