ドイツで開催された女子バスケットボール・ワールドカップは、アメリカの連覇で幕を閉じた。
前回準優勝の中国は、準々決勝敗退となったが、ある怪童選手が大きな注目を集めた。
身長223センチという破格の体躯を持つ19歳のチャン・ツーユウだ。
相手選手が度肝を抜くほどの体躯を誇り、今大会では出場した5試合平均で13分プレー、8.8ポイント、5リバウンドを記録した。中国の秘密兵器がついに世界に見つかった形となった。
中国紙によれば、当初は「使い物にならない」「動きが遅すぎる」と国内でも批判されていたが、瞬く間に「役立たず」から「救世主」へ変貌を遂げたかのような活躍を見せたとのこと。
ただ、彼女の存在は、中国にとってうれしい悩みになっているという。
「チャンの長所と短所は明確だ。身長は圧倒的な武器だが、その体格ゆえに移動速度や俊敏性が制限される側面もある。
現代バスケが求める『走るバスケ』、センターに求められるオールラウンドな技術、アウトサイドからのシュート力といったスタイルとは対極にあるのだ。
強豪がひしめき、展開の速い国際大会の舞台において、圧倒的な高さを誇る『タワー』をどう活用し、その特性をチームの戦力へと最大限に昇華させるかは、ヘッドコーチにとって解決すべき課題。
彼女に合わせてチーム全体がペースを落とすのか、それとも彼女自身がより速い試合展開に適応するように努力するのか。まさにジレンマを伴う選択といえる。
むろん、彼女がコートに入れば、チーム全体の攻守のテンポはどうしてもスローダウンせざるを得ない。
相手に速攻を仕掛けられると、守備への戻りが間に合わず、中継映像から彼女の姿が消えてしまうシーンも散見される。こうした状況もあって、大会を通じた調子や成績には波があった」
中国バスケットボール協会は、彼女のために専属のフィジカルトレーナー、理学療法士、ドクター、栄養士からなる専門チームを編成したそう。
長期的な育成計画は10年スパンで組まれており、2028年のロサンゼルスオリンピックを明確な目標に据えている。
彼女は試合前のウォーミングアップではチーム全体の戦術確認やレイアップ練習には参加しない。
専属コーチの付き添いのもと、単独でストレッチを行う。他の女子選手ではジャンプが必要な高さであるバックボードをつかんで両手で体を伸ばすストレッチもする。
中国バスケ界は、極めて稀有な身体的特徴を持つ彼女に対して、不器用なほど忍耐強く向き合っているとのこと。
合宿期間中には減量に成功。それによって、ベースラインでのターンアラウンドを0.6秒も短縮した。
真摯にバスケに向き合っている彼女は、「まずは若い選手として、学ぶつもりで臨みました。チームに多少なりとも貢献できたかなと思います。チームに貢献できるように一層努力して学んでいきたいです」などとコメント。
そのうえで、何か欲しいものがあるかと聞かれると、「マグネットとマスコット」と無邪気さも見せていたとか。
彼女の母であるユー・インも身長198センチを誇り、かつて中国女子バスケ代表のセンターとしてプレーした選手。1998年にドイツで行われたワールドカップに出場し、娘と同じコートに立った。
チャンは「まずは母に感謝したいです。母と同じコートでプレーできることをとても光栄に思います」と謙虚な言葉を口にしていたそう。
現地では「28年の時を超えて、二世代にわたる女子バスケ選手が同じ国際大会のコートに立つ。その継承は、どんな試合の勝敗よりも重みのあるもの」とも伝えられていた。
筆者:井上大輔(編集部)
画像提供:Getty Images

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