※本稿は、建部洋平『第一志望合格率96.8%の塾講師が教える 中学生の成績は「親の声かけ」で9割決まる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■親は切実でも、「ウザッ」と反発されてしまう
はじめに、親御さんにやっていただきたいことがあります。それは、子どもの気持ちをより深く理解するための「親子ギャップ診断」です。
子どもが中学生になった親の気持ちとしては、「勉強くらいは自分でやってほしい」。ところが、いくら待てども行動を起こしてくれないわが子にモヤモヤ。「このままでは試験で痛い目に遭いそう……」、そう思ってついあれこれ口出しをしてしまう。
私自身も中学生の子どもをもつ親なので、その気持ちはよ~くわかります。ほんと、「言われる前にやってくれよ!」って思いますよね。
ただ一方で、長年塾講師という第三者の立場で多くの中学生と接してきて実感しているのは、これらの親の切実な思いは、子どもにはまったく響いていないこと。それどころか、「今やろうと思っていたのに」と子どものやる気を削ぐか、「ウザッ、また言っているし」と反発を招くかのどちらかになりがちです。
「だけど、言わないとやらないんです!」。
なぜなら、親と子の間には、そもそも大きなズレがあるからです。
次のチェックリストは、「親にとっては当たり前でも、子どもにとっては当たり前ではないこと」を10個挙げたものです。チェックが何個入るかぜひやってみてください。
■親の「当たり前」は子どもの当たり前ではない
【親にとっては当たり前でも、子どもにとっては当たり前ではないこと10】
(1)毎日決まった時間に起きる
親が声をかけたり、目覚まし時計を使ったりしてもいいので、子どもがちゃんと起きてこられるか。
(2)毎日宿題をする
基本的に毎日宿題があります。それをちゃんとやれているか。
(3)毎日学校でもらった手紙(プリント類)を親に渡す
宿題をやるタイミングでカバンを開けたときに気づいて出せるようになっているか。
(4)テストが近づいたら勉強量を増やす
学校でも学習計画を立てますが、親から見ても勉強量が増えているか。
(5)提出物を期限内に提出する
テスト前の提出物は量が多いです。テスト範囲表などに載っている提出期限に間に合うように出せているか。
(6)内申点を常に意識し、全教科手を抜かない
主要5教科の勉強だけをすればいいと思う子もいますが、副教科の成績も内申点に影響します。
(7)ゲームの時間など、決めたルールを守る
時間をごまかしたり、隠れてやったりするなど、ルールをやぶることはないか。
(8)姿勢よく食事や勉強をする
ふとしたときにちょっとした心の乱れが出てくるものです。食事や勉強時の姿勢はいいか。
(9)教えられた通りの学習法で勉強する(自己流でやらない)
一度解けると自己流のやり方にしてしまい、精度が下がる子がいます。ちゃんと習った通りの学習法をやれているか。
(10)問題集は与えられたものを使う(親のアドバイスを参考にする)
今の時代はネットで調べて完結させてしまう子もいますが、すべての情報が正しいとは言えず、危ないです。ちゃんと与えたものでやれているか。
■ギャップを理解すれば、親の心も安定する
さて、いくつになりましたか? その数が少なくて、「そうそう、こんなこともできないんだよね」なんて思ってしまってるとしたら、あなたとお子さんは絶望的にズレが生じていると思っておいたほうがいいでしょう。
これらの10個のリストは、親は「当たり前」と思っているかもしれませんが、子どもにとっては実行が難しいことがほとんどです。
なぜなら、中学生の子どもはまだ発達の途中段階にいるからです。勉強をがんばれるときもあれば、がんばれないときもある。
まずこれらのギャップを理解することで、日常で親が子どもをほめるポイントが増えていきます。
これは子どもにとってもいいことなのですが、実は親の心が整うことにもつながるのです。
当たり前が当たり前ではないということに気づくのは大切です。
今まで当たり前だと思っていたことがそうでなかったと気づいて、子どもをいっぱいほめてあげることで、自分の心も落ち着き、子どもとよい接し方ができるようになっていきます。
そして、親の心が安定した状況で、次の「子どもがイヤがること・がっかりすること」を意識的にやらないようにしていくのです。
■無意識のうちに子どもを傷つける言動とは
では、次の10のことをやっていないかチェックしてみましょう。
【子どもがイヤがること・がっかりすること10】
(1)子どもの好きなものに共感しない
自分に興味がないことでも、子どもが楽しそうに話してきたら、しっかり耳を傾けていますか?
(2)子どもの話をちゃんと聞かない、リアクションが薄い
学校の出来事などを話してくれても、忙しさを理由にないがしろにしていませんか?
(3)子どものがんばりを認めない
「これくらい当たり前」と思って、子どもなりの努力を軽く扱っていませんか?
(4)結果だけを見て評価する
テストの点数など、結果ばかりに目を向けて、過程や努力を見落としていませんか?
(5)わかっていることを責めすぎる
子どもが自分でも悪いと感じていることに対して、必要以上に叱っていませんか?
(6)理由を聞かずに決めつける
たとえばケンカなど、背景に事情がある場合でも、頭ごなしに「悪いこと」と決めつけていませんか?
(7)正論ばかりをぶつける
「宿題はやるもの」など、正しいことだけを押しつけて、子どもの気持ちを置き去りにしていませんか?
(8)きょうだいや他の子と比べる
「お兄ちゃんはできたのに」など、他者との比較で子どもを評価していませんか?
(9)「あなたはこういう子」と決めつける
子どもの話を聞かず、過去の印象だけでレッテルを貼ってしまっていませんか?
(10)大人ができていないことを子どもに求める
たとえば自分も忘れものをするのに、子どもを厳しく叱っていませんか?
自分に甘く、子どもに厳しくなっていないか、振り返ってみましょう。
いかがでしたか。無意識のうちに結構、子どものイヤがることやがっかりすることをやってしまっていませんか?
■わが子に「ごめんね」と言えているか
以上のリストに書かれていることと逆をやればいいんだと思っていただければ結構です。
まずは騙されたと思って逆にしてください。
「今は大切なタイミングだから勉強がんばってほしいな」という親の言葉に子どもも行動で返してくれるようになります。どんな子どもでも親は絶対的な存在で、子どもは親から愛されたいと思っています。
だから、小さな子どもは親に甘えるし、思春期の子どもは親をちょっと困らせてみて、親がどんなリアクションをするのか試すこともあります。
そのとき、親が自分にとって都合の悪いことをごまかしてしまうのか。ちゃんと1人の人間として対等に向き合ってくれ、親が悪いときは「ごめんね」とちゃんと言ってくれるか。
そんなちょっとした反応で子どもは自分をちゃんと見てくれているんだなと感じているものです。
ここまでで大事なのは、どれだけ親子間でギャップがあるかに気づくことです。
このギャップを埋めていくと、親が毎日口出しをしなくても、子どもが自ら勉強をするようになります。
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建部 洋平(たてべ・ようへい)
学習塾Ability 塾長
1977年生まれ、愛知県育ち。大学卒業後、大手学習塾に就職し、歴代最速で本部長に就任。独立後、小学生~高校生を対象にした学習塾Abilityを2校舎経営し、のべ約1万人の生徒を指導。
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(学習塾Ability 塾長 建部 洋平)