<日中シンポ総括>利益が深く融合する日中は連携強化を―日本は欧米情報脱却と自主性確立が急務

<日中シンポ総括>利益が深く融合する日中は連携強化を―日本は欧米情報脱却と自主性確立が急務
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日中シンポジウム「米中『新冷戦』と日本の生き方~一帯一路構想・新疆ウイグル問題を中心に」がこのほど東京の国会議員会館で開催された。鳩山友紀夫元首相、孔鉉祐駐日中国特命全権大使、西原春夫早稲田大学元総長ほか各分野の有識者や研究者が登壇した。国際アジア共同体学会(会長・進藤榮一筑波大名誉教授)が主催し、日本華人教授会議、日本ビジネスインテリジェンス協会、一帯一路日本研究センターが共催、日中友好協会、メディア各社、村山首相談話を継承し発展させるか会などが後援した。

シンポジウムでは、中国は14年連続で日本の最大の貿易相手国であり、日本企業は中国で年間5,000億ドル(約55兆円)の売り上げがあるとの実態が示され、利益が深く融合し、交流が密切な日中両国は、連携をさらに強化する必要があるとの点で一致した。「新冷戦到来という米中対立の罠に陥らないために「日本は対米自立・戦略的自主性を確立すべきだ」との意見が大勢を占めた。また欧米の一部情報だけに頼らず広く事実を収集すべきだとの意見が多かった。

このシンポジウムの後半、出席の研究者らが論議を通じた総括としてコメントした。発言要旨は次の通り。

<中川十郎・国際アジア共同体学会学術顧問(名古屋市立大学22世紀研究所特任教授)>

◆日本のマスコミの情報源は偏っている

日本の対中国論調はマスコミも含めて偏っているのではないか。日本のマスコミの情報源は欧米、とくに米国からの情報が主流となっているように見える。情報は注意しないと、意図的に操作された情報が多く、情報の収集、分析には十分注意することが必要だと痛感した。さらに情報は現場情報が重要だ。情報発生の現場で情報を公平に収集、分析することが大切である。遣唐使とも深い関係のあった聖徳太子の『和をもって尊しとなす』、孫文の『覇道でなく正道を求むべし』の先哲の言葉を今一度、我々はかみしめるべきではないだろうか。

私の郷里の大先輩の二階堂進・元官房長官は大平外務大臣とともに50年前の日中国交回復交渉で田中首相を補佐し活躍されたが、後年、尖閣問題は棚上げし、解決は将来の世代に任せると事あるごとに話しておられたのを懐かしく思い出す。コロンビア大学時代の恩師ノーベル経済学賞受賞のロバート・マンデル教授と深圳、香港を訪問時、同教授が『なぜ日本は無人の尖閣島問題で中国といがみ合っているのか。近い将来、米国に匹敵するか、それを凌駕するかもしれない一衣帯水の中国と日本は仲良くし、お互いに繁栄する努力をすべきではないか』とつぶやかれた。

日中間の過去の4つの交換文書(「日中共同声明」および「日中平和友好条約」など)の精神にかんがみ、日中は多国間の平和希求、コロナ対策、気候変動問題、テロ対策などお互いに開かれた対応をすることが望まれる。米中対立は新冷戦思考でなく、地政学的現実を見極め、戦略的に対応し、対話により中米関係を正しいものに戻すことが必要だ。日中平和友好条約の趣旨にのっとり日本が戦略的な自主性を発揮して建設的な役割を果たし、日中国交回復50周年の2022年を目指し強靭な日中関係を構築することを期待するとの孔大使の提言は、われわれ日本人が傾聴すべきである。

<木村朗・国際アジア共同体学会共同理事長(鹿児島大学名誉教授)>

◆新冷戦到来という米中対立の罠―日本は対米自立・戦略的自主性の確立を

「日本の取るべき立場」として「日本は中国の隣国であり中国は日本にとって米国を超える最大の貿易相手国である。その一方では、日本は敗戦国であり、1952年のサンフランス条約締結と国際社会への復帰以降、日米安保条約を通じて米国の軍事同盟国となっている。米中両大国の狭間にある日本が、「米国か中国かの二者択一」を迫られる状況を避けるためにも、これまで以上に微妙なバランスの取れたかじ取りをしていく必要がある。米国に対しては、欺瞞的な経済的安全保障と地政学的観点に基づく「価値観・民主主義外交」の押し付けに同調・追随することなく、中国に対しては「戦略的自主性」を持つこと、すなわち日本の対米自立(「自発的従属」からの脱却)がいまの日本に求められている。

その点で、鳩山元首相が長年提起され孔中国大使も賛意を表明した東アジア共同体構想や今回新たに提起された東アジアでの「ミサイル軍縮構想」は日本が東アジアや国際社会で有益な役割を果たすことができるかの試金石となる。

<松下和夫・国際アジア共同体学会共同理事長(京都大学名誉教授)>

◆気候変動問題、米中関係改善の足掛かりに

日中両国はまずは気候変動やパンデミックなどの地球規模の課題に協調して取り組むことが求められる。6月に英国で開催されたG7サミットの陰の主役は中国だった。「より良い再建(Build Back Better)」を共通テーマに掲げ、その首脳コミュニケはコロナ禍対策、経済・安全保障、気候変動まで幅広い分野を含んでいたが、いずれも中国を意識した内容になっていた。

この時のG7首脳コミュニケは「我々は、共有された地球規模の課題、特に気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)やその他の多国間の議論において気候変動や生物多様性の損失に対処することについて、相互に利益がある場合には協力する」と謳った。コミュニケの柱の一つである気候変動問題では中国への意識がにじみ出ており、2050年の脱炭素化へG7の団結をアピールし、温室効果ガスの世界最大の排出国である中国の排出削減を促す内容となった。

パリ協定が求める2050年ネットゼロ社会や1.5℃目標を国際社会全体で達成していくためには、中国をはじめとしたG7以外の国による取組みが不可欠である。2018年の世界のエネルギー起源CO2排出量を見ると、最も排出量が多いのは中国(28.4%)で、2位は米国(14.7%)、G7全体でも25%である。そのため、中国と米国の動向が、1.5℃目標達成のカギを握る。中国は利害が重なる分野では協調する姿勢を示し、とりわけ気候変動問題を「米国との対話が可能な分野」と認識し、米国との関係改善の足掛かりにする意図もあるようだ。

◆脱炭素市場をめぐる熾烈な国際競争

一方、米国は太陽光パネルや電気自動車などの再生エネルギー分野で中国に後れを取っていることに危機感を持ち、気候変動対策への取り組み強化を通じ、国内の雇用を拡大し、再び世界のリーダーとなることを目指している。脱炭素市場をめぐる熾烈な国際競争がすでに始まっている。

米中両国は、今年4月18日、気候変動対策で協力していくとする共同声明を発表した。元国務長官のケリー気候変動問題担当大統領特使と、中国の解振華気候問題担当特使が会談し、確認したものだ。両国は、「パリ協定」に基づき、2020年代の気候変動対策の行動強化を約束した。両国政府は「米国と中国は互いに、そして他の国々とも協力して気候危機への対策に取り組んでいく。気候危機には真剣かつ早急な対応が必要だ」と発表している。

両国の気候変動危機共同声明では、英国グラスゴーで今年11月に開催される気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)までにネットゼロに関する長期戦略を各々策定することを確認するとともに、発展途上国のインフラ整備支援でも、CO2排出量が多い化石燃料の施設から再生可能エネルギーなどへの移行を後押しする国際投融資を拡大させるべく、適切な行動をとることとに合意している。これまで自国経済優先で温暖化防止に後ろ向きだった両国が今後どのような取り組みを進めるのか。本気度を示す必要があるだろう。

中国の習近平主席は、今年4月22日、石炭使用量を「段階的に減らす」と宣言したものの、中国の最新の5カ年計画では、石炭火力発電所の建設をさらに予定しており、炭素排出は一段と増える見込みだ。また中国は近年、広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、アジアとアフリカで240を数える石炭火力発電所の建設資金を融資している。「一帯一路」は中国の習国家主席が2013年に提唱した中国と欧州を結ぶ広域経済圏構想で、巨大な資金をアジアやアフリカなどに投資し、中国の影響圏が広がっている。

◆「二頭の象が争うと、傷つくのは草」

一方、G7サミット首脳は、途上国や新興国のインフラ構築を支援する枠組みを創設することに合意した。これには民主主義国家による透明性が高く安定的な投資の枠組みとして、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗する意図がある。今後数年間で数千億ドルのインフラ投資を促進し、G7の理念に沿って、透明性や人権、環境への対応などを考慮して資金を拠出するという。

「発展途上国のインフラ整備支援でも、CO2排出量が多い化石燃料の施設から再生可能エネルギーなどへの移行を後押しする国際投融資を拡大させるべく、適切な行動をとる」との米中合意に鑑みれば、中国と米国などG7各国が、協調して途上国における脱炭素移行へのインフラ整備に取り組む道を探ることが望まれる。

アフリカのことわざに、「二頭の象が争うと、傷つくのは草」というものがある。気候変動という人類共通の課題の解決に向け、米国と中国そしてG7などの主要国が健全な競争をしつつ協調し、他の各国を含めた国際的な枠組みを強化しながら、世界の脱炭素化達成に貢献していくことを期待したい。

<朱建栄・国際アジア共同体学会副理事長(東洋学園大学教授)>

◆中国は日本にとって脅威ではない

孔大使は五つの「重要問題」を提起した。中国が提唱する「人類運命共同体」の基盤と出発点はアジアにあるとし、我々「国際アジア共同体学会」の主旨や鳩山元首相が提唱する「東アジア共同体」の理念に合致するとの共通点に言及した。

その最重要なポイントは、現在の日中関係への深刻な憂慮と懸念、および五つの問題提起である。日中とも「アジアの重要な国で、アジアの平和と安定と繁栄を守る重大な責任を共有している」と位置づけたうえで、現在の両国関係は「岐路と試練に立たされている」と指摘。そして五つの「真剣に考えるべき重要な問題」を提起した。

まず、「中国は日本にとって脅威なのか」。中国は14年連続で日本の最大の貿易相手国であり、日本企業は中国で年間5,000億ドルの売り上げがある。コロナ前の中国人観光客は1,000万人近く。互いに脅威とはならないという双方の政治的コンセンサスもある。「中国の発展を日本への挑戦や脅威と描き、イデオロギーの偏見や誤解に基づいて嫌中、反中感情を煽る勢力」を念頭に、このように利益が深く融合し、交流が密切な両国は、パートナーにならない理由がどこにあるだろうかと呼びかけた。

二つ目は、日本では最近、「経済安全保障」の概念を拡大化し、米国と手を組んで中国のハイテク企業に対する排他的、差別的措置、中国への供給停止、「デカップリング」や「脱中国」を主張する人がいることだ。日本が長年堅持してきた市場経済と自由貿易の原則にも反する。

◆平和友好条約に基づき「戦略的自主性」維持を

三番目に、近隣として、矛盾や食い違いがあるのは当たり前だが、それを処理する4つの政治文書と内政不干渉などの原則、また、海に関する「敏感問題」を適切に処理する新たな重要な合意(2014年11月に交わした「尖閣諸島(釣魚島)等東シナ海の海域において」「危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避する」という合意がある。この項目では特にこのところ、台湾、新疆、香港問題において日本側の消極的な動向が目立ち、中日関係に深刻な支障をきたしているとの懸念を表明し、中国の核心的利益を損なうことをやめ、中日関係にさらなるダメージを与えないよう注文した。

四つ目は、両国の国際責任と国際貢献について、日本は「より開かれた視野と胸襟で中国と手を携え、責任感をもって地域諸国や国際社会の期待に積極的に応えていくよう」との期待を表明した。

五番目は米中間のパワーゲームについて、「我々は米国との『新冷戦』を求めず、米国に取って代わるつもりも、もうひとつの米国になるつもりもない」とし、米国の一部は中国を「仮想敵」とし、「中国の近代化プロセスを妨げ、断ち切ろうとしている」と批判。その上で、「日米間には同盟関係があるが、中日間にも平和友好条約があり、日本側にはそれを履行する義務もある」と強調し、「戦略的自主性」の維持、米中との関係を「バランスよく、適切に処理し、中米日の前向きなインタラクションを促進するために建設的な役割を果たす」よう申し入れた。

中国側としては問題点をさらけ出したうえで、共に解決していこうとのスタンスとめられ、来年の国交50周年に向けて冷え切った関係を上向きに転換させたい狙いだ。

◆「99%と1%」新疆と台湾の真実を見極めよ

新疆ウイグル問題がなぜ騒がれているかを説明する中で、ハーバード大学スティーブン·ケルマン教授の言葉を借用した。「アメリカはムスリンが嫌い。中国も嫌い。しかし唯一に、中国新疆のムスリンが好き」。どうしてって?「人権」「民族」を中国かく乱のカードとして使えるからだ。

これに対し、大西教授は、一言を付け加えてくれた。「結局、一番苦しめられるのは新疆のウイグル民族だ」。確かにそうだ。かつてのイラク戦争とその後の20年近く、アメリカは政治・戦略目的を達するため、イラクの民衆数百万人を犠牲にしたが、それは一切配慮されなかった。

大西先生は一連の検証をしたうえで、「事実調査に基づかないウイグル会議情報の昨今の垂れ流し」について「1%は真実かもしれないが、99%は怪しい」と話した。私(朱教授)は、この「99%と1%」の表現に関連し、「ところが今、欧米や日本のマスコミはこの1%しか報じず、この1%をあたかも99%のように扱っている」と評した。

中国の民族政策と新疆の行政区画や人口変遷を検証した村田先生の報告を受けて、村田教授が見つけたデータ「2017年にカザフスタンから新疆への訪問者は210万人以上」と、中国で大きく報道された「2019年、中国各地からのべ2億人以上が新疆を観光」いう二つの数字を挙げて、「新疆が安定し、経済と交通が整備していなければ、これほどの内外観光客が現地に行けるか」と問題提起した。

◆作られた「台湾危機」、中国は経済発展優先

岡田・共同通信客員論説委員は作られた「台湾危機」を検証し、中国の台湾に対する軍事戦略は分離独立の阻止が狙いで、武力解放ではないと結論した。それに対し私(朱教授)は、「中国人社会の最大公約数は10年以内にGDP規模を米国に追いつくことであり、台湾危機を煽り、中国を戦争に巻き込むのはむしろ中国の発展を望まない一部の外部勢力の狙いではないか」とコメントした。

在日の中国ウイグル族青年パルチ・パハルディンさんは、欧米のマスコミに登場する自称ウイグル人は厳格な戒律に基づく服装をしていることに違和感を覚えると言う。新疆のウイグル族は「世俗主義」で、カラフルな服装を着用するからだ。現地出身者ならではの「真贋」の見分け方だ。彼自身は2年前に中国に帰国した際何ら支障がなかったし、現在も新疆在住の親族や友人と毎日のように連絡を取っていると話した。自分は「コロナが収まったら、パハルディンさんが通訳とガイドを務めてぜひ新疆訪問団を企画しよう」と提案したら、会場から大きな拍手を受けた。

考えさせられる内容が満載の有意義なシンポジウムだった。会議後、進藤会長は「学会としても、こうした着実な研究成果を、よりもっと積極的に発信し、メディア、世論の啓もうに努めるべき必要性と重要性を痛感した」と語った。(主筆・八牧浩行)

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