先日大阪市のスーパーで、テントを固定する先の尖った金具で複数の客を襲い捕まった男がいた。
男が捕まって連行されるときにニヤニヤしていたことや、自らの逮捕について意味不明の発言から、SNSなどで精神疾患を疑う声が上がった。


「心神喪失で無罪か」
「どうせ精神鑑定で軽い刑になる。精神状態がどうであろうとちゃんと裁いてほしい」
「加害者の人権ばかり重視しやがって」

などとSNSに書き込む人がいた。

ところで精神疾患者の刑法犯は多いのだろうか?
2021年(令和3)における刑法犯の全検挙者数のうち、精神障害者等の比率は、0.7%と少ない。
ところが罪名別で見ると、放火11.4%、殺人6.4%と、このふたつの凶悪犯罪については多いというのが現実だ。

そして裁判所は、心神喪失や心神耗弱を容易には認めない傾向にあり、精神鑑定をしてもほとんどが無罪や減軽にならないということは、一般にあまり知られていない。
令和4年版の『犯罪白書』によると、第一審において心神喪失を理由に無罪となった者は、わずかに4人である。


では精神疾患などで不起訴や無罪になった場合すぐに自由の身になれるのかというと、そうではない。

しかしそれでも被害者や一般市民の「それはおかしい」という感情はよくわかる。

心神喪失で罪を犯せば無罪になるが、社会を守るために法律で、無罪放免とはいかないようにしている。
それは精神保健福祉法の『措置入院』だ。
これは精神疾患のため自分や他人を傷つけるおそれがある場合、強制的に入院させることができる制度である。

さて、精神疾患のせいで罪を犯してしまった人にとって措置入院は軽いのか? それとも重いのか?

責任能力がある人が、人ひとり殺して10年の実刑を受けた場合と比べてみよう。

10年の実刑を受けた場合、10年すれば釈放される。

では責任能力がない患者が、妄想で人ひとり殺して措置入院となった場合はどうか?
病気が寛解(病気が再発しない状態が続いていること)し、鑑定医と検察官が許可するまで退院できない。
3年で病気が治り、退院できる人がいるかもしれないし、一生退院できない人がいるかもしれない。

この二つの例を比べても、どちらが厳しいのかはよくわからない。措置入院は刑ではなく、病気を治すために入るものだ。

刑務所は罪を償うために入るが、罪を犯し「責任能力がない」とされる人は、「責任を取ることができないため、刑を受ける権利がなくなった人」でもある。

それにしても、この問題は難しく、どこかモヤモヤした感じが残る。

最後に、精神疾患の人は約420万人。日本人の30人に1人が通院や入院をしている病気だ。くれぐれも、「凶悪犯罪=精神疾患」という偏見を持たないようにしてほしい。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。
社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。