※本稿は、マイナビ健康経営が制作するYouTube番組「Bring.」の動画「インフレ、AIの台頭……価値観大転換時代をどう生きていけばいいのか? 『Bring.』MCを務める話題のふたりが徹底討論!」の内容を抜粋し、再編集したものです。
■おじさん世代と若者世代の価値観の違い
【澤円】わたしはいま56歳なのですが、若い人たちを見ていると価値観が根本的に変わってきていると感じます。32歳のふゆこさんは僕とは年齢差がありますが、上の世代との価値観のギャップをどう感じていますか?
【節約オタクふゆこ】労働観に絞っていえば、例えば「若者は無気力だ」とか「仕事に情熱がなくてすぐ辞めてしまう」とか、そういったギャップですよね。
わたし自身は32歳で「Z世代」でもないのですが、会社員時代には体育会系の根性論で「成果が出ないのは頑張りが足りないからだ」というような、マネジメントが機能していない上司を苦手としていました。わたしのなかでは、「仕事には誠実に向き合っている」と思っていましたし、手は抜いていないんです。
それでも「成果が出ない=頑張りが足りない」と断じる、「頑張り」への絶対的信頼が理解できなくて……そういう姿勢は、上司からすれば無気力に見えたかもしれませんね。
■ネガティブ情報に触れて育った若者世代の労働観
【澤円】労働観の違いの原因をどう見ていますか?
【節約オタクふゆこ】わたしは景況感だと見ています。50代、60代のバブル期を謳歌した世代であれば、景気は上向きで、頑張れば頑張っただけ成果がついてきましたよね。
逆に、わたしの世代は「失われた30年」という長期経済不況のなかで、「経済が伸びていく」「社会がよくなっていく」という希望や夢を感じることができず、「頑張ってもリストラされる」「ブラック企業に搾取される」「管理職は板挟みのストレスで消耗する」というようなネガティブな情報に触れる機会が多かったのです。生きてきた時代が違えば、労働観が食い違うのも当然ではないのかなと思いますね。
■出世に興味がない若者世代
【澤円】以前、とある大手上場企業の本部長と話したときに、少し驚くことがありました。
なぜなら、役職席は出世の象徴であり、みんな「いつか特別な本部長席に座りたい」と憧れているはずだからと……。「すみません、たぶん若い世代はそう思っていないですよ」とお伝えしたら、ひどくショックを受けてしまいました。
【節約オタクふゆこ】若い世代も多様で、出世欲の高い人もいますが、出世に関心を持てない人は多いですよね。ただ、年長者も旧来型の「出世」が目標として通用しないとなると、若い世代にビジョンを示せなくて困惑してしまうのはわかります。
【澤円】労働観が変わっているのだから、それは「仕方がないこと」として上司や企業は受け入れたほうがいいでしょうね。会社というプラットフォームに身を委ねる時代は終わり、世の中は「個の時代」になっていて、「なんのために働くのか」も「どうやって働くか」もビジネスパーソン個人の自由です。仕事はそこそこにして、人生の目的を仕事以外に置くことだってできるわけですから。
■ネガティブな環境に甘えることなく行動する
【澤円】「働き方」や「目的」の自由という意味でいうと、先程ふゆこさんは、社会に対する悲観のようなことを語っていましたが、それでも自分自身でユーチューバーとしての働き方も、働く意味も見出されましたよね?
【節約オタクふゆこ】会社員時代は労働環境の面でも収入面でも不満しかなく、そこからどうにか抜け出すために必死にあがいていました。残業ばかりの労働環境を改善するために転職し、夜の時間ができたのでお金まわりを改善するために節約や投資、副業を勉強して、副業の一環としてYouTubeを始めて現在に至る……という、そんな感じなのです。
【澤円】でもそれは、ふゆこさんが自分で考え、そして「行動」した結果ですよね。ネガティブな環境に甘んじることなく、主体的に行動したから人生が開けたわけです。
■同じ場所に居続けることはリスクでしかない
【節約オタクふゆこ】そうですね、行動してみると「意外と世の中って自分にポジティブだな」と感じられたのは大きかったです。ブラックな労働環境で苦しんでいた頃の自分は、「給料が安い」とか「社会が悪い」とか、世のなかのネガティブな側面にフォーカスして悲観していました。でも、違う世界に出てみると、「社会は自分にいい影響を与えてくれるし、自分も社会にいい影響を与えられるんだ」と気づけて、人生観が明るくなっていきました。
【澤円】素晴らしいですね。よく「終身雇用制度の崩壊」が悲劇のように語られますが、そもそも「同じ場所に居続けるって本当にいいことなの?」と思うのです。給料は上がらず、労働人口は減ってひとりあたりの仕事量もどんどん増えるなかで、同じ場所に居続けることはリスクでしかない可能性だってあるからです。外の世界に出て、自分の可能性や選択肢を広げたもの勝ちじゃないですか。
■顔さえ上げれば選択肢は無限に広がっている
【節約オタクふゆこ】以前のわたしは、とても保守的な考え方を持っていて、「会社に40年間勤める規定路線こそ社会正義」と思っていた時期もあったのです。そこから抜け出すには、「自分の壁をぶっ壊す」しかないと思って行動してきたのですが、この「壁を壊すに至る衝動」は性格やタイミングもあって、なかなか他人にアドバイスできるものではないですね。
【澤円】ただ、簡単に考えることもできます。それは、とにかく現在の環境とは違うコミュニティにいる人と接することです。
なんらかのイベントのボランティアに参加するとか、起業した友だちの手伝いを夜に2時間するとか、まったく違う世界に足を踏み入れてみるのです。そこで「ありがとう」と感謝されたら、それで「違う世界でも自分が活かせる!」という成功体験になって、壁を越えられるのではないでしょうか。
【節約オタクふゆこ】「人生が行き詰まっている」という閉塞感は本当に苦しいと思います。でも、自分の視点がネガティブなほうに向いているだけで、顔を上げることができれば、実は選択肢は広がっていることに気づいてほしいですね。
■人生を豊かにする「お金」のあり方
【節約オタクふゆこ】ここまでの話は総じて、「人生の豊かさとはなにか?」ということに行き着くのだと思いますが、「豊かさ」を考えたとき、パッと浮かぶのは「お金」です。澤さんにとって、お金ってどういうものですか?
【澤円】僕にとっては、完全に手段です。よくいうのですが、お金は手段だと理解しないとお金を増やすことが目的化してしまい、ろくなことになりません。例えば、「もっと稼げますよ、そのためにはこの商材買ってください」といったサービスや詐欺、怪しいビジネスにもたかられやすくなりますから……。ふゆこさんにとっても、「お金」はどんなものですか?
【節約オタクふゆこ】わたしも、お金は「使い方」なのかなと思います。節約や投資をはじめた頃は、「お金が足りない、増やさなきゃ!」といって、自分がお金の面で有利になることしか考えていませんでした。
そのために資産形成の本を読むなかで、お金の使い方による満足度について心理学的に研究した本があって、最良の使い方は「他人への投資」だと書いてあったのです。
■「お金を稼ぎたい理由」は何か
【澤円】わかります。僕も知り合いのプロジェクトなどのチャレンジを応援したいと思ったら、本人に直接「応援金」を送るのです。事業に対してはビジネスとして投資することもあるのですが、それとは別ですね。
個人に送ったお金だから、その人が自由に使えるじゃないですか。だから、そのお金で「こんなことをやった」「ここまで進めることができた」という情報発信を行ってもらい、プロジェクトのコンテンツを盛り上げてほしいと思って送るのです。自分のお金の用途が可視化できるので、満足感につながります。
そもそも僕も、「お金を稼ぎたい」と思って仕事をしてきたのですが、その目的は「いつでも好きな人にご飯を奢りたい」という単純なものでした。好きな人たちと食事をしている時間が一番楽しくて、そういった欲求が僕のビジネスの根底にあるモチベーションになっています。
■「やりたいこと」にバカ正直になる
【節約オタクふゆこ】わたしも明確な目的というか、「自分は稼いで、その先でなにをするべきか」をこの1年間ほど考えているのですが、体裁とか合理性とかよりも、自分の欲求がもっとも大事なのかなと考えています。それこそ、他人からすれば「くだらないこと」でもいいのではないかなって。
【澤円】そうですよ。「やりたいこと」にバカ正直になるって凄く重要です。世のなかの価値観に縛られるから、自分のやりたいことがわからなくなってしまう。
その意味で、「節約オタクふゆこ」の名に掲げる「オタク気質」って最強ですよね。自分の好きなことにのめり込むことができ、無限にモチベーションだって湧いていくわけですから、オタクになれるものがあるなら、それは間違いなく大事にしてほしいですね。
【節約オタクふゆこ】必ずしも順序ではないかもしれませんが、自分の根源的な欲求を見つけ、お金を使って満たしてあげると精神的な余裕が生まれます。そうすると、先の「他人への投資」にも積極的になれて、幸福感のサイクルが生まれるのかなと考えています。
【澤円】そうやって、人生の楽しい時間をどんどん増やしていく。そのためにお金を稼いで、使っていくことが「豊かさ」につながるのかもしれませんね。
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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。
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節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ)
YouTuber
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
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(圓窓 代表取締役 澤 円、YouTuber 節約オタク ふゆこ 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=吉田大悟)