お茶の水を歩く(2)

お茶の水を歩く(2)

 お茶の水散策の2回目。前回記事では、「お茶の水」という名前の由来からはじまり、駿河台を歩いた。今回は「聖(ひじり)橋」を渡り、湯島へ抜ける。

【太田稲荷神社】
 お茶の水橋から、今度は、聖橋に来てみた。聖橋の先を見渡すと、淡路坂がある。淡路坂には、相生坂(あいおいざか)・大坂(おおさか)・一口坂(いもあらいざか)という名前もつけられていたそうだ。それぞれの由来は、かつて坂の上に、鈴木淡路守(あわじのかみ)の屋敷と、一口稲荷とも呼ばれた太田姫稲荷神社があったためであり、大坂は、大きな坂を意味するという。

 太田姫稲荷神社の創建は、江戸の開祖・太田道灌にまつわる。道灌の姫が当時は有効な治療方法がなかった疱瘡(天然痘)にかかったとき、疱瘡除けの故事が伝わる京都の一口稲荷神社に祈願した。姫が快復し、道灌は、江戸城本丸に稲荷神社を建てた。江戸城の鬼門にあたる場所に遷され、家康の江戸城大改築のさい、西の丸鬼門にあたる淡路坂上に移設された。

 現在の太田姫稲荷神社は、鉄道建設のため淡路坂上からさらに別の場所に遷されている。太田姫稲荷神社境内には「太田道灌公供養碑」が建てられている。また、淡路坂の線路へと続くがけには、一本のむくの木が残っており、太田姫稲荷神社旧地を示すお札と神符がまつられている。

【湯島聖堂】
 聖橋を渡り文京区に入った。目の前にあるのは、昌平坂。付近一帯は、湯島聖堂を中心に、江戸時代の儒学の本山ともいうべき「昌平坂学問所(昌平こう)」があった場所。明治のころには東京大学や文部省があった。現在も、湯島聖堂は学術・文化活動に使用されている。なお、学問所周辺の3つの坂は等しく「昌平坂」と呼ばれたという。また、聖橋は、「湯島聖堂」と「ニコライ堂」という2つの「聖」をつなぐ橋という意味。

 湯島聖堂に、高さ約5メートルの孔子像が建てられている。孔子像の前には、楷(かい)の木が植えられている。楷の木は、孔子の弟子が孔子の墓所に植えた木で、枝葉が整然としていることから、書道の「楷書」の語源となったそうだ。

 堂内の大成殿では、孔子や四賢人がまつられている。その大成殿に、湯島聖堂の規模が最大だった江戸時代に鋳造された、重量約95キログラムの青銅製「鬼龍子(きりゅうし)」が展示されている。「鬼龍子」は、猫型蛇腹の霊獣。孔子のような聖人の徳を感じると姿を現すという。もとは屋根の上にあった。

 また、「鬼龍子」と並んで、「鬼ぎん頭」(きぎんとう、『ぎん』は「けものへん」に「犬」)もある。こちらは、約120キログラム。龍頭魚尾、二脚双角の神魚で、尾を反りながら塩を吹き上げる様子は、しゃちにも似ている。

 湯島聖堂を出ると、江戸総鎮守「神田明神」の社殿が見える。現在の社殿は、鉄骨鉄筋コンクリートで造られている。神田山近辺は東京の西部から続く武蔵野台地の東端であり、かつては、ニコライ堂があるあたりから、駿河台の太田姫稲荷神社、外堀(神田川)、本郷台(湯島台)、湯島聖堂、神田明神と見渡せて、神田山の先に広がる下町を眺望できた。(竹内みちまろ)

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