奈良の神社話その十四 奈良時代最大の法力比べ!──奈良市・辛国(からくに)神社

奈良の神社話その十四 奈良時代最大の法力比べ!──奈良市・辛国(からくに)神社

 東大寺境内の神社についてもう一つ。大仏殿を見下ろすようにして東側の丘に鎮座する辛国神社(辛国社)には、その昔繰り広げられたという壮絶な“術比べ”が伝わっている。

 『宇治拾遺物語』につづられる陰陽師・安倍晴明vs.蘆屋道満の術比べもさながら、といえるだろう。

 奈良時代のこと。
 都に辛国行者という凄腕の術者がいた。
 行者は自分の才能を過信し、東大寺建立に尽力して初代別当となった良弁僧正と法力を争いたいと常々考えていた。
 その話を耳にした帝は術を競わせようと思い立つ。
 早速、二人は召し出された。
 ところが、行者はあっという間に良弁の法力に屈するという有様。
 「恥をかいた」と、行者は手にしていた剣を良弁に投げつけるが、念珠であっさり祓われてしまう。
 次に蜂の大軍を差し向けたが、これも鉄鉢でことごとく圧殺された。
 行者はついに恐れをなし、倶梨伽羅(くりから)明王の像を擁して地中へと入った。
 時の人が、先の行者の剣もともに埋めたので、後世この塚を「剣塚」と呼ぶようになった。
 この塚は辛国神社にあるという。

 辛国神社の祭神は韓国翁。東大寺造営に力をふるった朝鮮半島からの渡来技術者たち、またはその祖神を祀るとされる。古くは「天狗社」と呼ばれており、神紋は天狗の葉団扇。大仏殿修造当時、天狗の障碍が多くこの地に天狗を祀ったとも、その天狗たちを良弁僧正が改心させ、仏法守護を約束させたことから祀ったともいう。
 辛国行者こそがこの“天狗”だとの伝えもある。

 こじんまりとした小社だが、内に秘めた伝説はどこまでも奥深い。二月堂への参拝前に、一度立ち寄ってみてほしいものだ。

(写真「行者の伝説を残す辛国神社」)
神社ライター 宮家美樹

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2011年3月5日の社会記事

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