シンガポール華字紙・聯合早報は19日、「服装の自由がポピュリズムを試す?」と題し、中国・北京で今月25~28日に開かれる全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の中で審議される予定の「治安管理処罰法(改正案)」が注目を集めていると報じた。

記事は、昨年9月に政府当局が発表した改正案で最も論争が大きかったのは第34条に盛り込まれた「中華民族の精神を損ない、感情を傷つける」という文言だと指摘。

改正案では「中華民族の精神を損ない、感情を傷つける衣服やシンボルを着用または他人に着用させたり、製作、宣伝、散布したりする行為」が処罰の対象に含まれ、違反した場合は5日以上10日以下の刑事拘留、または1000元(約2万1700円)以上3000元(約6万5000円)以下の罰金、悪質な場合は10日以上15日以下の刑事拘留、および5000元(約10万8000円)以下の罰金が設定されていると伝えた。

その上で、「この条文が発表されるとネット上は騒然となり、中国の大学の多くの法学部教授も公然と文章を書いて、政府に慎重な改正を呼び掛けた」と説明。「民族精神や民族感情はもともと曖昧(あいまい)な抽象概念であり、客観的な測定基準を持つことが難しい。条文でも詳細に定義されておらず、最終的には法執行者の個人的な好みや観念、あるいは気分に委ねられることになる」と指摘する声や、「こうした立法が極端なナショナリズムをもたらす可能性は高い。個人の行為が民族感情に関わる政治問題に拡大される。民族感情を掲げたポピュリズム的な攻撃は、近年中国国内でたびたび発生している」との懸念の声が上がっていると伝えた。

記事は「民族感情を掲げた攻撃」の例として、2022年8月に江蘇省蘇州市の「日本風情街」と呼ばれる淮海街で日本のアニメのコスプレで浴衣を着て撮影していた女性が警察官から高圧的な取り締まりを受け「挑発行為」の名目で連行された事件や、今年1月に江蘇省南京市で「装飾が日本の国旗のように見える」との理由でクレームを受けたデパートが警察から撤去を指示された事件を挙げている。

さらに、「公共の場とはどのように定義されるのかという疑問もある」とし、「インターネット上は公共の場と言えるか。当局の主流の価値観と一致しない発言をネット上で行った場合、民族感情を傷つけたとみなされるのではないか」と指摘。清華大学の労東燕(ラオ・ドンイエン)教授の話として、「こうした新ルールは公共領域での世論環境をさらに悪化させるもので、個人の日常での服装や言論の自由な空間を不当に抑圧することになりかねない」と伝えた。

記事は、「ここ数年、中国が直面する外部圧力が増大し、政府は民衆を団結させる必要があり、闘争をより強調するようになった。民族精神、民族感情は社会の結束の接着剤であり、政府はこうした言動を取り締まることによって、社会の共通認識と民衆の求心力を守る必要があるのだ」とする一方、「こうした取り締まりは極端な民族主義を刺激するリスクもある」と指摘。

「コロナやウクライナ戦争など、近年、中国でますます世論が二分されることが増える中、ポピュリズムに口実を持たせることは社会の分断につながる可能性がある」と論じた。(翻訳・編集/北田)