電気ショックで心臓を再び動かす、という事は現代の我々ならば得ている知識だが、そのような医学知識もましてやAEDのような医療機器もなかった江戸時代に、実践してしまった人物が存在している。
その人物の名は弥五郎と言い、武州川越(現在埼玉県川越市)の城主・酒井讃岐守忠勝家中の人間であったという。彼は手や体から電気を出すことができたそうで、「鯉の弥五郎」「鯉抱き弥五郎」とも呼ばれていた。彼の電気を帯びた手にかかれば、水中の鯉は逃げることが出来ないとされ、弥五郎が水中で抱き取った鯉は釣ったり、網で捕獲した鯉とは違って美味しく、三代将軍家光に献上されたほどだったという。
せっかくほかの人にはない能力を持っているのに、将軍に認められたのが「鯉を美味しく捕まえる」ことだったのは笑えるが、死んだ自分の母親も体内に蓄積した電気を与え蘇生させたと伝えられており、きちんと人命も救っている。話によると、弥次郎は自分の母だけではなく、難病を抱えた人も抱きつくことにより病気を治すとされており、江戸で非常に人気のあった人物なのである。
今で言うところの電気治療と言うわけであろうか、この人物は何らかの理由で電気を蓄積したり、体内で発電することが可能だったのかもしれない。