相手によい印象を与えるには、どうしたらいいのか。『いつも好印象な人がしている言葉の選び方』(あさ出版)を書いた松はるなさんは「対人関係が上手な人は、言葉選びが的確だ。
ネガティブな印象を与える言葉は避けたいが、どうしても使う場合は、関係をこじらせない言い換えフレーズがある」という――。(第2回)
■相手に伝わる感情や気持ちは言葉ひとつで変わる
誰かに言われた言葉でネガティブになったり、ポジティブになったり。言葉ひとつで感情や気持ちが大きく変わった経験はありませんか? 例えば「時間がない」と言うと時間がないことへの苛(いら)立ちや不安などネガティブな感情が湧き出てきますが、「充実している」と言いかえてみると、「今、とても充実しているんだ」というワクワク感や充実な時間を過ごせていることへの感謝の気持ちが湧いてくるものです。
他にも、「つまらない」と言われたら、無駄な時間を過ごしてしまった気がしますが、「穏やかな時間だった」「平和な時間だった」と言いかえたら、その時間も意味のある有意義なものに変わります。
言われるとネガティブな気持ちになる言葉は、「あの人と話すと嫌な気持ちになるな」と人が離れてしまうものですし、自分自身もネガティブな気持ちになって負の循環に陥ってしまいます。
そのような言葉は、相手からのやる気や気力を「奪う言葉」です。できることなら、「奪う言葉」ではなく相手をポジティブな気持ちにできる言葉=「与える言葉」に言いかえられると、毎日が輝くものになっていくことでしょう。「言葉は相手に贈るプレゼント」と考えて、会話をするときには、ぜひポジティブな気持ちを言葉に乗せた「言葉のギフト」を贈ってみませんか?
■お土産を渡すときは「相手の好み」を意識する
【×】 つまらないものですが

【○】 ○○がお好きと伺いましたので
贈り物をするときやお土産を渡すとき、謙遜する文化が根強い日本では「つまらないものですが」と手渡すことが昔ながらの慣習とも言えますよね。ですが、「つまらないものですが」と渡せば「つまらないものとわかっているのに選んだのか」とマイナスな印象になることもあります。どうせなら贈り物と一緒に、気持ちが明るくなる言葉をプレゼントして手渡したいですよね。
その人が好きなものを用意した場合は「和菓子がお好きと伺いましたので」と相手の好みを配慮して選んだことが伝わる言葉を選べると素敵です。相手は「好みに合わせてくれて嬉しい」と気遣いを感じられるものです。

私自身も小さな贈り物を贈ることが大好きなのですが、その際には「その人が好きなもの」を想像して選びます。渡すときには「○○がお好きと聞いたので、よかったら使ってみてください」「○○さんがお好きなお店で選んでみました。お好みに合えば良いのですが」と言葉も添えます。
■渡し方で関係を深めるチャンスになる
その人の好みがわからない場合は、「人気の商品と聞いたので」「美味しいと評判でしたので」「いつも行列ができているお店のものなので」「実用的なものを選んでみました」など、選んだ理由を言葉にして贈るのも良いでしょう。
定番の「つまらないものですが」は悪い言葉ではありませんが、どうせなら会話が弾む言葉、贈られて嬉しい言葉を一緒にプレゼントしたいものです。プレゼントやお土産は、その人との関係を良好にするきっかけ、仲を深めるチャンスにもなります。
お互いに良い気持ちになれるような気の利いた言葉を一緒に贈ると、信頼関係を築くことにも役立つことでしょう。
【Point】贈り物は「思いやりのある言葉」も一緒に添えよう。
■「嫌い」は相手を疲れさせる力がある
【×】 ○○、嫌いです

【○】 ○○、得意ではなくて
あなたの周りにも「嫌い」という言葉を多用する人はいませんか? 嫌いなものを周りに伝えることが悪いとは言いませんが、「嫌い」という言葉には相手を疲れさせる力があるように感じます。
例えば「こういう人が嫌い」「これをされるのが嫌い」とばかり普段から言っていると、周りは気遣いをしなければいけないですし、怒らせないようにと、ピリピリした空気になってしまいます。
相手に極端に遠慮させることで、良いアイデアを発言する機会も失われてしまうかもしれません。周りから人が離れていく可能性も高いでしょう。

それとは逆に「好き」を語る人は、その場の空気を柔らかくします。周りの人も同じ空間で気持ち良く過ごせたり、意見を言いやすくなったりと、風通しの良い環境をつくれるものです。また、「あの人はあれが好きって言っていたから」と、その好きなものに関連する情報が集まったり、情報交換ができたりなど、メリットもたくさんあります。
■最後は「好き」で締めると好印象
もし「嫌い」を伝えたいときは、「得意ではない」と伝えるのが大人のたしなみです。「そういう人が嫌い」ではなく「そういう人は、あまり得意ではない」と伝えたうえで、「ですが、こういう人は大好きです」と、その後に「好き」で締める言いかえができると、相手にプラスの印象を与えます。
単純に「嫌い」という言葉は、聞いていて良い気分がしないものです。「○○(食べものや趣味など)が嫌いで」と軽く言うような場合でも、「得意ではない」と言いかえると伝わり方がマイルドになります。
普段から相手に対しては「嫌いな部分」よりも「好きな部分」を見るようにしておくことも、ほめ言葉に真実味が宿る大切な習慣です。
【Point】嫌いなものがあっても、あえて言葉に出さないのが大人。
■「一応」は曖昧な表現である
【×】 一応

【○】 念のため
「一応」は「十分ではない、不十分」「ひとまず」という曖昧な表現です。目上の人に「一応お伝えしておきます」と言ったり、家族に「一応言っておくけど」などのように伝えると、親切でやったことでも「信用されていない」と感じさせてしまう可能性があります。
また、「一応やっておきました!」などは不十分というニュアンスで伝わることもあり、信頼を失ってしまいかねません。
さらには、「一応って……。大丈夫? ちゃんとやってくれている?」と相手を不安にさせてしまいます。
特にビジネスの場では「念のため」「大事をとって」「万が一に備えて」などに言いかえると、相手のことを信用しているが、念には念を、というニュアンスで伝わるため、不信感につながりません。
■注意する場面でも効果的に使える
相手のサポートをした際なども「念のため、以前の文書を準備しておきました」「大事をとって、締め切り日を延期しました」「万が一に備えて、この資料を用意しておきました」と伝えられると、より相手との関係性も信頼も深まることでしょう。
ビジネスシーンではない関係性でも「一応伝えておくね」と言うよりも、「念のため伝えておくね」と言うほうが、相手が、「自分のことを想って伝えてくれた」と感じるものです。
特に注意を要する場面などでは「お節介かもしれないけれど、今後のために念のため伝えておくね」と言えると、相手に伝わる印象も格段に変わることでしょう。仕事でもプライぺートでも、「一応」という言葉はなるべく使わずに、伝えるようにしましょう。
【Point】「一応」は相手を不安にさせて、自分を下げる可能性も。お互いが安心できるよう「念のため」を使おう。
■「お誘い」のうまい断り方
【×】 今回は参加できません

【○】 今回は不参加でお願いします。次回はぜひ参加させてください!
「週末、飲み会に参加できる?」「今回は予定があって、不参加でお願いします」このような誘いを断るセリフはよく耳にします。お誘いを断る場面で、相手にネガティブな印象を残してしまうと「もう誘うのはやめよう」「次から誘うのが申し訳ないな」と相手に敬遠させてしまったり、次のお誘いがなくなったりと、マイナスな状況につながることもあります。

「今回は不参加でお願いします」と簡潔に要件で終わらせるだけでも悪くはないですが、できるだけ相手にマイナスな印象を残さないためには、断ったあとに、前向きな姿勢を伝えるといいでしょう。
■“次につなげる言葉”をセットで伝える
「また声をかけてください!」

「次回はぜひ、参加させてください」

「これに懲りず、また誘ってもらえたら嬉しいです」

「来月は空いておりますが、いかがでしょうか?」

「誘っていただけて嬉しかったです」
などのような言葉があったら、「次回、また声をかけてみよう!」と前向きに考えてもらえるはずです。
人は誰でも「拒絶されること」「断られること」を避けたくなるものです。
一度ならまだしも、何度も断られると「誘うこと自体が嫌なこと」に変わってしまう恐れもあります。あの人は誘いにくい人だ……とネガティブな印象を残してしまうと、新しい出会いやご縁を遠ざけてしまう恐れもあります。
お誘いを断るときは、その先にあるご縁を台無しにしないように、「断る言葉+次回につなげる言葉」をセットにして伝えるようにしましょう。
【Point】断わるときには「次回につながるひとこと」を添えよう。

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松 はるな(まつ・はるな)

言語化コンサルタント

東京都出身。株式会社ワールドにて外資系アパレルブランドの広報・PR・販売を担当。その後、株式会社角川SSコミュニケーションズにて雑誌編集のアシスタント業務に携わりながら、各企業より依頼を受けてコラムやメルマガの執筆・SNS運用・インタビューなどを行う。フリーになった現在は、ジャンルを問わず多くの企業でライティングや言語化・SNSコンサルティング、コミュニケーションを豊かにするための言語化サポートも行っている。

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(言語化コンサルタント 松 はるな)
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