殺人の疑いで逮捕されたのは、江戸川区の公立中学校教師・尾本幸祐容疑者だ。尾本容疑者は2月24日の午後6時半ごろ、山岸正文さん(63)を刃物のようなもので切り付け、殺害した疑いが持たれている。


現場は、尾本容疑者が勤務する中学校から3分ほどの距離で、何より驚いたのは尾本容疑者の評判の良さだ。

校長も他の教師たちも、生徒も保護者も、近所の人からも尾本容疑者を悪く言う人はいない。みな口を揃えたように「優しい先生「素敵な先生」「子煩悩なお父さん」というのだ。

尾本容疑者は、ギャンブルなどで数百万円の借金があり、お金に困っていたというが、外側からはまったくその様子は見えなかったようだ。

さて、仮に容疑者の動機がギャンブルなどでお金に困っていたからというものだとしたら、ギャンブル依存症が疑われる。

ギャンブル依存症に限らず、すべての依存症は「自分や他人に迷惑をかけているのがわかっていてもやめることができない」ものをいう。


日本はギャンブル依存症大国で、依存症について調べている厚生労働省の研究班久里浜医療センターによると、「ギャンブル等依存症が疑われる者の割合」は、3.6%。

これはフランス1.2%、ドイツ0.2%、オランダ1.9%と、諸外国と比べて突出してギャンブル依存症が多いことがわかる。日本には競馬・競輪・競艇・オートレースと公営ギャンブルがあるのに加え、町に一つはあるパチンコ屋が、ギャンブル依存症の人を増やしていると考えられている。

ギャンブル依存症になると、アルコールや覚せい剤の依存症と同じく脳のレベルでコントロールができなくなり、集中力・記憶力などが低くなることがわかっている。さらに前頭葉の機能が低下し、衝動性が高まるという研究結果もある。つまり脳が変化し頭が悪くなってくるのだ。


尾本容疑者が、ギャンブル依存症であるかどうかは、専門医が診断をしないとわからない。どちらにせよ、尾本容疑者はギャンブルなどの失敗で借金があり、一発逆転で強盗を思いつき実行してしまったとしたら、前頭葉の機能が低下していたと言われても仕方がない。

それにしても尾本容疑者は公立中学の先生、つまり公務員であり、やりようによっては周囲に知られずに借金を返済することが可能であったはずだ。それを強盗殺人とは、あまりに幼稚で短絡的だ。

ちなみに被害者の山岸正文さんと同居していた87歳になる母親は重度の認知症であり、殺された山岸さんが介護をしていた。尾本容疑者はこの母親も襲い切りつけている。


尾本容疑者には妻と2人の子供がいる。

もし強盗殺人が確定すれば、死刑か無期である。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。
2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。