ロシア事情に詳しい筑波大の中村逸郎教授によると、人口約1億4300万人のロシアから、970万人が国外に脱出しているという。もしこれが本当ならロシア人の15人に1人が海外に脱出してしまったことになる。


人口流出で、特に深刻なのはIT技術者といった頭脳エリートが、ウクライナ侵攻がはじまってから、国外への流出が止まらないことだという。いまの時代、軍事において高度なIT技術はなくてはならないものだ。その技術者が激減しているらしい。

もともとロシアはIT大国として世界のトップを目指してきた国だ。事実、ソ連時代から技術者育成に熱心で、2015年の「世界経済フォーラム」によると、技術系人材輩出者数はロシアが1位で約45万人。2位が米国で約24万人と、米国を圧倒するほど技術者を育ててきた。

(ちなみに3位イラン、日本は4位である)

「国際大学対抗プログラミングコンテスト」では2012~2021年までロシアの大学が優勝校となっている。

それほど高度な技術者たちが、ロシア政府の発表によると去年12月の段階で、すでに約10万人が国外に流出。

出国したIT技術者の8割はロシア企業でリモートワークを続けているが、もともとIT技術者はウクライナ侵攻前から、世界中で引く手あまたであり、待遇のいい諸外国の企業に転職する人も少なくない。

これがウクライナ戦争にどのような影響を与えるかというと、ドローンや人工衛星を動かすにはソフトウェアが必要で、優秀なIT技術者が少なくなったことで、何らかの不具合が出たときの対応が難しくなってきていると言う。

またロシアは、アノニマスなど世界からサイバー攻撃にさらされており、軍事のみならずロシアの治安や日常生活などにも影響が出てきそうだ。

ロシアから脱出した後のIT技術者がどこに向かったのかを調査しているウィーン経済経営大学のヨハネス・バスク助教授によると、米国やドイツのような先進国はもちろん、旧ソ連圏や中東にも移住し、それぞれの国の企業に転職すれば、その国に技術革新をもたらすのではないかと言われている。


ロシアから脱出した人数は970万人、これはロシアの労働人口の13%にもなるそうな。沈む船からネズミは逃げ出すというが、いまロシアという巨大な船は沈みつつあるのかもしれない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。
2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。