コメの価格が高止まりする中、安く買う方法はあるのか。流通経済研究所主席研究員の折笠俊輔さんは「購入方法や商品の選び方を工夫することで、おいしいお米を納得の価格で手に入れることができる」という――。

■生産者に近づけば近づくだけ安くなる
「令和のコメ騒動」の報道にもあったように、コメは生産者から集荷業者を経て、卸売業者の精米工場で精米されたのち、スーパーに並びます。
地方のコメを都会に輸送して、安定供給するためには、複数の事業者を介することは仕方ないのですが、多くの事業者がかかわる、ということはそれだけ手数料がかかっていたり、輸送距離が長くなれば運送費もかかってきます。
つまり、安くコメを買いたければ、シンプルに「輸送距離の短いコメを、生産者からダイレクトに買う」ことがベストです。特に地方にお住まいの方にとっては、近くにコメを生産している方がいらっしゃることから、この方法は特に有効だと言えるでしょう。つまり、輸送距離の短いコメは、地元のコメなのです。
■ネット通販でダイレクトに購入できる
では、生産者からダイレクトに買うためには、どんな方法があるでしょうか。
一つは、農産物直売所や道の駅の地元農産物の販売コーナーでコメを買うことです。多くの農産物直売所では、1kg単位でその場で玄米を精米して販売する方式をとっていますので、精米したての地元のコメを、短い流通経路で買うことができます。
もう一つは、インターネット通販などを活用して、生産者からダイレクトにコメを買うことです。最近では、若手の生産者を中心に、自分のWEBサイトや通販サイトを通じて、直接消費者向けに精米販売を行うことも増えてきました。
生産者から直接購入することで、作った生産者も分かりますし、送料は必要ですが、余計な中間マージンをカットしてコメを買うことができます。また、ふるさと納税もねらい目です。
各産地でふるさと納税の返礼品にコメがラインナップされていますので、色々と探してみると面白いと思います。
ここまで、地元のコメをダイレクトに買う、という買い方の話をしてきました。では、大都市に生活していて、地元のコメを手に入れにくい場合に、お得に買うにはどうすればよいのでしょうか。
■ブランド米以外にもおいしい品種が豊富
お米には、多くの品種があります。「コシヒカリ」や「つや姫」といった有名な品種は、ブランド米として人気が高く、価格も高めに設定されがちです。しかし、有名な品種ではなくても、おいしい品種はたくさんあります。意外と各都道府県で生産量が多い品種は、有名な品種ではなかったりします。
例をあげれば、山形県は「つや姫」がブランド品種として有名ですが、最も多く生産されている品種は「はえぬき」です。この「はえぬき」、30年近く品評会で最高評価である特Aを取り続けた実績があるほどおいしい品種です。
こうした「生産量が多いけれどメジャーではない品種」は、ブランド品種とは異なり、主に地元の日常使いや業務用として安定供給されるため、ブランドのプレミアム価格が上乗せされず、品質に対して手頃な価格設定になっていることが多いのです。
■北海道は「ゆめぴりか」より「ななつぼし」
メジャーな品種ではなくても、その地域で最も多く作られているコメは、安定した品質と供給量を誇り、比較的お買い得な価格で流通している傾向があります。
そのほか、最近では「多収品種」と言われる、同じ面積で育てても、多くの収量が見込める新しい品種も次々と登場しています。
より多く収穫できるということは、生産コストが抑えられるため、日常使いのコメとして今後の普及が期待されています。多収品種としては国の研究機関である農研機構が開発した「にじのきらめき」などが有名です。
「普段と違うお米を試すのは少し不安……」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、農業技術の発展と炊飯器の進化もあり、現在の日本では、炊いてみて味や品質が極端に悪くなるコメはほとんど存在しません。
少し視野を広げて、いつもと違う品種に挑戦してみることも、お得にコメを手に入れる選択肢の一つです。
■農協の概算金が価格の「底」になる
コメの流通を考えた時、実は最も安価なのは農協(JA)が扱うコメです。2025年産のコメは、コメ不足を心配する民間の集荷業者や農協が取り合った結果、相場が高騰しました。この生産者からコメを集める集荷業者、JAの価格決定の仕組みは以下のようになっています。
①多くの地域で、最も多くのコメを集める集荷業者は農協です。農協はまず、その年の新米が出てくる前に、生産者からコメを買い取る際の仮払金となる「概算金」を発表します。
②概算金がいくらであるか、は公表されるため、農協以外の民間の集荷業者は、農協の概算金を参考に、自社のコメの買い取り価格を考えます。そのため概算金は、その年のコメの取引における「基準価格」のように扱われます。

③ここで、農協以外の民間の集荷業者が農家から、できるだけ多くのコメを買い付けようと思った場合、農家が農協に出荷するよりも魅力的な条件を提示し、競争に勝たなければなりません。そのため、必然的に農協の「概算金」を上回る価格を提示することになります。
④この結果、「概算金」で集荷した農協の取扱いのコメが、市場に流通する中で最も安価である可能性が高いのです。
■「正義か悪か」では捉えられない存在
そもそも農協(JA)は、単なる営利企業ではなく、生産者による協同組合であり、地域ごとに組織されています。各地域によって戦略や経営・運営状況が大きく異なるため、一概に「良い/悪い」を言うのは難しい組織です(地域や生産者に広く支持される農協もあれば、そうでない農協もあるという意味で)。
ただ、農協の役割についてさまざまな意見はあるものの、個人生産者を生産の面からも生活の面からも支え、そのコメを集荷して流通させているという面で、コメの円滑な流通と米価の安定にとって農協が重要な存在であることは間違いありません。
■コメの価格はこれからどうなる?
完全な結果が分かるのは東北や北海道の稲刈りと乾燥調製などが終わった12月になる見通しですが、2025年産のコメは11月現在、かなり余ることが予想されています。
通常ですと、コメが余る見込みとなると、価格が下がってくるのですが、2025年産は全国的に概算金を含め、集荷業者が1俵あたり3万円を超える価格で集荷したり、生産者と契約をしたりしていることから価格が下がりにくい状況です。
しかし、結構な量のコメが余る場合、集荷業者や卸売業者は「高値で生産者から集めたコメ」が売れずに残ってしまうリスクを抱えることになります。これはコメを扱う事業者として非常に怖い状況です。
そのため、年明け以降で余りそうな見込みが強い場合、コメを扱う事業者の多くが「利益幅を削ってでも売り切りたい」という形にシフトする可能性が高いと見ています。薄利でもいいから多売して、売り切る方向に向かう、ということです。

■お買い得になるタイミングは2度ある
よって、今後考えられる買い時の一つは「年明け」ということになります。余る見込みが強い場合、新米価格は今よりも安くなる可能性が高いです。
そして、次のタイミングは「6月~7月」です。これは2026年産の新米を控え、2025年産の在庫をたくさん持っている事業者が、何としても新米までに売り切りたいということで、価格を下げて売り切るケースがあるためです。
結局のところ、2025年産コメは余る見込みとなっているため、急いで買い集める必要はありません。年明けまでは、必要な量を必要に応じて購入していき、年明け以降で価格が下がってきた場合は、少し多めの量(5kgではなく10kgを買うなど)を買うなどの工夫をされると良いと思います。

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折笠 俊輔(おりかさ・しゅんすけ)

公益財団法人流通経済研究所 常務理事/主席研究員(事業・研究統括)

早稲田大学商学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科修士課程修了。精密機器メーカーを経て、2010年より現職。日本農業経営大学校非常勤講師(マーケティング・営業戦略)。著書に『農家の未来はマーケティング思考にある EC・直売・輸出 売れるしくみの作り方』(イカロス出版)などがある。

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(公益財団法人流通経済研究所 常務理事/主席研究員(事業・研究統括) 折笠 俊輔)
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