
※本稿は、野地秩嘉『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■創業期以来の赤字を出したリーマンショック
トヨタの危機管理が本格的に始まったのは1995年の阪神大震災だった。その次に訪れた危機は災害ではなく、景気後退による需要の急減で、2008年のリーマンショックである。
同年9月のことだった。アメリカの投資銀行、リーマンブラザーズが破綻した。それをきっかけに世界的な株価下落、金融不安が起き、同時不況となったのである。
自動車業界も影響を受け、トヨタは翌2009年の決算で4610億円の赤字となった。これは創業期以来のことだ。リーマンショックでは先進国の新車需要は止まり、トヨタだけでなく自動車各社は赤字になっている。GM、クライスラー、サーブは破綻し、富裕層の固定客を持つ、あのポルシェまでが苦境に陥った。
「他社に比べればトヨタはまだいい方じゃないか」
そんな声もなかったわけではない。しかし、トヨタの現場には悲壮感が漂っていた。
「不況の時、減産に対しても利益を確保できる」ことがトヨタ生産方式の特徴とされていたのに、リーマンショックではそれがまったく通用しなかったからだ。