2021年になり、突然発令された2度目の緊急事態宣言。東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、1月8日から2月7日まで1カ月間を予定している。


 経済活動を大幅に制限した前回と異なり、今回は飲食店のみに対して20時までの営業時間短縮を要請。酒類の提供も19時までとなる。要請に応じた店舗には協力金として1日当たり6万円、最大で180万円が支払われる。今後、政府は要請に応じない店舗に罰則を負わせる法整備も検討する方針だという。

 そんななか、都内で居酒屋を経営する河合正樹さん(仮名・53歳)は、今回の政府の措置に憤りを隠せない様子だった。

 「映画館や劇場、スポーツジムなどでもクラスターの危険性はあるはず。
それらすべてが規制対象となるならまだ理解できますが、どうして飲食店だけなのか……。政府からの説明もほとんどなく、納得できません」

 帝国データバンクが全国で行った調査によると、新型コロナウイルスが原因とされる倒産件数は業種別で飲食店が136件と最多。さらに、東京商工リサーチのインターネットによるアンケート調査によると、回答があった飲食店のうち廃業を検討している経営者は32%(61社中、20社)に上るという。

 「もちろんコロナ感染症対策には万全を期していますが、うちのお店がクラスターになってしまう可能性もゼロではない。私だって怖い。それでも、営業を続けなければ私が生活できなくなってしまう。
22時までの時短営業でさえ、直近ではお客様が一日に7組しか来ないなんて日もありました。居酒屋なので、実質的には酒類の提供が終わる19時までが勝負。協力金があるとはいえ、いろいろ比較して要請に応じないことも検討しないと、このままではさすがに店をたたまざるを得ないかもしれません」(河合さん)

 政府の要請を無視して営業を続けるか否か。河合さんだけでなく、多くの経営者が岐路に立たされている。

 1月7日には、国内外で43店舗を運営し、映画「キル・ビル」の舞台のモデルにもなった居酒屋「権八」などを擁するグローバルダイニングも、緊急事態宣言下の通常営業を発表した。代表取締役社長の長谷川耕造氏は公式サイトにコメントを投稿し、「飲食で19時までの飲食の提供、20時までの営業では事業の維持、雇用の維持は無理」と断言している。


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 一方、小規模でもともとの売り上げが少ない店舗であれば、協力金の価値は高まる。たとえば、コロナの主たる感染地として“夜の街”と名指しで取り上げられていた新宿歌舞伎町の飲食店では、前出のケースとは少し様相が異なるようだ。

 「歌舞伎町には4、5人程度しか入れない小規模な個人経営店がたくさんある。そのような店だと、むしろ時短営業に応じた方がもうかるというケースも多いんです。前回の緊急事態宣言時は補償が若干あいまいな点もあったので、不安感から営業を続ける店もありましたが、今回は1カ月間で180万円と明快。客離れの問題もあるので、期間が延長されれば今後どうなるかは分かりません。
ですが、多くの人が抱いているイメージと違って、特に歌舞伎町ゴールデン街なんかは、今、本当に真っ暗ですよ」(週刊誌ライター)

 この1カ月間で各飲食店がどのような生き残り戦略を講じるのか。今後の対応に注視が必要だ。

記事内の引用について
https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html(帝国データバンク)
https://img03.en25.com/Web/TSR/%7B22bda0e9-ecc3-4613-9cdf-ff89c8fc90eb%7D_20201217_TSRsurvey_CoronaVirus.pdf(東京商工リサーチ)
http://www.global-dining.com/news/2021/01/07/11929/(グローバルダイニングコメント)