
そんな『新幹線大爆破』からさかのぼること8年前の1967年(昭和42年)4月15日。東海道新幹線大阪行き「ひかり21号」の車掌から東京の指令所に「7号車の座席に爆発物らしき装置が付いた本が置いてあった」と報告が入った。
ひかり21号は名古屋駅で緊急停車し、名古屋鉄道中央公安室の職員が爆発物の撤去に乗り出した。
爆発物は厚さ4センチほどの『源氏物語』のケース入りの本で、本の中身はくり抜かれ、3本のダイナマイトに雷管、乾電池などが仕込まれていた。ケースを取り外すと乾電池と金属線が接触し、雷管、そしてダイナマイトにつながるという手の込んだ爆発物で、理論上、爆発する可能性はあった。
もっとも、爆破装置は粗悪であり実際に爆発するリスクは小さかったようだが、もし走行中に爆発していれば新幹線の底が抜け、横転する可能性があったほか、パニックになった乗客が総立ちになった際の将棋倒しなど二次災害が発生する可能性もあった。
警察はすぐに、この爆弾を新幹線に仕掛けた犯人を捕まえるため、乗客に不審者がいなかったか調べた。
すると、意外な人物が容疑者として浮上した。この日、ひかり21号には高校生の修学旅行客がおり、その中の一人がダイナマイトの入った『源氏物語』に付着していた指紋と一致したのだ。