もちろん筒香は「勝つ喜び、負ける悔しさは必要なこと」とはっきりと口にし、勝負がもたらす選手の成長そのものを否定しているわけではない。ただ小さい子であるほど選手の成長に発育発達が大きく関係するから、時に勝利より優先すべきことがあることを野球界全体で考えるべきではないかと主張した。
彼の訴えたことは野球界にとどまらず、サッカーやバスケットボール、バレーボール、ハンドボール、体操、卓球などスポーツ界全体で議論すべきテーマである。なぜなら自国の人口減少による競技人口の減少はすべてのスポーツに降りかかっている問題だからだ。たとえ現状は一時的に競技人口が増加していても、その人気ぶりに陰りが出れば、どのスポーツも近い将来ぶつかる壁である。
例えば、サッカーの選手登録数を調べると、2019年度は全体が87万8072人、ジュニア(小学生年代)の人口は26万9314人で、その上のジュニアユース(中学生年代)に残っているのが22万9537人だ。サッカーは全体の登録人口のピークを迎えたのが、2014年の96万4328人であり、ジュニアのピークは2013年の31万8548人である。さらにジュニアの過去40年のデータを振り返ると、1985年に23万1036人と20万人を超えてからは人気等によって多少の増減を繰り返しているが、決して増え続けているわけではない。
むしろピークだった2013年以降は減り続ける一方だ。