ジャニーズはあまりにも大きな権力をもった芸能事務所であった。テレビ局はジャニーズ事務所への忖度のため、ジャニーズを辞めたタレント「やめジャニ」は使おうとしなかった。
そうさしたのは、ジャニー喜多川の姉のメリー喜多川氏であった。

メリー喜多川氏とジャニーズ事務所が、テレビ局の出演タレントを自由にするだけの強権を持つようになったのは、国民的アイドルグループ「SMAP」があまりにも売れるようになってからだという。

そんなSMAPであったが、2016年に解散。稲垣吾郎、草薙剛、香取慎吾の3人が退所すると、一時期、地上波のテレビ番組から姿を消したことは記憶に新しい。ジャニーズ事務所がテレビ局に圧力をかけたからだ。

このとき「公正取引委員会」が、ジャニーズ事務所がテレビ局に対し退所した3人のメンバーを出演させないよう圧力をかけた場合は「独占禁止法」に触れるおそれがあると注意処分を出している。


SMAPが全盛期の2003年、ジャニー喜多川の性加害は、高等裁判所で初めて認められ、2004年には最高裁がジャニー喜多川側の控訴を退けて「ジャニー喜多川氏が、未成年の少年らへの性加害は事実である」と認めた。

しかし一般人はこの最高裁判決のことを知らない人も多い。

この裁判は2000年1月30日付の「ニューヨークタイムズ」で取り上げられ、その3ヵ月後国会でも取り上げられたが、日本のマスコミは沈黙した。

超有名芸能事務所が最高裁で裁かれ、国会で審議までされたのにNHKも4大新聞もほとんど報道しなかったのだ。かなりの異常事態なのに、日本のマスコミはジャニーズの力に屈したのだ。

だがその心底には「たかが芸能界のゴシップだろ」「性被害といっても被害者は女の子じゃなくて男だろ」という社会風潮や偏見もあったのも事実である。


雑誌などでもジャニタレが表紙になると確実に売り上げが伸びる。テレビ番組なら視聴率が上がる。テレビ局もマスコミ各社もそんなジャニーズ事務所の言いなりとなった。マスコミの完全敗北である。ジャニーズ事務所の売り上げは1000憶円を超えた。

ジャニー喜多川とメリー喜多川の死によって、ジャニーズ事務所の力は少しずつ衰えていくが、それでもテレビ局やマスコミ各社は忖度を続けた。


今回の騒動は元々、英国BBC放送のドキュメンタリーにはじまるが、海外からの突き上げがなかったら、いまでも問題にされていなかっただろう。

一つ明らかになったのは、芸能事務所であろうが、政治家であろうが、企業であろうが、マスコミを牛耳るほどの力を持った何者かが出てきたとき、例え最高裁で裁かれ、国会で審議されるほどの悪事をしたとしても、誰も報道しない可能性があるということだ。

今回の件で、力を持ち過ぎた芸能事務所ジャニーズの影響力は、急落するであろうが、マスコミはこのことを胸に刻んでおかねばならない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。

2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。