
※本稿は、永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
■「安さ」で勝ち続けるのはとても難しい
会社員を続けながら、都内に居酒屋を開業した人がいる。しかし店は赤字続き。会社の給料をつぎ込むが、貯金も底を突いた。ついにサラ金からお金を借りることに。退路が断たれると、冷静に状況を見ることができた。
店のメニューは豊富だが、安くするため味を妥協していて美味(おい)しくない。廃棄食材も多い。よく考えてみると儲からないのは当たり前だった。そこで「美味(うま)い料理で高くお金を取ろう」と方針転換すると、客足が戻ってきた。売上は伸び続け、サラ金の借金は返済。その後のビジネスは順調だ。
「低価格戦略」と「高価格戦略」のどちらを選ぶか、悩む人は多い。もし迷うのならば、選ぶべきは「高価格戦略」だ。世界的な価格戦略の第一人者であるハーマン・サイモンは、著書『価格の掟』でこう言っている。
「低価格と大量販売で成功できるのは、ほとんどの業界で1~2社に限られている」
サイモンは著書で、様々(さまざま)な業界で調査すると、高価格戦略で成功した