今年第1四半期(1~3月)の国内総生産(GDP)成長率は全人代で出された5.2%をわずかに上回る5.3%だった。

国務院新聞弁公室が開いた記者会見で、国家統計局の盛来運副局長は、「消費市場の変化は第1四半期の経済運営において比較的良い分野であり、多くのハイライトがある」と述べた。

公開データによると、第1四半期の中国の社会消費財小売総額は前年同期比4.7%増で、GDP成長に対する消費の寄与率は73.7%だ。

最近の中国の消費の「ハイライト」

人民ネットの16日の報道によると、消費分野の「ハイライト」は以下の六つの面だ。

第一に、実物消費が全体的に安定していることだ。第1四半期、中国の社会消費財小売総額は4.7%増加し、12兆元(約240兆円)を突破した。

第二に、サービス消費が伸びたことだ。第1四半期のサービス小売売上高は10%増で、商品小売額を6%ポイント上回った。

住民の1人当たりサービス消費支出は12.7%増加し、住民全体の消費伸び率は4.4ポイント増の8.3%だった。

住民サービス消費支出が占める割合は前年同期比1.6ポイント増の43.3%で、サービス消費が加速している。

第三に、オンライン消費が引き続き好調だ。第1四半期のオンライン実物商品小売売上高は11.6%増となった。オンライン販売プラットフォームの充実や関連サービスの向上により、オンライン消費は拡大を続けている。

第四に、人々のより良い生活を送れるようにする「アップグレード型消費」が引き続き好調なことだ。観光消費が好調をキープし、教育や「養老(高齢者ケア)」などの消費の伸び率が比較的速い。

また、スポーツ・娯楽用品の売り上げが14.2%増、通信機器の売り上げが13.2%増となり、人々の交通・通信、教育・文化・娯楽へのニーズが高まっていることが分かる。

第五に、休日消費が引き続き好調だ。春節(2024年は2月10日から17日まで)、清明節(24年は4月4日から6日まで)は旅行者数、観光収入共に19年のコロナ前の水準を超え、前年比の伸び率はいずれも2桁となった。

第六に、グリーン消費が浸透していることだ。例えば、新エネルギー車(NEV)の販売は引き続き好調で、第1四半期は30%以上増加した。

以上のように、個人消費は回復基調にあるが、昨年の社会消費財小売総額5.2%に比べ、やや低い数字だ。

その要因としては、雇用情勢が厳しいことや中国経済の減速傾向などが挙げられるが、今後の経済の先行きの不透明感も大きな要因だと思う。もちろん、中国政府は消費活性化につながる措置を打ち出し、今年を「消費促進年」と位置づけており、政策の効果が出てくれば、人々の不透明感も改善するのではないかと思う。

所得は下がっているが消費は増える?研究機関の調査が指摘

現在の中国人の消費マインドについて、財新ネットは3月29日、「経済活動再開から1年、住民の所得と消費マインドにどのような変化があったか」と題する記事を掲載した。記事はUBS証券のマーケットリサーチ部門UBSエビデンス・ラボ(UBS Evidence Lab)、UBS中国(瑞銀中国)の一連の特別プロジェクトの消費調査資料に基づいて分析しており、現在の中国人の消費マインドについて知る手がかりになる。

記事は以下の三つの問題について述べている。

第一に、住民所得の伸び率の鈍化だ。回答者の44%は過去3カ月の賃金の平均上昇率が3.4%で、56%が4.4%だったという。

国家統計局によると、22~23年の名目住民可処分所得の2年間の年平均成長率は23年第3四半期(7~9月)の4.8%から第4四半期(10~12月)には4.3%にやや低下し、所得の伸びは力強さを欠いている。

第二に、所得の減少幅は一定規模の都市以外の地域で大きいことだ。23年7月の調査では、賃金が増加したと回答した都市の割合は1線都市(北京、上海、広州、深セン)、2線都市(昆明、寧波、福州、アモイなど)と3線都市(洛陽、揚州、桂林など)、4線都市(吉林、西寧など)でいずれも50%を超えたが、今回の調査では1線都市・2線都市(40%)が3線都市・4線都市(28%)を大幅に上回り、所得の地域格差が大きくなっている。

第三に、消費支出がやや回復したことだ。所得の伸び率がやや鈍化したものの、過去3カ月に消費を増やしたという回答者の割合(全体の45%)は7月調査の結果とほぼ同水準だった。一方、消費を減らしたという回答者の割合は12%に低下した(7月調査では22%)。

貯蓄を増やした回答者も減少した。夏休みの観光消費が好調だったことが一部の消費者に影響を与えたと記事は見ている。

第四に、所得と仕事の安定性は将来の消費促進の最も重要な要因であることだ。回答者の42%が今年の消費活性化には所得の増加が不可欠だと答え、40%が仕事での昇進・仕事の安定性を挙げ、富の増加(25%)、減税(18%)、超過貯蓄の利用(18%)、政府による消費券支給(17%)、現金補助金の支給(14%)を大きく上回った。

以上の結果を見ると、消費に大きな影響を与える所得の伸びは鈍化しており、地域によってばらつきがある。ただ、コロナ後のリベンジ消費もあり、消費支出はある程度増えている。

オンラインショップで値引きする店が増えたことも一因だと筆者は考える。

また、消費の拡大には自分の仕事の安定と昇給が非常に重要と考える人が多いため、雇用の安定、賃上げが個人消費アップにとって大切なことだ。

また記事は、中国の消費者は24年についてどのような見通しを持っているかについて紹介した。

第一に、所得アップの見通しについて、慎重に考えていることだ。回答者の47%が今後3カ月に給与所得が増加すると考えているのに対し、7%が減少を予想し、過去3カ月の実績に近い結果となった。この期待は23年7月の調査結果よりもはるかに弱い。当時の調査では、回答者の62%が翌年の給与所得の増加を予想し、5%が減少すると予想した。

第二に、貯蓄意欲が減少し始めていることだ。将来的に貯蓄(狭義のベースは銀行預金や現金)を増やすことを考える回答者は23年7月調査に比べて大幅に減少しており、住民は保険商品などに関心を示している可能性がある。

第三に、消費者マインドが小幅に改善することだ。回答者の38%が今後3カ月に消費支出が増えると見込んでおり、23年7月調査に近い水準となった。一方で、消費支出が減ると見込む回答は減少した。金融投資へのリターンへの期待は改善したものの、投資を増やす意欲がやや弱まる一方で、より安全な資産への投資の需要が増えることが予想される。その流れが保険支出の増加を促すとみられる。

第四に、必需消費がオプション消費を上回ることだ。人々は所得アップについて慎重に捉えていることから、食品・飲料や日用品などの必需消費が引き続き最も好まれる分野となる。

子供の教育、スポーツ・ヘルスケア、医療・保健などの必要なサービス消費への関心も高く、家事代行サービスやベビーシッター・ハウスキーピングサービスへの支出を削減すると回答した人が多かった。また、通勤、化粧品、衣料品などの外出関連活動に対する消費者のニーズが増え、国内旅行や外食に対する意欲が上昇した。

ただ、海外旅行への意欲は依然として低く、国際便が少ないことや旅行コストが高いこと、ビザ申請がスムーズにできないことが関係している可能性がある。

第五に、大型商品の消費への不安がまだあることだ。回答者の10%が住宅購入支出の減少を計画しており、増加を見込む回答者の割合(5%)を上回り、23年7月調査の結果(回答者の1%がこの支出を減少する予定)よりも弱い。リフォームや住宅賃貸支出に対する家計の意欲もまだ大きいとは言えない。消費者はハンドバッグや宝石類への支出も減らそうとしている。

個別の対策ではなくセットとなった改革を、中国の消費振興で大事なこと

以上、記事で述べられた今年の中国の消費について、全体的に見てまだ本格的に回復するという見通しを持っていないことが分かる。日本メディアは、中国人は「節約志向」になっていると報じているが、その通りだと思う。

ただ、世代によってばらつきはあるが、筆者の見るところ、中国人はもともと節約志向だ。近年は不景気のため、価格にさらに敏感になっている感はある。また、前述のようにオンラインショップの値引きによる顧客獲得もあるため、節約志向が顕著になっているといえる。

その要因としては、前述のように雇用面でのプレッシャーも大きいが、消費拡大に資する環境を整えることも大事だ。

中国政府は今年も財政支出の拡大、緩和気味の金融政策を打ち出すが、どちらかというと供給側の強化に重きが置かれている。もちろん設備の更新・下取り政策は需要側も考慮しているが、供給側への投資の色彩が強い。

需要側の刺激策としては、商品券や補助金の支給も効果的だが、経済の先行きが悪くなっても安心できるようにするため、社会保障制度の整備も必要だ。そうすれば、人々が消費に回す額も大きくなるのではないかと思う。