~より快適な清涼感の実現に向け、TRPチャネル研究を応用~

株式会社マンダム(本社:大阪市、社長執行役員:西村元延 以下マンダム)は、化粧品(医薬部外品を含む)の機能や使用感の向上を目指し、皮膚における感覚刺激に着目した研究を行っています。この感覚刺激について、自然科学研究機構・生命創成探究センター 富永真琴教授と共同研究を行い、TRP(Transient Receptor Potential)チャネルを用いた評価方法の開発、及び製品への応用に取り組んでいます(※1)。
今回、これまでに知られている不快刺激抑制成分と比較して臭気強度が顕著に低い「イソボルニルオキシエタノール(Isobornyloxyethanol)」も同様に、清涼成分により引き起こされる不快刺激を効果的に低減することを見出しました。

マンダムは、生活者がより快適に使用できる製品への応用を目指し、清涼感技術の更なる深化を図っていきます。
なお、この研究成果については、2018年9月18日~21日に開催された「第30回 国際化粧品技術者会(IFSCC Congress)」で発表を行いました。また、2019年3月28日~31日に開催される「第9回アジア・オセアニア生理学会連合大会&第96回日本生理学会合同大会」においても発表を予定しています。

1. 強い清涼感に伴う不快刺激の低減に向けた成分探索
近年の猛暑を快適に過ごす上で、手軽に爽快感や冷感を楽しめる清涼化粧品が人気となっています。このような化粧品には、強い清涼感を付与するために清涼成分リットル-メントールが汎用されています。
しかし、このリットル-メントールは多量に配合すると使用時に灼熱感を引き起こし、不快刺激に繋がります。この灼熱感には、ワサビやカラシの辛み成分の受容体であるTRPA1が関与していることが報告されていたため、マンダムではこのTRPA1に着目し、TRPA1の活性を抑えることで不快刺激を低減させる成分の探索に取り組んできました。
マンダムではこれまでに、ユーカリプトールにリットル-メントールによるTRPA1の活性を抑制し、不快刺激を低減させる効果があることを見出していました。しかしながら、この成分は特有の強い臭気を持つため、製品の香りに影響を与える場合がありました。今回、製品使用時の香りも含め、快適な使用感を持つ清涼化粧品開発に向け、臭気強度が低く、かつ効果的に不快刺激を低減させる新たな成分の探索を行いました。

2. イソボルニルオキシエタノールが不快刺激を低減
これまでに見出したユーカリプトールと化学構造が類似しており、かつ、においが弱い成分を選び出し、リットル-メントールによるTRPA1の活性を効果的に抑制する成分の探索を行った結果、イソボルニルオキシエタノールにTRPA1活性抑制効果があることを見出しました(図1)。

[画像1: https://prtimes.jp/i/6496/394/resize/d6496-394-686494-4.jpg ]

また、ヒトの頸部を用いたマンダム独自の清涼感評価法においても、リットル-メントールを配合したときに引き起こされる不快刺激がイソボルニルオキシエタノールによって低減することを確認しました。(図2)。
この結果から、イソボルニルオキシエタノールはリットル-メントールによる不快刺激を低減する成分であることが明らかになりました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/6496/394/resize/d6496-394-889422-1.jpg ]


3. イソボルニルオキシエタノールの低い臭気強度
イソボルニルオキシエタノールについて嗅覚パネル(※2)による臭気強度評価を実施した結果、既存のユーカリプトールと比較して臭気強度が顕著に低いことが確認されました(図3)。このことから、イソボルニルオキシエタノールは、化粧品の香りにほとんど影響を与えずに、リットル-メントールによる不快刺激を低減させることができる成分であることがわかりました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/6496/394/resize/d6496-394-645031-2.jpg ]


このイソボルニルオキシエタノールを用いた不快刺激低減技術を、より快適な清涼化粧品の開発に応用していきます。
またこの技術に関して、ロゴマーク化するなど、生活者により伝わりやすい製品開発を心がけてまいります。マンダムは、生活者に快適に使用して頂ける製品への応用を見据え、今後も技術の深化を図っていきます。

※1 TRPチャネルへの取り組み
<感覚刺激のメカニズム>
[画像4: https://prtimes.jp/i/6496/394/resize/d6496-394-965771-3.jpg ]

近年の研究により、「TRPチャネル」(化学物質や温度を感知して電気信号に変換する「センサー」)が、皮膚に存在し、これが感覚刺激受容に関与していることが明らかになってきました。このTRPチャネルは、化粧品を使用した際の不快な感覚「ピリピリ」、「ヒリヒリ」にも関与していることが、マンダムの研究により解明されています。カプサイシン(トウガラシの主成分)や熱刺激の受容体であるTRPV1、ワサビの主成分の受容体であるTRPA1が関与していることを見出してきました。また、TRPA1はヘアカラーや防腐剤、多価アルコールの刺激にも関与しています。
清涼化粧品における「清涼感」に関しては、冷たさを感じる際にTRPM8が活性化しており、メントールが配合されている清涼化粧品の多くで清涼感を感じるのは、このTRPM8が活性化するためだと言われています。


<マンダムのこれまでの取り組み>
1. TRPチャネルを感覚刺激センサーとして化粧品評価に応用(2007年10月9日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2007/src/2007100901.pdf
2. 皮膚感覚とTRPチャネル活性の相関関係(2010年9月22日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2010/src/2010092201.pdf
3. ヘアカラーの刺激メカニズムの解明とそれを低減できる炭酸イオンの発見(2010年12月6日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2010/src/2010120601.pdf
4. ユーカリプトールにおける、清涼感の不快刺激の低減効果を発見(2012年3月8日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2012/src/2012030801.pdf
5. ヒトが冷たいと感じる温度は外部温度によって変化するメカニズムを解明(2012年10月18日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2012/src/2012101801.pdf
6. 水などの低浸透圧液が鼻腔や目の中に入ることで刺激になるメカニズムを解明(2015年7月9日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2015/src/2015070901.pdf
7. メントールによる鎮痛のメカニズムを解明(2015年12月10日リリース)
https://www.mandom.co.jp/release/2015/src/2015121001.pdf

※2 嗅覚パネル
臭気判定士が監修する「嗅覚測定法」によって定められたパネル選定試験を実施し、5種類の基準臭に対し一定の感度を有することが確認された専門の評価者。

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