■家計を共有する場合、一括管理が大原則
ウェブデザイナーの山下幸子さん(仮名・52歳)は2年前から私どもの事務所に通っています。相談内容は主に2つ。1つは再婚相手との家計の共有方法。2つ目は老後に向けてどう資産を運用すべきか、です。
幸子さんは子なしのバツイチ。大学を卒業後、ずっとフリーのウェブデザイナーとして働き、ここ数年は手取りで月48万円程度の収入を維持しています。比較的高収入ですが定期預金や株式投資などで堅実に資産を築き、30代でマンションも購入。預貯金と投資口座を合わせた資産は、相談時点で4500万円。
そんな幸子さんが50歳を過ぎて、同い年のパートナー(IT系企業の会社員)と再婚することに。
「バツイチ同士の再婚ですし、今回の結婚ではもめる要素を最小限にし、パートナーと穏やかに余生を送りたい。そのために、どう家計を共有していけばよいのでしょうか。
また、老後にもらえる国民年金は6万円台が想定されるので、わずかな年金額を補うために今後はどんな資産運用をしたらよいのか教えてください」
と、ご相談に来られたわけです。
早速、1つ目の課題から着手。ファーストステップとして、現状を把握するために、家計簿をつけて支出を「見える化」していただくことに。自営業である幸子さんの手取り月収は48万円で、ボーナスなし。現状、入籍前に先行して二人暮らししており、その支出は54万2000円です。
この約54万円を、どう分担すればよいのでしょうか?
夫婦で財布を別にしながら、「住宅費などの固定費は夫、食費などの変動費は妻」というように品目ごとに支払い担当を振り分ける方法もありますが、私共はおすすめしていません。家計簿などで共有できていたらよいのですが、互いの懐具合と家計の全体像が見えにくくなり、「ふたを開けてみたら貯蓄が全然できていなかった」といったケースをたくさん見てきたからです。
それよりは、家計管理が得意な方が財布を握り、もう片方から一定の生活費を入れてもらい、その中でやりくりする「一括管理」のほうが全体が見えて貯めやすいです。幸子さんは、家計管理が得意で貯蓄の実績もあるので、ご自身が管理することになりました。
ただ、住宅費15万円は、もともと幸子さんが所有していたマンションにパートナーが引っ越す形になったので、従来通り幸子さんが住宅ローンなどを支払うことに。また、すでに入っていた生命保険や個人のスマホ代も、引き続き各自の財布から出し、それ以外の生活費はパートナーから25万円をもらってやりくりする形で決まりました。
幸子さんの手取り48万円+パートナーからの生活費25万円から54万2000円の支出を差し引くと、月18万8000円が残る家計になります。この収支の是非は、後述します。
■資産形成は節税も兼ねてiDeCoとNISAへ満額積み立て
続いて、資産形成のプランも改革。幸子さんたちは、各自貯めてきた資産は、引き続き分けて管理する方針を取りました。その上で、幸子さんの資産に関しては、運用方法を見直すことに。
幸子さんは、2年前の相談時点で4500万円の資産をお持ちでしたが、その一部は特定銘柄を主軸とした個別株式投資に特化していました。親御さんから受け継いだある個別銘柄を保有しており、株価が上がったら売り、下がったら買い戻すという売買方式を、親から教えられるまま、繰り返していたのです。
その投資手法も一つなのですが、個人事業主という立場を生かし、掛け金がそのまま所得控除となるiDeCoや投資利益が非課税になるNISAで投資信託を積立した方が、節税効果は大きく、長い目で見てお得ですし、堅実に増えていきます。そう提案すると、相談時点で黒字となっていた18万8000円を、すべて振り分けることに、潔く決断。
iDeCoに月6万8000円、NISAのつみたて投資枠に月10万円と、それぞれ上限枠をフルに使い、積立投信をスタート。想定利回りは4%です。それでも、月2万円の現金が余ります。幸子さんは、貯蓄が4500万円と、生活防衛資金は潤沢にあったため、残り2万はあえて現金で貯めておいて、相場が下がった時にNISAの成長投資枠を使い、米国ETFを購入。こうして、個別株式投資だけでなく毎月19万円近くをインデックス投資に回す作戦へと切り替えて2年近く経過。
■生活支出が2割減少しても、足りない理由
これだけ資産があれば老後は左団扇で暮らせると思う人は多いかもしれません。ところがどっこい、今のペースで65歳まで投資を続けても、幸子さんの場合、ライフプラン上は100歳まで持たないんです。
なぜか。大きな理由は、幸子さんが老後に受け取れる年金が「国民年金」しかないからです。
国民年金は、滞納せず、20歳から60歳までフルで40年間払ってきても、65歳以降にもらえる金額は月6万円台(令和7年度の国民年金の満額は月6万9308円)。片や、夫は厚生年金ですから、受給額は月20万円程度の見込みで、厚生年金との差は14万円程度と大きく開いています。
仮に幸子さんが65歳で退職し、その後は夫から年金の一部を生活費に入れてもらうとして、多少の金額を上乗せして見積もっても、現状の生活費54万2000円には遠くおよびません。重くのしかかるのは75歳まで続く住宅ローン返済(月15万円)です。さらに、住宅ローンが終わり、食費なども減って今より生活支出が2割減になったとしても、月31万円程度(家計改善前の生活支出54万2000円=① 住宅費=15万円=② ①-②×0.8=約31万円)の生活支出に対し、収入は国民年金6万円台と夫からの生活費が10万円としても、15万円不足しますよね。
さらに、シミュレーションに、固定資産税や住宅のメンテナンス費、家電の買い替えなどの臨時支出、旅行費、幸子さん単身での介護費用(生活費込で特別養護老人ホームに入った場合月17万円×10年間)も加算し、インフレ率も加味すると、年金生活に入ってからの赤字額は平均して年間で500万円程度になってしまうのです。
この年約500万円の赤字を、貯金から取り崩して補填するとしましょう。
■「今から運用額を増やす」ことで資産寿命を延ばす
この話を聞いて、顔を下に向け「地べたを這うように働いて、一生懸命貯めていても足りないなんて……」と絶句したのは、幸子さんだけではないはず。
年収的には決して低くない。投資も、iDeCoとNISAをフルでやっている。それなのに、国民年金ゆえに、これだけ足りなくなるとは。がっかりしますよね。
しかし、打開策はあります。次の4つです。
① 現状の家計を縮小
② ①で削った分を運用に回す
③ 65歳以降も稼ぎ続ける
④ 夫の年金額を多めに入れてもらう
幸子さんが80歳以降に介護施設に入るとして、それまでの期間、ややゆとりある生活を送りつつ、資産寿命を延ばすには、支出から年金収入を差し引いた15万円の赤字額を埋める必要があります。しかし、65歳以降も15万円を稼げる保障はありません。
そこで、今から生活費を減らす作戦にしました。ズバリ、家計の見直しです。幸子さんは2年かけて、がんばって食費や娯楽費など計7万5000円も支出を減らし、26万3000円も残る家計になりました。そして、2年間で絞り出した7万5000円を、iDeCoとNISAの月額上限枠を超えて投資に回すことを視野に入れています。7万5000円を想定利回り4%で52歳から65歳まで13年間運用すれば、約1500万円に膨らむ見込み。これだけで、資産寿命が3年延びる可能性が出てきました。
さらに、良きタイミングで夫の年金受給額も確認してもらい、10万円より多い年金額を家に入れてもらえないかも、話し合うことに。
稼ぐためには70代になってもウェブシステムの更新についていくなど、脳活も継続しなければなりません。それでも細々とでも収入が続くことで、老後の生活に光明が差してきます。
「これから私が考えるべきテーマは、65歳以降の働き方ですね」と幸子さん。
定年がなく、年金が少ない自営業者は、このシミュレーションを肝に銘じ、ぜひ今から節約習慣と運用習慣を始めてください。
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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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桜田 容子
ライター
明治学院大学法学部を卒業後、男性向け週刊誌、女性向け週刊誌などで取材執筆活動を続け、気付けばライター歴十数年目に突入。にもかかわらず、外見は全然ライターっぽく見られない。趣味はエアロビとロックンロールと花見など。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ライター 桜田 容子)

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