香港メディアの香港01は6日、米国が1日に発表した米国製電気自動車(EV)のバッテリー調達に関する新規定に関するロイターの論評を引用し、米政府はEVバッテリー関連サプライチェーンから中国企業を排除することが目的だと伝えた。

米財務省は1日、中国などで製造・組み立てられたバッテリー部品を搭載した米国製EVは、来年度から「インフレ抑制法」に基づき、1台当たり7500ドル(約110万円)の税控除が受けられなくなると発表。

同時に中国、ロシア、北朝鮮、イランの企業を対象とした新たな「懸念される外国の事業体(FEOC)」の定義も行い、FEOC該当国に設けた現地法人や国有資本の割合が25%以上の企業やグループが新たな規制の対象になることも規定した。

規定では、2025年以降はFEOCでバッテリーの抽出、加工、回収された主要鉱物にも制限が拡大されるが、 27年までは電解質塩、電極バインダー、電解質添加剤などの「非トレーサブル電池材料」(追跡不可能な原材料で電池に含まれる重要鉱物成分の2%未満)は免除される。

記事はEVバッテリーをめぐる米政府の新たな施策について、ロイターのメタル関連シニアコモディティーコラムニスト、アンディ・ホーム氏(Andy Home)の論評を紹介し、バイデン政権の目的は中国と中国企業を米国のEVサプライチェーンから排除することだと伝えた。ホーム氏は、「中国は世界のバッテリーサプライチェーンで主導的な立場にあり、欧米企業との合弁事業も盛んであるため、新たな規定はメタル事業を展開するすべての国や地域の生産者に影響を及ぼす可能性がある」とし、「米国の新エネルギー自動車市場から排除されたくなければ、米国の海外パートナーは中国企業との関係をじっくり考える必要があり、当面は勝ち組より負け組が多くなるだろう」との見通しを述べた。新たな規定に批判的な人々は、「サプライチェーンを主導する中国を排除することはほとんど不可能であり、新たな規定は化石燃料自動車からEVへの移行を遅らせるものだ」と考えているという。

ホーム氏はまた、新たな規定が「インフレ抑制法」の要求と連動しており、EV補助金は米国国内または自由貿易協定(FTA)締結国から調達する原材料の割合により決まり、この基準は今年の30%から27年には80%にまで引き上げられると指摘。

「鉱山からバッテリーに至る米国内サプライチェーンの構築を奨励し、米国の自動車メーカーを中国への依存から解放しようとする目的は明らかだ」と述べた。

メタル原料メーカーへの影響

記事は、新規定がバッテリーの原材料調達にどのような影響を与えるかについても言及し、「中国企業と協力してリチウム、コバルト、ニッケルなどバッテリー材料を供給してきた国家や企業に重大な問題を引き起こす」との見方を示した上で、世界最大のニッケル生産国であるインドネシアの例を挙げた。「インドネシアのニッケル産業は中国企業が主導しており、ニッケル鉱床から採掘した低品位のニッケルを硫酸ニッケルなど高純度のバッテリー原料に加工してきた実績がある」と指摘。「ただしインドネシアと米国はFTAを締結していないため、主要鉱物協定に関する『限定的な交渉』をインドネシア政府は米国に求めているが、『低速レーン』に据え置かれており、仮に両国がFTAを締結してもFEOCの定義から外れるのは一部メーカーに限られるだろう」と述べた。

さらに、「オーストラリアは米国とのFTA締結国だが、多くの企業が中国企業と合弁事業を展開しているため、『インフレ抑制法』の恩恵を受ける企業は限られるだろう」とし、「たとえ中国が所有権を持つ鉱山でなくても、中国国内あるいは中国資本の加工メーカーで加工されている原材料は補助金の対象とはならない」との見方を示した。

短期的には負け組が勝ち組を上回る予想

ホーム氏は記事の中で「波及効果」という言葉に触れ、中国が現在、世界のリチウム加工能力のほぼ3分の2、コバルト生産の75%、マンガン生産の95%、黒鉛生産のほぼすべてを掌握している実態を紹介。「中国は、採掘される原材料が不足しているにもかかわらず、バッテリーサプライチェーンにおけるあらゆるメタルの流通分野に資本参加することで、将来の供給を確保している」と述べた。

その上で、「米国の海外パートナーが米国の新エネルギー自動車市場から排除されたくなければ、大規模な組織再編などを含め、今よく検討すべきである」とし、「新エネルギー事業に参与する西側諸国と中国との『デカップリング』という『残酷な現実』は、当然米国が発表した新たな規定の目的であり、世界のバッテリーサプライチェーンは、短期的に勝ち組より負け組が多くなるだろう」と予想した。(翻訳・編集/榊原)