
厳冬期に入り北半球で再び新型コロナ感染が拡大した。英国をはじめ欧州各国は厳しいロックダウンを実施した。日本でも昨年春以来の緊急事態宣言が発出され、観光需要喚起策「GoToトラベル」事業の一時停止や、飲食店への営業時間の短縮要請などに追い込まれた。コロナ禍の経済への影響は、業種や地域、雇用形態などでばらつきが多く、格差を生じやすい。
政府は首都圏の1都3県の知事の要請を受けて緊急事態宣言を発出したが、その後1週間もたたないうちに、対象地域を大阪、愛知、福岡など7府県に拡大。合計11都府県となったが、個別に県や市が同様の緊急事態宣言を打ち出した。この種の緊急事態宣言は一気に思い切った措置を発表し、国民に強いインパクトを与えるべきだが、「五月雨(さみだれ)」式に小出しするのは効果的とは言えない。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療提供体制の逼迫に危機感を募らせた自治体の要請に押されてのことであり、場当たり的との印象は否めない。
菅政権はこれまで、感染防止と経済活動の両立に腐心してきた。「GoToトラベル」事業の全国一斉停止に二の足を踏んだのもそのためだろう。全国的に感染が広がるなか、宣言の対象を絞り、対策を感染リスクが高いとされる飲食店の時短強化に集中させたのも、経済への悪影響をできるだけ避けたいという考え故と理解できる。しかし、今は感染の抑止に明確に軸足を移す局面であり、中途半端な対応では、国民に危機感は伝わらないと思う。