※本稿は、市野瀬早織『東大合格者が身につけた 一生使える「読み方スキル」』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■国語の授業で「こだわっていた」こと
「読者論的読み」とは、書かれている内容を「どんなふうに読むか?」がすべて読者の自由に委ねられている読み方のことです。
この「読者論的読み」は、自分の頭で考えられるようになり読みの可能性をぐぐっと広げてくれる、ある意味高度な読解です。
私が現代文の教員として意識的に取り入れていた授業内での取り組みは、「初読の感想のテーマはオールフリーにする」というもの。
はじめて取り扱う文章ほど「読者論的読解」から入っていくことの効果を感じていたからこその取り組みです。
では、それはなぜだと思いますか?
私は「外的要素は思考の方向性を一方向に定めやすい」という点に配慮していたのです。
ちょっと小難しい言葉で説明してしまいましたが、つまりこういうことです。
「これは○○氏の解説によると、こういう作品だ」
「○年に書かれたから、あの出来事を元にしているはずだ」
など、文章に書かれている内容ではない、ほかの情報が先に入ってきてしまうと、その情報に引きずられ、与えられた情報の確認作業のような読解に留まってしまうのです。
■100人いれば100通りの見方がある
言わずもがな、これは読者が自由に言葉そのものを味わい、登場人物の言動や、作品のメッセージを考える余地を奪ってしまうことになりますね。
私は教え子生徒たちの「思考力や感性を高めたい」という理由から、どうしてもこれを避けたいと考えていました。
そこで、最初に文章を読むときには先入観抜きに読めるように、特別な情報は何も与えずにフラットな状態でひたすら文章だけを読むということに集中してもらっていたのです。
では、どうして私は「最初は読者論的読み」と、こだわっていたのでしょうか?
もう少し端的に言えば、自分ならではの視点をもって考える力を養うことが、結局は社会に出て活躍する人材を育てることになると実感していたからです。
100人いれば100通りのものの見方があり、どれが優れていてどれが劣っているということはありません。
どの考えもそれぞれに一理あると感じることもあるでしょう。
そしてその人の考えが浅いと感じられたとしても、それはそういうものとして、その考えを知った人の教訓にだってなるでしょう。
■「社会で求められるスキル」を現代文で養う
「あなたはどう考えたの?」
社会で問われつづけるこの視点を現代文の授業でこそ養いたい――こう考え、私は日々の授業に取り組んできました。
そして、教え子生徒たちは見事に私の予想を超えてくれたのです。
この作業を授業で繰り返していったことの効果と感じられるのは「テストの記述問題で白紙解答は、200名超の一学年の生徒のうち、平均的に1人か2人に留まった」という点が挙げられます。
総合的に難しくて、単純な時間不足で白紙になるケースはありましたが、本当に「何も書けない」と判断した生徒はほぼいなかったと記憶しています。
「読んで考えることは、人に伝えられる」
このスキルを、子どもたちは読者論的読みの積み重ねによって習得したと言えます。
また、読者論的読みは、文法や語彙の知識にもとづいて、その場面に書かれている内容や作者の意図していることを、まずは正確に読み解く必要があるという特徴があります。
■「文章を読んで感想を言う」の驚くべき効果
つまり、より「文章を客観的に正しく読むルール」を身につけていることがかなり重要なのです。
なぜなら、その文章の内容を別の人に説明するときに的を射た内容として伝達できるか、否か? という点で大きな差が生じてくるからです。
「ただ読んだ文章に感想を述べるだけ」と思う人も少なくありませんが、じつはこの積み重ねが多数のアウトプットの機会で当人を輝かせることになっていたのです。
実際に、「正確に読み取ったうえで、自分の意見を言う」ということに慣れていた生徒たちは、校外のプレゼンテーションの大会で賞を獲得するなど大活躍でした。
あなたが今日からできることといえば、作品の書評を記録してみるといいと思います。これを続けていくことで、実感していただけるスキルアップがあるはずです。
■超進学校の生徒が「読書後」に欠かさないこと
あなたは普段、人前で自分の意見を言ったり、何かを説明したり、ディスカッションしたりすることはありますか? そのとき、どんな感覚を覚えるでしょうか?
「頭が疲れる」「説明するのはやはり苦手だ……」「伝わった瞬間がうれしい」など、きっと出てくる感覚・感情はそれぞれだと思います。
いずれにしても「人に説明することは高度な脳力を必要とする」といえば、きっと誰もが「まぁそうだろう」と思われるのではないでしょうか。
じつは、超進学校の生徒たちは、本を読み終えて72時間以内でアウトプットする訓練をしています(訓練の内容は後ほどご説明しますね)。
これはまさに「人に説明する」ための取り組みです。
生徒たちは日々授業内外で、常に人に説明しつづけていたといえます。
だからこそ、新しいことに出会ったときも臆することなく考え、理解し、さらに新しいアイデアへと昇華していくことに長けていたのです。
一般的な読書の場合、読んだ内容を説明する必要がある場合もあれば、まったくその必要はなく、個人の趣味としてただただ読むという場合、どちらもあるでしょう。
後者の場合、「読んだ内容が記憶に残っても残らなくても、たいして利益や被害がない」ということになります。
■目的を明確にすれば、脳は活発に働く
しかし、「この本の内容は覚えておきたい」という確固たる目的がある場合は、「人に説明する」という前提で読むと、有効に働いてくれます(もちろん説明してもしなくても、読書するときの脳の働かせ方の問題ですので、実際にはどちらでもかまいません)。
実際に超進学校の子どもたちは、「この文章を読み終わったあとに、いくつか質問をするからよく聞いてね」と前置きをしてから読み進める場合と、何も言わずに「今日はこの文章を読んでね。それではスタート!」とただ読んでみる場合とでは、集中力も読む真剣さもまったくもって違ったのです。
これは「読む目的の明示」の効果ともいえます。
「読んだあとに与えられる質問に答えられるように、ここに書かれていることを覚えよう」ということもあるでしょうし、「感想を聞くよ」という前提なら「自分がこの文章でぐっとくるのはどこか、チェックしよう」と思うはずです。
話をインプットした後の目的が明確にあれば、その目的を達成すべく脳は働いてくれるのです。
■筆者が出した「夏休みの宿題」
夏休みの現代文の宿題で、「読書2冊とその本の紹介文を書く」という課題を出したことがあります。
これが、先ほどお話しした「本を読み終えて72時間以内でアウトプットする訓練」です。
子どもたちはこのとき、ただ読むだけではなく、「人に説明することを前提」に内容を丁寧に拾い読みしていました。
この意識が高い子ほど、ほんの200~400字程度の紹介文でも、本全体の内容をまったく読んだことのない人に伝えられる文章を書くことができます。
かなり核心をつかんだ書き方をしているので、その本に書かれている内容がよくわかるのです。
また、読みの幅を広げ、深くまで読むことを可能にしてくれるのが「読んだ本について、他者とディスカッションする」という活動です。
人は自分のいままでの経験やもっている知識からしか物事を判断できないと言われています。ですから、ひとりで読んでいると、その読みの幅や深さが限定的になるということにもなります。
そうならないためにも、読みっぱなしにせずに、読んだ内容を深く思索し、アウトプットする。それが自分の今後にもずっと使えるノウハウとなって落とし込まれます。
■「説明する経験」が大きな差を生む
そして、ディスカッションを通じて自分とは違った見方を提示されることにより、ひとり読みでは到底到達できないレベルで読書の視点が広がります。
スポーツや芸術でも、試合や舞台など、何らかの本番を控えているときは短期間に大きく成長しますよね。今回紹介した読解も原理は一緒です。
「人に説明する」というひとつの目的に向かって一点集中するという、脳がいちばんリラックスして没頭しやすい状況をつくることができます。
だからこそ、集中的に「いまここで説明に必要な情報」と「そうでもない情報」に文章の内容を選別できるのです。
この練習を日頃どのくらいやっているかによって、読解のスピードも深さも、読む視点の多さもずいぶんと差が出てくるのは言わずもがなです。
私の経験からも、テストなどで的確な解答ができる子は、お話し好きであることが多かったです。
いま思えば、日頃からインプットしたことを人に説明する経験が多かったと言えるのかもしれません。
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市野瀬 早織(いちのせ・さおり)
市野瀬教育研究所 所長
岡山県生まれ、神奈川県横浜市育ち。早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修了。教育学修士。2008年から2018年までの10年間、渋谷教育学園渋谷中学高等学校にて専任の国語科教諭として勤務。担当生徒の5人に1人を東京大学合格へ導く。第一子出産後の2018年4月より、Alecioの創業メンバー・執行役員として人材開発事業に携わり、同年7月に独立。2024年8月、The Rhythmを創業。親が自分自身と子どもの本心や才能を読み解くことで、子どもの問題解決力と自己実現力を育む教育プログラムを展開。2025年までに受講生は460人を超える。
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(市野瀬教育研究所 所長 市野瀬 早織)

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