※本稿は、宮崎伸治著『英米の名著から翻訳家が発見! 世界の一流は朝・昼・晩に何をしていたのか』(青春出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。
■「楽しいのに満たされない」には理由がある
英単語のleisureは、「余暇」「自由時間」「レジャー」といった意味で、自分の好きなことをしたりゆったりと過ごしたりする時間を指す言葉です。
余暇は、passive leisure(受け身の余暇)とactive leisure(能動的な余暇)のふたつに分けられます。
passive leisureはテレビを見る、ユーチューブ動画を見る、ネットサーフィンをするなど、自発的に努力せず楽しめるものです。
passive leisureの特徴は、ラクをして楽しめることです。だらだらしていても、子どもでも、簡単にできます。しかし何かの実力がつくことは期待できません。
一方、active leisureはランニングやテニスをする、絵を描く、ギターを弾くなど、なんらかの自発的な努力が必要です。active leisureの特徴は、積極的に取り組まなければならないことです。集中力もモチベーションも必要です。
アメリカの高校生を対象におこなった研究によれば、テレビを見るよりも趣味やスポーツに取り組んだほうが2.5倍~3倍、満足感が高かったそうです。
あなたには、active leisureといえるものがいくつありますか?
何に興味をもつかは人それぞれですので、好きなものならなんでもいいと思います。
しかし、active leisureがないと、どうなるか?
仕事や子育てで忙しい時期ならいいかもしれませんが、自由時間がたっぷりできたら退屈しのぎはテレビや動画を見るくらいしかない、という羽目に陥りかねません。
好きなものなら何でもいいのです。
絵画、書道、楽器演奏、料理、社交ダンス、外国語学習、ジョギング、スポーツ……。
このようなactive leisureを見つければ、自由時間が楽しくなるだけでなく、自分自身も成長できます。人生が何倍も楽しくなるのです。
■幸せな老後を決める“お金”以外の要素
ノーベル経済学賞を共同受賞した心理学者、ダニエル・カーネマンらの発表によれば、幸福度と収入は、ある程度は比例するものの、年収7万5000米ドル(約800万円)で幸福度はほぼ頭打ちになるといいます。
しかし、お金こそが幸福の源泉だと思い込んでいる人が多くいるのも事実です。その証拠に、書店に行けば「億万長者になる方法」といった類の本がたくさん見つかります。
ある会社員は、投資をくりかえしています。趣味といえるほど投資話が好きなのです。
もちろん投資をくりかえすこと自体が悪いわけではありませんし、会社員のうちはそれでいいかもしれません。平日は仕事があり、有益なことをしている気になれますし、仕事で人と接する機会ももてますから気も晴れるでしょう。
問題は、定年退職後です。
没頭できる趣味を見つけないかぎり、退職後に待ち受けるのは「退屈」になりかねません。
ある哲学者は「人生の二大不幸は病気と退屈だ」と述べました。
退屈を経験したことがない人は、退屈の何がそんなに不幸なのかと思うでしょう。しかし、無職時代に退屈を経験した私は、退屈の恐ろしさを身にしみて覚えています。退屈は、まさに病気と同じくらいの苦痛を私に与えました。
■私が50歳から始めたこと
没頭できる趣味がないと、やることは、退屈を紛らわせることしかないのです。
テレビ、ユーチューブ動画、観劇、飲酒、ギャンブル……といったことで退屈は紛れるかもしれませんが、いくらお金があっても幸福感は味わえないでしょう。
暇つぶしは所詮、暇つぶしにすぎません。深い充実感は味わえないでしょう。
イギリスの小説家アーノルド・ベネットは、著書『自分の時間 』で次のように述べています。
「楽しみにしていることがあるとき、全精力を傾けることのできる何かがあるとき、そのことを考えるだけでその日1日は光り輝き、より活気に満ちてくることを、あなたは否定できるだろうか?」
私も彼と同意見です。人生で一番幸福感を味わえるのは、immersive hobby(没頭できる趣味)に打ち込んでいるときだと思います。
今、没頭できる趣味がないという人も、諦めてはいけません。人間は、何歳になっても新しい趣味を探せば見つかるのです。
手前味噌になりますが、私は50歳から多言語学習をはじめました。学習に没頭しつづけていると、やがてコラム執筆、講演、著書執筆、ユーチューブ動画出演などの依頼が次々と入ってくるようになり、人生が何倍も楽しくなりました。
お金がいくらあっても、それで幸福感は買えません。幸福感を味わいたいのなら、没頭できる趣味を探しましょう。探しはじめるのは、いつかではなく、今です。
■使わない言語を学習する意味はあるのか
外国語を仕事で必要とする日本人の割合は、多く見積もっても1割に達しないでしょう。そのせいか、社会に出た日本人のほとんどは、外国語学習とは無縁の生活を送っているように見えます。
もちろん、何に価値を感じるかは人それぞれですので、それがいけないと言うつもりはありません。外国語ができなくてもすばらしい人生を送っている人がたくさんいるのも事実です。
ですから「必要がないのに、いったい何のために外国語を?いまさら学習して、いったいどんなメリットがあるのか?」と思っている人は、この項目は飛ばしてくださってかまいません。
しかし、多少なりとも外国語学習に興味をもっている人には、ぜひとも外国語学習をお勧めしたいのです。なぜなら実利的メリットはもちろんのこと、実利を超えたメリットも驚くほど多く、日本語だけの生活をしていては手に入らない「宝物」が手に入るからです(具体的には拙書『50歳から8か国語を身につけた翻訳家の独学法』で詳しく述べました)。
私がとくに強調したいのは、外国語を学習すれば「日本人的単眼思考」から脱却できるということです。
ドイツの思想家フリードリヒ・ニーチェは、言語のことをひとつの「牢獄」と述べました。
日本語しかできない人は日本語という名の牢獄に閉じ込められているようなものなのです。
■「自分の壁」を壊す最適な方法
牢獄に閉じ込められているという意味を説明しましょう。
私たち人間は、言葉を通さないと物事を考えることができません。
日本語が真実のすべてを余すことなく表現できる言語なら、それでもいいのですが、日本語には日本語の制約があります(これは、ほかの言語も同じです)。ニーチェはその状況を「牢獄」に閉じ込められていると言ったのです。
アインシュタインも、次の名言を残しています。
The limits of my language mean the limits of my world.(私の言語の限界は、私の世界の限界である)
外国語を学べば、従来の自分とは異質なものに、容易に触れることができます。言葉はもちろん文化も考え方も異なるので、それだけ「自分の壁」を壊すのに適しています。言い換えれば、世界が広がるのです。
そういう意味では、外国語もひとつだけではなく、複数の言語を学ぶほうが「自分の壁」を壊すうえで有効であり、それだけ世界が広がります。
私は今まで10言語を学習してきました。学ぶ言語を1言語増やすごとに自分の世界が広がっていくのを実感します。それだけでなく、記憶力や集中力、読解力、推論能力が高まった感じもしています。
外国語に多少なりとも興味のある人は、ぜひ学習をはじめてみてください。
《参考文献》
・アーノルド・ベネット著、渡部昇一訳『自分の時間』(三笠書房、2016)
・宮崎伸治著『50歳から8か国語を身につけた翻訳家の独学法』(青春出版社、2025)
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宮崎 伸治(みやざき・しんじ)
作家・翻訳家
1963年、広島県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。英シェフィールド大学大学院言語学研究科修了。大学職員、英会話講師、産業翻訳家を経て、34歳で出版翻訳家デビュー。50歳以降に英語だけでなくドイツ語、フランス語、中国語など計8カ国語を本格的に学び始め、現在は英語・翻訳関係の資格20種類以上を含む、137種類の資格保持。おもな語学系の資格は、英検1級、独検2級、仏検準2級、伊検3級、西検4級、中検3級、HSK5級、TOPIK1級、ハングル能力検定5級、ロシア語能力検定4級など。著書『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)、ベストセラーとなった訳書『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)をはじめ、著訳書は60冊以上。
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(作家・翻訳家 宮崎 伸治)

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