教材に“不倶戴天の敵”の演説を「愛国話」として掲載、出版社に非難集中―中国
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江蘇省教育出版社は15日付で、高校生向け国語教材に掲載していた文章について、「文章選択の問題について心からお詫びいたします」などとする謝罪文を発表した。教材は米国の軍人だったダグラス・マッカーサーの演説原稿を「愛国を深く考える」の章に掲載していた。

ダグラス・マッカーサー(1880-1964年)は米国陸軍元帥などを務めた軍人だ。第二次世界大戦時には太平洋戦域の責任者になり、日本が降伏した後には日本占領政策を遂行するための連合国最高司令官になった。当時は中華民国が連合国の一員であり、アジア戦線で日本と戦ったのは中華民国軍(国民軍)だったが、中華人民共和国も第二次世界大戦で米中は友軍だったとしており、マッカーサーの第二次世界大戦中の行為が問題にされることはない。

問題はマッカーサーが朝鮮戦争において、米軍を主力とする国連軍の司令官を務めたことだ。朝鮮戦争は勃発当初から、韓国を含む西側諸国は「北側が発動した朝鮮半島武力統一の試み」としており、北朝鮮及び中国やソ連など東側諸国は「韓国が戦端を開いた北側に対する侵略戦争」と主張してきた。しかしソ連が崩壊して当時の機密文書が閲覧可能になったことで、ロシアでは「朝鮮戦争は南側の侵略戦争」という主張が聞こえなくなった。しかし現在も中国では「朝鮮戦争は米国などによる侵略戦争」とされている。

朝鮮戦争には中国も「中国人民志願軍」の名義で人民解放軍を派兵しており、10万人以上が戦死したとされる。つまり、中国人の考えでは、マッカーサーは「西側による侵略戦争である朝鮮戦争を指導し、極めて多くの中国の将兵を殺した人物」、すなわち“不倶戴天の敵”ということになる。

江蘇省教育出版社の国語教材には、「責任-栄誉-国家」と題するマッカーサーの演説原稿が掲載されていた。同文章は「米国軍人の道徳基準」を絶賛し、米兵は「世界で最も崇高な人物」「国際対立の渦中で救いをもたらす存在」などと記述していた。

同教材は2020年度末を持って絶版となり、すでに出回っていないが、最近になり同文章を掲載したことに対する批判が発生した。ネットには「米覇権主義が、ありとあらゆる方法でわれわれを叩き圧迫していた時期に、中国人民志願軍の最大の敵であったマッカーサーの言葉を教材に“お招き”した。何を考えているのだ?」などの投稿が寄せられた。問題視された教材は、国が検定する国語教材でも、省政府が審査した上で選定する推薦教材でもなく、出版社が独自に制作して市場に流通させる教材だったという。

江蘇省教育出版社は、「問題の深刻さを十分に認識しております。文章選択の問題について心からお詫びいたします。われわれは深く反省し、教訓を汲み取ります。細かな部分から始めて、全面的に自主検査をいたします。責任を厳格に追及し、類似した問題の再発を厳格に防止します」と謝罪した。(翻訳・編集/如月隼人)