欧州は中国自動車メーカーへの対応をめぐって大いなる矛盾を抱えている、とロイター通信が報じた。欧州連合(EU)が安価な中国製の電気自動車(EV)が大量流入する事態を懸念して輸入関税を発動する一方、加盟各国は中国メーカーの工場を誘致して投資を呼び込もうと激しい競争を繰り広げている。

ロイター通信などによると、EUの行政を担う欧州委員会は12日、中国から輸入するEVに最大38%の相殺関税を課す方針を発表した。中国メーカーが得ている政府の補助金で競争が不当にゆがめられていると判断した。

関税は一面では確かに中国メーカーに対する欧州メーカーの競争力を向上させる可能性があるが、ロイター通信は「中国メーカーの長期対欧州投資をかえって加速させることにもなりかねない」とも伝えた。

ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ジャンルカ・ディロレト氏によると、BYD(比亜迪)や奇瑞汽車、上海汽車(SAIC)などにとって中国国内で生産する方がコストはずっと低いとはいえ、ブランド定着化や、出荷費用や将来的な関税リスクを抑える目的で、欧州での製造拠点確立に熱心になっている。

ディロレト氏は「中国メーカーは欧州の顧客に関心を持ってもらおうとするなら、欧州(ブランド)だと認識してもらわなければならないと分かっている」と語る。

EU加盟各国のうち、最初に中国メーカーの工場建設投資を確保したのはハンガリーで、BYDが昨年発表した。

BYDは来年中に欧州で2番目の工場を建設することも検討している。

ハンガリーは長城汽車(GWM)の最初の工場を誘致する交渉も進めている、と地元メディアが伝えた。同国は雇用助成金や税額控除の提供、規制緩和などを打ち出し、経済特区への外資導入を図りつつある。

欧州でドイツの次に自動車生産台数が多いスペインは、奇瑞汽車の誘致に成功。バルセロナの旧日産自動車工場で今年第4・四半期に地元メーカーと共同で生産を開始する。

奇瑞汽車にはスペイン政府が2020年に導入したEV・電池分野における37 億ユーロ(約6180億円)規模の投資支援プログラムが適用される。

事情に詳しい関係者がロイターに明かしたところでは、奇瑞汽車はより大規模な欧州2番目の工場建設も計画しており、イタリア政府などと協議している。

中国メーカーは欧州で人件費からエネルギー、規制順守まですべての面でコスト上昇に見舞われている。ベイン・アンド・カンパニーのディロレト氏は「欧州北部ではもう中国メーカーが競争力を維持しながら生産を続けるには人件費が高くなり過ぎているが、イタリアやスペインといった南欧は人件費が相対的に低く、特に高級車にとって大事な製造品質基準とのバランスが取れている」と説明した。(編集/日向)