
「この能力が息子と娘に遺伝しなければいいけれど…」
この不安は的中し、2人の子供にTさんの能力が遺伝してしまった。
Tさんの息子と娘は、Tさんとはまた違った力を見せるようになった。
どうやら息子は少し先の未来が見えるらしく、しばしば不気味なことを言う。ある日家族でドライブを楽しんでいたところ、息子が突然おびえた声で
「お父さん、高速道路に乗らないで」
と告げた。
息子の様子を心配したTさんの夫は
「どうしてそんなことを言うんだ?」
と、後ろのシートに座る息子に聞き返した。
「だって、高速道路で事故に遭って、お母さんが車に挟まれて死んじゃうから…」
助手席で聞いていたTさんは、息子の返答に思わず言葉を失った。
「だから…お父さんお願い…」
息子はおびえながら、そうお願いするのだ。
その日は息子の言う通り高速は避けて、ドライブを続けることになった。
とある日、仕事に行こうと準備に急ぐTさんを息子が呼び止め、こう言った。
「お母さん、今日は公園を通り抜けていかないでね」
「…え?公園?」
Tさんはときどき、通勤の際に近道しようと通っている公園がある。
この公園を通り抜ける道を見つけたのはTさんだけで、子供には通勤ルートの話をしたことはない。