お金が貯まる人とそうでない人は何が違うのか。数多くの資産家を取材してきたライターの菅原圭さんは「お金が貯まらない人ほど必要量を把握していない。
だから無駄な買い物をしてしまう」という――。(第1回)
※本稿は、菅原圭『お金持ちが肝に銘じているちょっとした習慣』(河出書房新書)の一部を再編集したものです。
■100円ショップの意外すぎる平均購入額
百均ショップ最大のマイナスは、モノを大事にしなくなってしまったことだ。とくに目立つのは、文房具の扱い。
ボールペンなど、いつも数本はデスクの上に転がっているし、はさみやホチキスなどもちょっと見つからないと、「探すより買ってきたほうが早い」と、すぐに百均ショップに走ってしまう。
ところが帰宅して、ちょっとデスクを片づけると、それまで使っていたハサミやホチキスがちゃんと姿を現すのだ。こういうだらしのなさには、われながらイヤ気がさす。
周囲でも、百均ショップの登場以降、「モノを大事にしなくなった」という声は少なくない。「あ、いいよ。また、百均で買ってくればいいんだから」が口グセになっていないだろうか。
そのうえ、百均ショップでも、前項で述べた“買わせる”プロの手腕はちゃんと発揮されている。上手に消費意識を刺激する商品構成や導線になっているから、売り場を回っている間に、カゴの中身は“自然に”増えていく。

百均ショップの平均購入額は、月間635円ほど(2021年帝国データバンク調べ)。たいした金額ではないようだが、この10年間で、1.6倍に増加したということは見逃せない。「探すより買ってきたほうが早い」という買い方が増えている証拠ではないか。目的のものだけですむことはまれで、予定外のものを買ってしまうことが多いはずだ。
■カゴを持たないという節約術
ちっちゃな人間だと呆(あき)れられそうだが、私は最近、百均ショップでは最初からカゴを持って回らないようにしている。
百均ショップに行く目的は、せいぜい、「接着剤を買おう」とか「赤のボールペンを買おう」というくらいのものなのだ。それなのに、売り場を歩いているうちに「あれ、これいいんじゃない?」というアイテムが次々、目に留まる。
カゴを持っていれば、その場ですぐにカゴに入れ、お買い上げ! となる。だが、カゴを持っていなければ、あんがい、「まあ、今日はいいや」と歯止めがかかる。
せめて、目的のモノだけ買うようにして、これ以上、モノを粗略に扱う気持ちにブレーキをかけようとしているつもりなのだが。
ここまで読んで、この本を「なんだ、倹約本か。小さな出費を抑えて“ちりも積もれば山となる”効果で、お金をためようと勧める本だ」と決めつけないでほしい。

実をいえば、私はもともと細かなことは得意でない。“ちり積も”はむしろ、私には最も不得意なことのひとつだといわなければならない。
私が指摘したいのは、こうした断面から見えてくる、気がつかないままにジワジワ進んでいってしまっている“気のゆるみ”や“気持ちのだらけ”。具体的にいえば、毎日の暮らし方が、気がつかないうちにだらしなくなり、ルーズになっている傾向だ。
■だからお金が貯まらない人になる
「LINE調査」(2022年)によると、百均にいく頻度は「週に1回以上」が2割強。「月に2~3回」が3割強。30代以上では「週に1回以上」が2.5割以上と高めになる。
目的買い以外に、「新商品や人気商品をチェックする」という人も多いようだ。ネットには百均店内を歩いていると「ちょっとワクワクする」という声さえ見られるくらいで、百均は、変化にとぼしい毎日を送る人にとっては、ちょっとした楽しみになっているのかもしれない。
そして、目新しいもの、面白グッズなどを「100円だから」と、つい2~3品買い込む。それ自体が悪いといいたいわけではない。問題は、こうして買ってきたものをちゃんと生かして使っているかどうか、だ。

私は「NO」だった。1年ほど前に、十数年ぶりに引っ越しした。このとき、あちこちから、買ったまま、使った痕跡がまったくないものが続々と出てきたのには、われながら呆れた。
その多くは百均などで衝動買い、いや、“なんとなく買い”したものだった。
こうした“なんとなく買い”は小さなストレス発散になっているものだ。つまり、“なんとなく買い”が多い、イコール、毎日、かなりのストレスをため込んでいる証しだといってよいだろう。
ストレスを抱え込んでいる暮らしではお金の管理も行き届かなくなり、だらだらと無造作にお金を使ってしまう。底に穴が開いた財布を使っているのと同じだ。
こうした暮らしを続けている限り、いつまでたっても、「お金が足りない」「お金がない」という思いから解放されることはないだろう。
■冷凍庫に保冷剤をため込まない
少し前に「保冷剤がたまる家はお金がたまらない」という記事を目にして、大いに興味を引かれた。私もまったく同じ考えをもっていたからだ。
だが、記事の内容をよく読むと、私の考えとはかなり違った主張が展開されていた。

ネットの記事では「保冷剤がたまる家は、自分へのごほうびと称して、デパ地下で高級スイーツやごちそう総菜を買うことが多い」として、こういうものには必ず保冷剤がついてくるので保冷剤がたまる→割高な買い物を平気でしている→お金がたまらないという主旨だった。これも一理ある。だが、私が「保冷剤がたまる」ことに注意警報を鳴らすのは、別の理由だ。
保冷剤をため込んでいる人に見られる共通の傾向は“もったいながり”だ。
冷凍庫に入れておき、お弁当と一緒に包んだり、おすそ分けなどのときに使えば、低温を保てるから傷(いた)みにくい。そう思う気持ちはよくわかるが、だからといって、大量にため込む必要はない。
だが、ためる人はもともと“もったいながり”だから、当面、使うぐらいは十分あるとわかっている。これ以上は余分だとわかっていても、捨てることができないのだ。
■そんなに持ち返ってどうするの
スーパーなどの中には保冷剤が入ったケースが置いてあり、「好きなだけ?」保冷剤を利用できるところがある。時々、明らかに必要量以上の保冷剤を取っている、中には買い物袋にいくつも詰めこんでいる人を見かけることがあるが、正直、なんだかイジましい。
そこまで欲張って持ち返り、どうする気なのだろう?
なんとネットで保冷剤を「6個で999円」などと売っている例も見た。マメだなあ!
ケチな私だが、でも、売るほど保冷剤をため込んで何百円かを手に入れるより、せいぜい10個程度ストックしたら、それ以上の保冷剤はちゃんと捨てる、という生活感覚のほうを大事にしたい。

デパートや有名店の紙袋をため込んでいる人も少なくない。
高級店の紙袋はデザインも素材も素晴らしく、また丈夫なので、使い捨てにするのはたしかにもったいないと思う。
外出時にカバンに入り切らないものを入れてサブバッグとして活用できるし、人に何かをあげるときに再利用できる。なかには、ゴミを出すときに使うから、という理由もあるようだ。だが、これも程度問題だ。
■お金が貯まる人との違い
最近は紙袋は有料というところも増えているのだ。当面、使う分だけストックしておけば十分だという分別はもっていたい。
予定外の買い物を続けることと、再利用できるからもったいないとばかりに保冷剤や紙袋を必要以上にため込むこと。一見、矛盾しているようだが、この二つは根っこでつながっている。
その証拠に、保冷剤をため込んでいる人は、冷蔵庫に、いつもぱんぱんに詰めこんでいることが多い。バーゲンだとつい余分に買ってしまうからだ。
要は、日々の生活に何がどのくらい必要なのかをちゃんと把握し、その枠内で自己管理することができないのだ。
そして二つの行動は、自分をきちんとコントロールできない、だらしない人に共通する特徴だといってもいいだろう。

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菅原 圭(すがわら・けい)

フリーライター

早稲田大学文学部卒業後、コピーライター、出版社を経て、執筆活動に入る。ライターとして、ビジネス界のキーパーソンや作家、文化人などを数多く取材。著書に『育ちのいい人が身につけている ちょっとした習慣』(KAWADE夢文庫)、『ものごとに動じない人の習慣術(新装版):冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣 』(KAWADE夢新書)などがある。

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(フリーライター 菅原 圭)
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